韓国での血液型研究


ABO FAN


韓国での血液型研究

 台湾の研究で驚いていたのですが、韓国でも血液型と性格の研究が発表されました。
 代表者のBeom Jun Kimさんは、水原市(確かサムソンの本拠地)のSungkyunkwan(漢字は?)大学の先生です。

Physica A: Statistical and Theoretical Physics
Volume 373, 1 January 2007, Pages 533-540

Blood-type distribution

Beom Jun Kima, Dong Myeong Leeb, Sung Hun Leeb and Wan-Suk Gimc
aDepartment of Physics and Institute of Basic Science, Sungkyunkwan University, Suwon 440-746, Korea
bCollege of Natural Sciences, Ajou University, Suwon 442-749, Korea
cCollege of Social Sciences, Ajou University, Suwon 442-749, Korea
Received 5 January 2006;  revised 27 April 2006.  Available online 21 June 2006.

Abstract

We statistically verify the Hardy–Weinberg principle in genetics by investigating the independence of ABO-blood types of married couples. The allelic frequencies derived from the phenotypic frequencies in ethnic groups via the Hardy–Weinberg principle are used to define a genetic distance (called the blood distance in this work) between two groups. The blood distances are compared with the geographic distances, and then used to construct a network of ethnic groups. We also investigate the relationship between the ABO blood types and the human personalities, gauged by the Myers-Briggs-type indicator (MBTI) psychological test. The statistical χ2-test reveals the independence between the blood types and MBTI results with an exception of type B males. A psychological implication is discussed

(c) 2006 Elsevier Ltd. All rights reserved.

 この研究「B型の彼氏」がきっかけで書かれたそうで、韓国の事情がなかなか興味深いです。
 結果としては、統計的に有意な差が出ています。ただ、それは「思い込み」と断言しています。

 ところで、この論文は、奇妙なことに参考文献が極端に少なくなっています。7件しかないのですが、なぜでしょうか?

韓国での血液型研究を読む前に

 イントロダンクションの文章が面白いので、ちょっと紹介しておきます。

In some countries, especially in Asia, there has been a wide spread belief that human blood types are strongly correlated with the human personalities.

[大意] いくつかの国、特にアジアでは、血液型と性格に強い関係があるという信念が大きく広まっている。

 まあ、これは当然でしょう。ただ、アジア以外の国ってどこなんでしょうか? アメリカとも思えないし…。

Although the relation between the two has not been clearly justified, there exist a lot of popular books published containing detailed advice on how to deal with people with a certain blood type; there even exists a recent movie entitled “My boyfriend is type B”, which boosted the belief even further, especially in young generations.

[大意] 血液型と性格の関係は明確には認められていないが、多くの血液型と性格に関する本出版されている。そして、『B型の彼氏』※という映画も制作され、とりわけ若い世代に血液型と性格の信念が広まった。

※能見俊賢さんがアドバイザー

 なるほどねぇ。確かに、『B型の彼氏』は韓国で大ヒットして社会現象にもなったらしいのですが、そこまでだったとは…。

Although this topic of relation between the blood types and the human personalities is somehow nonscientific in its nature, we, as scientists, strongly believe that we have to provide a scientific evidence anyway in order to check the validity of the common belief, which composes one of our motivations of the work..

[大意] 血液型と性格の関係があるというのは少々非科学的だが、我々科学者は、そのような広まっている信念を科学的に検証するためにこの論文を書いた。

 へ〜、どっかで読んだことがあるような文章だと思ったら、日本の心理学者の論文に似ています。確かに、韓国でも心理学者の反論が結構あったらしいですが、この論文もそうなのでしょうか?

研究の内容

 さっそく研究の内容を紹介しておきましょう。

 この論文では、「血液型と性格」を科学的に検証するために、大きく分けて3つの実験をしています。

  1. 血液型別カップルの調査(配偶者の血液型比率)
  2. 国や地域別の血液型分布によるネットワーク図
  3. MBTI(有名な性格検査)の結果

 ここでは、2については性格とあまり関係なさそうなので省略します。興味がある方は、ぜひ自分で論文を読んでみてくださいね。

■血液型別カップルの調査

 能見さんは、『血液型愛情学』で血液型別カップルの分析をしています。ただ、どの組み合わせが多かったという調査はしませんでした。しかし、韓国の研究者は、「血液型と性格」に関係があるなら、必ず血液型別カップルの統計的な有意差があるはずだ、という視点で研究を進めました。

 確かに、そりゃそうですが、そんなに目立った差が出るのかなぁ?

 では、結果を見てみましょう!

 韓国の研究者たちは、292組のカップルを調べてχ2-検定を行いました。

Table 1.

Blood phenotypes of 292 married couples

  Female A Female B Female AB Female O Total
Male A 27 (25.7) 26 (21.9) 9 (7.3) 17 (24.1) 79
Male B 28 (28.6) 23 (24.4) 6 (8.1) 31 (26.8) 88
Male AB 9 (11.7) 10 (10.0) 1 (3.3) 16 (10.9) 36
Male O 31 (29.0) 22 (24.7) 11 (8.2) 25 (27.1) 89
Total 95 81 27 89 292

The numbers within the parentheses are the frequencies expected from the random mating hypothesis of Hardy–Weinberg. The X2=10.7 is obtained (see text) and thus we conclude that the observed frequencies do not have statistically significant deviations from the expected ones to reject the null hypothesis of the random mating. [p-value is 0.05 and the number of degrees of freedom ν=9(=3×3)].

 結果として、得られたχ2値は10.7で、5%危険率のχ2値である16.92より小さいので、帰無仮説は棄却されませんでした。つまり、血液型による偏りがあるとは言えません。

 ちなみに、韓国では住民登録証(と言うんでしたっけ?)に血液型が書いてあるので、どっかの役所が調べようと思えば、全数調査が可能です。

#まぁ、役所がそんなことをやるとも思えませんが…。(^^;;

 それにしては292組は少ないので、大学関係者だけなのでしょうか?

■MBTIの結果

 次に、MBTIの結果を見てみましょう。MBTIとは、Myers-Briggs-type indicatorの略です。どんなものか は、日本MBTI協会のHPから引用しておきます。

米国では年間200万から300万人が,全世界では約500万人の人たちが受検している,世界で最も利用されている性格検査(Personality Inventory)です。

MBTIは、イギリス、フランス、カナダ、スペイン、ドイツ、ベルギー、オランダ、スウェーデン、ギ リシャ、インド、韓国、中国など、24カ国語に翻訳され、現在45カ国以上の国で利用されています。

MBTI は・キャサリン・クック・ブリッグス(Katharine C.Briggs)とその娘イザベル・ブリッグス・マイヤーズ(Isabel B.Myers)という親娘によって、ユングの心理学的タイプ論の考えをもとに開発され、 初版が1962年に完成して以来、40年近くにわたり、研究と再開発が進められております。

MBTIは、一人ひとりの性格を心の機能と態度の側面からみたものです。それらは、「ものの見方(感覚・直観)」と「判断のしかた(思考・感情)」及び「興味関心の方向(外向・内向)」と「外界への接し方(判断的態度・知覚的態度)」の4 指標であらわされ、16 タイプに類型化してとらえようとします。

 それにしても、女性だけ(2人とも心理学を正規には習っていないようです)で開発したという性格検査はあまり聞きませんね。ユングは女性に人気なのかな?

 さて、ここで、16タイプですが、このようになります。

  1. ものの見方(感覚…Sensing/直観…iNtuition)
  2. 判断のしかた(思考…Thinking/感情…Feeling)
  3. 興味関心の方向(外向…Extravert/内向…Introvert)
  4. 外界への接し方(判断的態度…Judging/知覚的態度…Perceiving)

 4つの指標がそれぞれ2つですから、2×2×2×2=16通りというわけです。この論文では、この順番とは違いますが、英語の大文字で書いたところが、それぞれの性格特性を表しています。

 では、実際のデータを見てみましょう。

 今回は852人のサンプルに対して調査してみました。

Table 3.

Blood types versus (a) I/E, (b) S/N, (c) T/F, and (d) J/P

  (a) X2=4.3
(b) X2=15.2
(c) X2=2.5
(d) X2=5.6
Total
  I E S N T F J P  
A 195 (182) 102 (115) 200 (192) 97 (105) 181 (181) 116 (116) 140 (128) 157 (169) 297
B 123 (126) 82 (79) 111 (133) 94 (72) 121 (125) 84 (80) 75 (88) 130 (117) 205
AB 61 (61) 38 (38) 63 (64) 36 (35) 67 (60) 32 (39) 42 (43) 57 (57) 99
O 144 (154) 107 (97) 178 (163) 73 (88) 149 (153) 102 (98) 109 (108) 142 (143) 251
Total 523 329 552 300 518 334 366 486 852

The numbers within parentheses are expected frequencies from the null hypothesis that the blood type and personality are independent to each other. For instance, the value at the cell for A and I is obtained from (297/852)×(523/852)×852≈182. We also present X2 values [see Eq. (3)], which reveals that the null hypothesis of the independence is rejected only for (c) S/N with the p-value 0.01 [P(X2>11.35)=0.01].

 結果として、得られたχ2値はS/N[ものの見方(感覚・直観)]では15.2ですから、危険率1%の11.35より大きいため、帰無仮説は棄却されました。つまり、血液型に より性格が違うということになります。ということで、メデタシ、メデタシ…ではないのです!

 研究者達は、念のために男性と女性を区別してχ2-検定を行ってみました。

Table 4.

Blood types versus MBTI preferences S/N for (a) males and (b) females

  (a) Males (X2=12.4)
(b) Females (X2=4.8)
  S N Total S N Total
A 146 (138.7) 72 (79.3) 218 54 (53.5) 25 (25.5) 79
B 70 (87.2) 67 (49.8) 137 41 (46.1) 27 (21.9) 68
AB 49 (48.4) 27 (27.6) 76 14 (15.6) 9 (7.4) 23
O 125 (115.8) 57 (66.2) 182 53 (46.8) 16 (22.2) 69
Total 390 223 613 162 77 239

The numbers within parentheses are obtained from the null hypothesis of independence. From the comparison with Table 3, we conclude that the large value of X2 for Table 3(b) originates from males, especially from males with the blood-type B.

 男性の方がχ2値が大きいので、この差は主に男性から来ていることになります。ということで…

the recent popularity of characterizing male personalities by using blood types in Korea is mostly focused on B-type males and it is possible that when a male with B-type males was having MBTI test, which is a typical self-reporting-type test, he was affected by the recent discussion of B-type male characteristics, building a distorted implicit personality theory2 of himself, yielding a distorted result in his MBTI test.

[大意] 最近の韓国の血液型ブームはB型の男性に焦点を当てているため、典型的な自己評定の心理検査であるMBTIでは歪みが現れた。

 つまり、日本の心理学者と同じく、有意差がある→思い込み→血液型と性格に差はない、という結論になっているようです。

 また、全体的な結論としては、こう書いています。

In summary, we performed statistical study of blood types. The Hardy–Weinberg principle of random mating has first been verified from the statistical data of blood types of married couples and the choice of partner in married couples has been shown to have nothing to do with the blood type of spouse.

[大意] 配偶者の血液型分布は、ランダムの場合に比べて差はなかった。

Finally, the psychological MBTI test has been analyzed with focus on the independence of blood types and human personality. With a single exception of the B-type males, blood types and personalities captured by the MBTI test have been shown to be independent to each other via the use of the statistical χ2-test. A psychological implication for the case of B-type males is also suggested as an effect of a distorted implicit personality theory affected by recent popularity of characterizing a human personality by blood types.

[大意] MBTI検査では、ただ1つB型男性を除いては血液型による差がなかった。これは、血液型ブームによる歪みが現れたものと考えられる。

32.gif (286 バイト) やっぱりおかしい!?

 ここまで読んできて、ふ〜ん、なるほど、という人は少ないと思います。なぜなら、あなたはABOFANの読者だからです(笑)。

 では、どこがヘンなのか、一緒に考えてみましょう。

■血液型別カップルの調査

 この結果を見ると、一見関係がなさそうですが、χ2-検定の特徴(?)として、サンプルを増やせば必ず差が出る(?)というのがあります(笑)。だから、292組に満足せず、少々頑張って1000組とか調べれば、まず間違いなく差が出ると考えていいでしょう。

 血液型の統計であれば、どこかの役所に調べてもらうことは可能なはずだと思うのですが…。難しいのでしょうか?

 ただ、仮に差が出たにしても、その理由を考えるのは、私には難しいです(苦笑)。

■MBTIの結果

 この結果については大いに異議ありです(笑)。

 なぜなら、B型男性では、有意差がある→思い込み→血液型と性格に関係はない、という結論になっていますが、他の場合でも、有意差がない→血液型と性格に関係はない、ということだからです。つまり、差があってもなくても、血液型と性格に関係がないことになっているのです。これはちょっとヒドイですよね。:-p

 そもそも、B型男性のデータに差があるのは、「本当の差」なのか「思い込み」なのかどうかは、この論文では未検証です。また、その差が韓国で流行している「思い込み」と一致しているかどうかも未検証ですから、血液型と性格に関係がないとは必ずしも言えません。

 つまり、正確にはこうなります。

B型男性に有意な差が見られたが、「本当の差」なのか「思い込み」なのかどうかは、この研究では未検証である

 ということです。

 念のために、MBTIの結果をパーセントで表してみました。

MBTIの結果(%) →最高値が赤 →最低値が青

   内 向I   外 向E  感 覚S  直 観N  思 考T  感 情F 判断的J 知覚的P

A

65.7 34.3 67.3 32.7 60.9 39.1 47.1 52.9
B 60.0 40.0 54.1 45.9 59.0 41.0 36.6 63.4
AB 61.6 38.4 63.6 36.4 67.7 32.3 42.4 57.6
O 57.4 42.6 70.9 29.1 59.4 40.6 43.4 56.6
Total 61.4 38.6 64.8 35.2 60.8 39.2 43.0 57.0

 指標の意味が厳密にはわかりませんが、内向はA型>AB型>B型>O型とありますから、どうやらS/N以外でも、χ2-検定では有意差はなくとも、きちんと差が出ていると考えてもいいようです…。

 TCIに続き、MBTIでも差が出るらしい…ということは、性格検査を選べば差が出る(らしい?)ということです。

 これで、血液型と性格の謎がまた一つ解けたことになる…はずです。

 皆さんはどう思いますか?  -- H19.6.10

32.gif (286 バイト) MBTIの結果の再分析

 その後、MBTIのわかりやすい解説がありましたので紹介しておきます。

 MBTI入門 http://www2.plala.or.jp/lifeplan/mbti2.htm

1. 外向と内向(関心の対象)

「外向」を指向する人に多くみられる特徴
Extraversion)
「内向」を指向する人に多く見られる特徴
(Introversion)
・自分の周囲で起きていることに注意を払う
・話すことによるコミュニケーションをより好む
・実際に行動したり、人との関わりを通じて、学ぶ
・興味を広げる
・人と話をしながら考え、まとめていくことが多い
・人との交流を好み、自分を表現することが多い
・すすんで周囲の人や出来事に関わっていく
・自分の内面に起きている事に注意を払う
・書くことによるコミュニケーションをより好む
・内省したり、肉体的体験を通じて、学ぶ
・興味を掘り下げる
・考えがまとまってから話すことが多い
・一人でいることを好み、
自分を表現することが少ない
・今していることに集中して取り組んでいく

 これはどう見ても、外向型がO型、内向型がA型でしょうし、実際のデータもそうなっています。

2. 感覚と直感(情報の取り入れ方)

「感覚」を指向する人に多く見られる特徴
Sensing)
「直観」を指向する人に多くみられる特徴
(INtution)
・実際に今起きていることに着目する
・実際に役立つことや実践的なことに価値を置く
・ひとつひとつ具体的なことに重きを置く
・ものごとを観察したり、記憶する
・先のことより、今に目が向きやすい
・ひとつずつ、順を追いながら情報を集める
・経験の積み重ねを信頼する
・ものごとの全体像や可能性に着目する
・イメージや洞察に価値を置く
・抽象的なことや理論を大切にする
・事実の背景にあるパターンや意味をとらえる
・今より先のことに眼が向きやすい
・ふっと思いついたり、思いたったことなどから情報を集める
・ひらめいたことを信頼する

 データを見ると、O型が一番感覚的で、B型が一番直観的だそうですが、残念ながら私にはわかりませんでした。(^^;;
 強いて言えば、O型が「ひとつひとつ具体的なこと」「経験の積み重ね」を重視し、B型が「ふっと思いついたり、思いたったこと」「ひらめいたこと」を信頼するということでしょうか…。

3. 思考と感情(結論の出し方)

「思考」を指向する人に多く見られる特徴
Thinking)
「感情」を指向する人に多く見られる特徴
(Feeling)
・分析的観点を重視して考える
・論理的に課題を解決に導く
・原因と結果から考える
・毅然とした印象を与える
・気持ちに左右されず、客観的な真実を追究する
・合理性を大切にする
・公平である
・相手や自分の大切にしていることを重視して考える
・人々への影響を考慮する
・自分の価値基準から考える
・親しみやすい印象を与える
・調和や個人の尊重を求める
・気持ちを大切にする
・受け入れる

 AB型がダントツに思考型で、他の血液型はほぼ同じ傾向でした。A型はもう少し思考型かと思ったのですが、ちょっと意外でした。
 確かに、思考型にはAB型の特徴「分析的観点」「合理性」「公平」の特徴が揃っていますからね。
 A型は、感情型の「人々への影響」「調和や個人の尊重」が効いてきたのかもしれません。

4. 判断的態度と知覚的態度

「判断的態度」を指向する人に多く見られる特徴
Judging)
「知覚的態度」を指向する人に多く見られる特徴
(Perceiving)
・スケジュールにそって行動する
・整理された状態を好む
・規律正しい
・どちらかというと几帳面な
・まずは計画を立てる
・結論を出すことや決着をつけることを好む
・最後に慌ててやることを避ける
・状況に応じて行動する
・制約にとらわれない
・格式ばらない
・どちらかというと柔軟な
・まずは状況をみる
・結論や結果に変更の余地を残しておくことを好む
・最後に一気にやる

 これはどう見ても、判断的態度がA型、知覚的態度がB型でしょうし、実際のデータもそうなっています。

 結論として、B型男性以外も「血液型ステレオタイプ」どおりの結果が出ていると言っていいようです。v(^^)  -- H21.11.14


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最終更新日:平成21年11月14日