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| 遠くに行きたい。 2003 07/13 北海道の空は広い。 18の冬、青函連絡船を下りて函館に上陸した。 函館本線は特急といってもなんだかのんびりな感じで、私を北へ北へと運んでいった。 山が本当に遠い。 歩いても歩いてもたどりつかないと思った。 視界の90パーセントが空だった。 一人で暮らしていた頃、時間を見つけてふらっとドライブするのが好きだった。 おもに海を見に。 丸い水平線。 オホーツクの海に足首だけつかっていたら、ひきこまれそうで、海が「おいで」と言ってくれているようで、ああ、私、死ぬのならこの海で死にたいと心に決めた。 今は今で、それはもちろん幸せなんだけど、それはかけがえのない真実なんだけど、いろいろ背負ったリュックやらポケットに詰め込んだものやら全部投げ捨てて、見たことのないものを探しに行きたい時もある。 そんな日曜日。 こんなにアンニュイなのは、アイロンかけが面倒くさいから...。 |
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| ら行。 2003 07/14 うちのたぬ吉(3才)は「ら行」の発音が苦手です。 いわく「デストラン」。 なんか殺伐としていそうでイヤな感じです。 いわく「ダイオン」。 弱そうな上に悪臭を放っていそうです。 いわく「ダブダブ」。 ラブラブな時期を遠く通り越して、お互いにおならで会話できそうなカップルを想像させます。 夫は発音の練習をさせようとたまに腐心しております。 かわいくていいと思うんだけどなあ。 |
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| 赤とんぼ。 2003 08/13 今日、赤とんぼを見た。 もう秋かーとしみじみしながら、かの名曲「赤とんぼ」を心の中で口ずさむ。 そして、ふと思い出した。 小学生の頃、「おわれてみたのはいつの日か」の部分を、 「追われて見たのは」 と思いこんでいたのを。 何かやばいことをしでかして、明らかにヤバイ筋の人から追い回されているのだろう。追いつかれやしないかと、後ろを振り返り振り返り逃亡中なのだろう。 ふと気配を感じて振り向くと、そこには赤とんぼが止まっていて。 15で嫁に行ったねえやは、お里に便りも出せないほどにひどい目に...。 思い違いで、名曲がハードボイルドに。 ついでにもう一つ思い違いの歌を。 「学生時代」という歌があります。 「ツタのからまるチャペルで祈りを捧げた日」という美しいメロディーで始まる名曲。 同じく小学生の私は、これを「つたの」という町から「丸チャペル」という町まで電車に乗って祈りを捧げに行く歌だと認識していました。 「丸チャペルなんてずいぶん変わった町名だなあ、あはははは」なんてのんきに笑っていましたが、変わっているのはあんただよ、と言いにいってやりたいです。 そんな水曜日。 |
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| チューチューアイスのしっぽ、いやむしろ首。 2003 08/18 涼しい夏なのにもかかわらず、ピヨ子とたぬ吉はチューチューアイスを食べている。 あの怪しげな味。 「何入ってるの?」とドキドキしてしまう色遣い。 あれがうまいんだな、子どもには。 私ももちろん好きだったさあ。 弟と比べて、そっちが大きいとかこっちが大きいとかワーワー言いながら食べたさあ。 で問題は、チューチューアイスのしっぽというか、首のところにできるジュースだまり。 そこを飲むのには、一度ぷーっと空気を入れてから一気に角度をつけて口に流し込むという技術が必要なんだけど、たぬ吉はまだ未熟なのでできません。 「おかあさーん、ここにのこったのがたべられないんだよねー」とやってくる。 しょうがないので技を見せてやると、「ありがとうー」と言いながら去っていく。 「それぐらいチビッと残ったジュースどうでもいいじゃん」と思うのだが、ハタと思い返すと、そういうチビッとしたことが案外楽しみだったりする。 例えば、ふたの裏にくっついたアイス。 ポテトチップスの最後の粉々。 インスタントラーメンの底の、のびのびになった短い麺。 グラタン皿の側面にひっついているお焦げ。 それだけをお皿に並べられてオードブルにされても特にありがたくもないものが、その時には大問題だったりする。時には夫婦の危機をも誘発するほどに...。 この日記を読んでくださった方、あなたにも心当たりはないですか? そんなあなたの「チビハッピー」を募集中 |
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| 秘密基地のコト。 2003 08/20 夜7時から「カスミン」というアニメが始まる。 今日は「カスミ、別荘をつくる」の巻。 別荘といえば秘密基地。(ほんと?) 小さかった頃、大抵の子どもはそれぞれの秘密基地を持っていた。 私や近所の幼なじみ達の基地は、道路を3本隔てた空き地にあった。 今思えば廃材置き場だったのだろうか。 ごちゃごちゃと木材やコンクリートの固まりが無造作に積み重ねられていて、子ども一人通れるぐらいの穴からその廃材の中にもぐり込んでいた。 奥行き、2.3メートル。幅1メートル。高さもやっぱり1メートルぐらいのその穴ぐらに、私達は嬉々として、おやつの食べ残しやゴミ捨て場で拾ったマンガなどをせっせと運びこんだ。 大人に見つかったら即座に「危ないからやめなさい」と禁止されるだろう。 どう考えても危険きわまりない「基地」。 それでも私達にとっては、ヒソヒソ声で「基地に集合」と言われるたびに、胸のどきどきが止まらないほど輝かしいシロモノだった。 大きくなっていくにつれて、「基地」は空き地の廃材置き場から友だちの部屋に、そしておよそ先生が見回りにこない演劇部の部室へと、その場所を移していったけれど、本質的には同じものだった。 大人の束縛から離れて、なりたい自分になれる場所。 見つかったら怒られそうなことをやってみるラボラトリー。 不健全で、猥雑なものが必要なときも確かにあるのだ。 |
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| ボロボロさんが来るよ。 2003 08/24 今朝はパン。 パン好きな子ども達はわしゃわしゃとよく食べる。 そして散らかす。 ご飯の時もよく散らかす。 ご飯粒をそこかしこにつけて歩き回っているので、食べ終わってしばらくはまるで「ヘンゼルとグレーテル」状態である。 「このご飯粒をたどっていけばピヨ子とたぬ吉にたどりつくのね」というアレである。 ご飯でそれだから、パンの時はものすごい。 食卓テーブルの下には夜空に散らばる星々のようにパンくずが。 「もーう。またこんなに散らかして...。 ボロボロさんが来るよ!!」 と私はブツブツとつぶやきながら掃除をする。 ボロボロさんとは何か。 それは子どもがボロボロと食べこぼすそのにおいをかぎつけて、どこからともなくやってくる妖怪なのである。 こぼしたものを食べているうちに、子どもの手や足まで食べてしまうという、かわいらしい名前とは裏腹に、とても恐ろしい妖怪なのだ。 こわ〜〜〜〜〜〜い。 考えたのは私である。 自分で考えて話しているうちに、本当に怖くなってしまうことがあるのだ。 ミイラ取りがミイラなのだ。 でもまだ子ども達はボロボロさんに食べられていないようなので、安心安心。 |
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| ブルーハーツが好きだった頃。 2003 09/04 毎日毎日飽きもせず、ピヨ子とたぬ吉はおもちゃを散らかす。 おもちゃならまだしも、お菓子の空き箱、折りかけの折り紙、呪文のような言葉を書きつらねた紙の切れ端、ボタンの取れてるポケット、汚れて丸めたハンカチ(後半フィクション)など全てが「いるもの」らしいので、家の中は年中フリーマーケット状態である。 私は黙って片づけたり、怪獣のような大声を出して片づけさせたりするのだが、黙っているときにはいつもブルーハーツの歌が頭の中に流れている。 「いらないものが多すぎる。いらないものが多すぎる。」 高校から大学、そして社会人になっても、つらい時うれしい時、ブルーハーツをよく聞いた。 マーシーの言葉とヒロトの歌声はぶっきらぼうで、それでいてズバーーーンと直球ど真ん中。 何度救われたかわからない。 あの頃の攻撃力は私の中ですっかりなりをひそめてしまい、かわりに防御力は格段にレベルアップした(と思う)。 手に入れたものとなくしたもの。 天秤にかけてもつり合うはずもないし、あの頃に戻りたいわけではないのですが、欠けてしまったトゲを少々懐かしく思う、木曜日の昼下がり。 |
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| それを知ってどうしようというのか。 2003 09/11 窓から外を見ると、お向かいの奥さんと斜め向かいの奥さんがお庭仕事をしていらっしゃる。 でもきっとお互い挨拶もしていないに違いない。 なぜかというと仲が悪いからだ。 うちの隣の奥さん情報によると昔はとても仲がよかったらしい。でも今は顔を合わせても口をきかないそうなのだ。 なぜホワイ? 何があったの? 聞きたい!! でも聞けない。 理由を知ってどうしようというのか。どうもしないけど聞きたい。 以前勤めていた職場の上司(50代・男性)には「ヅラ疑惑」があった。 風の強い日に頭を押さえていた、とか。 鏡を見ながらヅラのずれをなおしていた、とか。 もみあげが二本あるのを見た、とか。 もう都市伝説化してきていた。 そんなある日、その上司の年に似合わぬ黒々とした頭髪が、一夜にして白髪混じりになった。 一夜にして!! 白髪がこんなに!! マリーアントワネットじゃないんだから!! 夕べそんなに恐ろしいことがあったのかと、よっぽど聞きたかった。 「ヅラだ」「ヅラだわ」「ヅラだったんだな」 その場にいた人々の頭上に、そんな吹き出しがモワモワ〜ンと浮き出てくるのが私には見えた。気がした。 ヅラだろうがデブだろうが不細工だろうがそれはその人の個性なのでいいのだ。 いいんだけど、やっぱり私は聞いてみたかったのだ。 そのヅラはかぶるタイプのものなのですか?と。 聞けなかったけど。 |
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