「チーズ通り」に並ぶスタンド

10月21日から25日にかけて,スローフード協会が主催する食の祭典「サローネ・デル・グスト2004」が,トリノのリンゴット・フィエラで開催された。

2年に1度の「サローネ・デル・グスト」は,スローフード協会が行うイベントの中で,最も規模が大きく中心的なものだ。

昨年のチーズ・フェスタ以来,スローフードに魅せられた私たちは,休日さっそくトリノへと飛んだ。


フェッラーラの伝統的パンを実演

大きな見本市会場に入ると,約500軒のスタンドがずらりと並び,スローフード協会が認定した様々な食材の試食と販売が行われていた。

通路ごとに,「チーズ通り」「サラミ通り」「ビールの広場」などと名前がついているので,分かりやすい。

各スタンドを覗きながら,振る舞われる試食品をつまんで歩く。

ふと気づくと,歩いているほぼ全員が,”MYつま楊枝”を手にしているのが,おかしい。

柔らかく香り高いサラミ,味の濃い水牛のモッツァレッラチーズ,絞りたてのオリーブ油・・・
どの食材も驚くほどに美味で,しっかりとした個性がある。

「味を知ってもらうことが大事」とお店の人たちは言い,商業的に勧めるようなことはしない。


ポーチ付きワイングラスとワインリスト

エノテカ・コーナーでは,4枚綴りのチケットとワイングラスを4ユーロで購入する。

1757種類という膨大なワインリストの中から,チケットと交換で,1杯ずつ試飲できるシステムだ。

ついてくるワイングラスが嬉しい。スローフードのシンボルマークであるカタツムリがちょこんと描かれたグラスに,首にぶら下げるポーチがセットになっている。

紙やプラスチックのコップではなく,唇に触れるガラスの触感にこだわる辺りが,スローフード協会らしい。

ひとり当たり1個のワイングラスを,洗いながら何度も使い,その後は家に持ち帰るので,ゴミを増やすこともないというわけだ。

ワインの値段によって交換するチケットの枚数は異なるが,最高でもチケット3枚,つまり3ユーロという破格の値段で良質のワインが味わえる。

ワインに合うおつまみも,1〜2ユーロで楽しめる。チケットを追加購入して,長居している人が目立つ人気コーナーだった。


会場内に設営された寿司岩の店

会期内は,味覚のレクチャーが約200,世界の名シェフ13人による実演&試食,子供たちに向けた料理教室,ワイン製造所などを巡るツアー,レストランでの特別ディナーなど,食にまつわるイベントが目白押しだ。

日本からは,京都の吉兆から徳岡邦夫氏が招かれ,湯葉料理などを実演。築地の寿司岩が会場内に店を構え,寿司を振る舞った。

保守的だったイタリア料理界も,ここ数年は他国料理の要素を取り入れ,新しいスタイルが登場しつつある。

中でも日本食の影響は大きく,今回も,日本から参加した2軒には,寿司ファンだけでなく,プロからも注目が集まっていたようだ。

寿司岩の佐藤照男氏は,烏帽子に袴姿で四条流包丁の儀式(直接手で触れず,箸と包丁で魚をさばく)を披露し,翌日の新聞に写真付きで,大きく取り上げられていた。


購入した食材(収穫したばかりのオリーブ,モンタルダのサラミ,ハチミツ,トリュフソース,リンゴ)

誰もが参加でき,楽しめる食のイベントは,企画,運営,サインや出版物のデザインに至るまで,抜かりがない。

12万5千人の入場者のうち,約30%が海外からの来訪者だが,言葉が通じなくても理解し,楽しめるように工夫されている。食の楽しみは,国境を越える。

イギリスのチャールズ皇太子,旧ソ連のゴルバチョフ元書記長など,各国の要人も視察に訪れ,存分に楽しんでいったようだ。

あくまでも基本は,食と,それを通じた出会いを楽しむこと。

決して商業主義に陥ることなく,人をもてなす心と遊び心を忘れない,スローフードに,学ぶところは大きい。

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 関連サイト

  → SLOW FOOD協会のサイト 
 
  

スローフードな人生!
島村菜津(著)

スローフード・バイブル カルロ・ペトリーニ