「桜雨」 1988.春

宵月ひらひら笑ふ頃
かなしき程の桜雨
彼の木の下で吾を待つは
濡れそぼつた幼き児
桜が見たいと言ひながら
たうたう見ずに逝つた吾子

 ほうら  ご覧
 よく   ご覧

          これが桜
                これが桜
                      これが桜

ゆるゆるとあふれる花びらで
お前の布団をつくらうね
お前の産着をつくらうね
お前のむつきと
お前の帽子と
お前の草履と
お前の晴れ着と
それから
お前の

お前のカラダをつくらうね

宵月こぽこぽ笑ふ頃
いとしき程の桜雨

桜漬けにした思ひ出を
けらけら流す桜雨