「林檎」2003.3.19

     林檎ジャムを煮詰めながら
     林檎の好きな祖母を想う

     白銀の髪
     やさしい手
     会うたびに小さくなる肩
     それでも彼女は
     ピンクのフリースなど着こなして
     ソプラノの声で笑うのだ
     そして笑ったと思うと
     いきなり涙する
     老いがゆるやかに 彼女を童女にしていく

     やがて時を経て
     全き童女に戻るその刹那に
     彼女が一番戻りたい場所は
     どこなのだろうか
     その時彼女は
     好きな林檎をほおばるだろうか