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「じゃあ、わたしがさいしょね」
「うん、サチがおみせのひとね」
小学校前の子だろうか? 5〜6才の女の子二人が、ままごと遊びをしていた。
サチとユーコは近所の仲良し。今日はユーコがサチの家に遊びに来ていた。母親同志
も仲良しで、親達はリビングでお茶をしながら夢中で話し込んでいた。
「ヨーコちゃんいらっしゃい このイスにどうぞ」
「はい、わかりました」
サチはヨーコを子供用のカエルの絵のイスに座らせ、どこからもってきたか白いシー
ツを体全体に巻き付けた。
シュッシュッシュッ
これまたどこから持って来たか、植木に水をやる霧吹きでユーコの髪を濡らした。櫛
で肩下まである髪をとかした。
「きょうはどうなさいますか」
「ばっさりみじかくしてください」
「わかりました〜さっぱりしちゃいましょう」
「はーい」
幼い2人はどうやら美容室ごっこをしているようだった。
サチは文具用のハサミを手に持ち、ユーコの背中まである髪を掴むと、ザクザク切
り始めた。後ろの髪がうなじの上で無惨にザンギリになっていた。掴んではチョキチョ
キ切っていた。白いシーツにはバサッっと髪束が落ちている。
まだその程度ならよかったのだが、上の髪も掴んでジョキジョキ切り始めた。2人
はキャッキャ言いながらゴッコを続けた。
ユーコはザンギリ頭になり、サチと立場を変えてまたごっこは続いた。
「きょうはどうなさいますか〜」
「きりたくないんだけど、ママがきれってうるさくて」
「そうですか、じゃあみじかくしましょうね」
「やだな〜」
ヨーコはサチの腰まである髪を不器用に掴むと、なんと根元からザクザク切ってしまっ
た。頭のてっぺんがめちゃくちゃ短くなっていった。数回くり返すとまるで河童の子
供のようになってしまった。
ヨーコは自分の頭を触ったとたん急に悲しくなり泣いてしまった。
「うぇーん、マ〜マ〜」
ヨーコは親たちのいるリビングに泣きじゃくりながら走っていった。サチはハサミと
長い毛束を持ってキョトンとしている。
「ヨーコどうしたのその頭!」
「ヨーコちゃん、なんかあったの! サチ!!」
陽子の母親は泣きじゃくるヨーコを抱き締めている。幸子の母はサチを子供部屋に探
しにいった。
「サチ あなた何したの!」
「ヨーコちゃんとびようしつやさんごっこしてたの〜」
「なんて事するのあんたは!!」
「だってサチはびようしさんでヨーコちゃんはお客さんだったんだも〜ん」
「こっちに来なさい!!」
「ママこわいよ〜」
親同志お互い謝り、子供同志も謝りあい、その場は子供のした事ということで収まっ
たが、二人の子供のめちゃくちゃな頭をどうにかしなければならなかった。
母子2組みは美容室に急いで行く事になった。しかし美容室は混んでいて飛び込みで
は閉店までに順番が廻ってきそうになかった。しかたなく2組みの親子は近くの理容
室へ向かった。
美容室と違ってカット椅子が2つしかない小さな床屋は客がいなかった。
「すみません、この子の頭なんとかして下さい」
「じゃあ、ここに座って下さい」
30代の男性理容師は子供用の補助椅子をカット椅子の上にまたがせ、その上にヨーコ
を座らせ子供用のアニメ柄の刈布を巻いてスプレーで髪を濡らした。
「これどうしたんですか?」
「子供同志、いたずらで髪切りあっちゃってこんなになったんです」
「これ短いと頃に合わせるしかないですね」
「どんな感じになりますか?」
「五分刈りですね」
「五分刈り!!!」
驚く母親にサチの親が平謝りした。渋々ヨーコの母親は娘の五分刈りを了承した。
「じゃあ刈りますよ」
理容師はバリカンのスイッチを入れてヨーコのうなじから後頭部にバリカンを進めた。
ブィ〜ン ブイ〜ン
無惨な後頭部がまるで芝刈り機にでも刈られたかのように綺麗に揃って刈られていく。
「おじさん、くすぐったい」
「ごめんね、すぐ終わるからね〜」
ヨーコは落ち着きなく、体をくねくねしている。
ブィ〜ン ブイ〜ン
横や前の髪にバリカンが入るとばっさばっさ、ヨーコの見える範囲の刈布に髪束がいっ
ぱい落ちていく。ヨーコは目が点になっていた。
「ママ〜 わたしおとこのこみたいになっちゃった」
ヨーコは泣き出してしまった。
刈り終わり五分刈り頭のヨーコはシャンプーを終えた。
「ごめんねヨーコちゃん サチ! あなたも早く刈ってきなさい」
「はーい」
サチは嬉しそうに椅子に座った。
「お母さん、この子は後ろ刈り上げ程度で、あとはおかっぱでなんとかなりそうです
よ」
「そうですか。でもうちの子はヨーコちゃんよりも短い坊主にしちゃって下さい」
「は? そんな短くしなくても大丈夫ですよ」
「いいんです。この子にはヨーコちゃん以上の悲しみを与えなければならないんです」
「じゃあ、さっきは9ミリのバリカンでしたが、もっと短くするんですね」
「ええ、一番短い坊主にしちゃって下さい」
「わかりました」
「サチ、覚悟しなさいよ!!」
理容師はバリカンの刃を変えた。
「本当にいいんですね。一番短いのって0.5ミリですけど」
「いいです。早くこの子をクリクリ坊主にしちゃって下さい」
「お嬢ちゃん、今からバリカン入れるけど泣かないでね」
「サチなかないもん!」
ブ〜ン
バリカンのスイッチが入った。ヨーコの時とバリカンの音が違う。
ブ〜ン ジョリジョリジョリジョリ
サチの前髪からてっぺんに向かって青い線が入った。
ブ〜ン ジョリジョリジョリジョリ
中途半端に長い髪がまるで小さな落ち武者のようになった。
ブ〜ン ジョリジョリジョリジョリ
耳周りの髪もバリカンでバサバサ髪がまとまって落ちていく。
サチは刈布の中から手で刈布に落ちた髪を掴もうとしている。
ブ〜ン ジョリジョリジョリジョリ
後ろも刈られすっかり青坊主になってしまった。
母子は理容室を出て家路に向かった。
当の子供達はお互い相手の頭をキャッキャ言って触りあっている。
「ヨーコちゃんのあたま しょりじょりするね〜」
「サチのあたまは じゃりじゃりしていたいね〜」
2人は髪がショートに伸びるまで4ヶ月を要した。しかし二人が通う幼稚園では人気も
のになってしまった。子供なのでフェチとはわからないが、大半の子供が素直に2人
の坊主頭を触って気持ちいいと言っていたらしい。
サチとヨーコは坊主を意外に気にいっていたが、親の意向でその後嫌々伸ばし始めた
という事だ。
Das Ende
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