HF小説007(女断髪)
タイトル:your hair only
著作者名:帝国従軍作家A

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(1)

 友春とはもうつき合って5年になる。私は短大の時に合コンで知り合ったのがきっ
かけで、お互い社会人25才になってもまだ関係は続いていた。
 彼と知り合った頃はすごくやさしくて、私の長い髪を綺麗だね、と褒めてくれたの
が嬉しかった。
 私は物心ついてから肩から短くしたことがなかった。大抵背中から腰までのストレ
ートヘアをいったりきたりしていた。中高とも女子校だったので学生時代もずっと三
つ編みロング。パーマもカラーリングもまだ一度もした事がなかった。
 週末は必ず友春が部屋に泊まりにきてくれて、シャンプーもリンスも、ドライヤー
も皆やってくれて、1週間働いてくたくたな私は週末のスタイリングに気を使わない
で済んでいた。
 彼は美容師でもないのに妙にヘアに詳しかった。ちょっと毛先を揃えただけでも「
今日美容室行って来たでしょ、かわいいよ」と言ってくれた。中々微妙なヘアスタイ
ルが変わった事を気付いてくれない!と嘆く女性が多い昨今、彼はちゃんと気付いて
くれる。それだけで自分がちゃんと見られている、愛してもらっていると実感が沸い
てきて嬉しかったのだ。

 デートする時は、綺麗にブローしてくれ、三つ編みに結ってくれたりアップにして
くれたりした。彼は長い三つ編みを自分の首に巻き「マフラー」等とおどけたりして
いた。ボーナス時期には大量の保湿トリートメントを色々な国の色々なメーカーから
集めてくれた。彼はかなりマニアックになっていた。
 しかし困った事もあった。パーマもかけてみたいし、カラーリングもしてみたかっ
た。一度カーラーーで巻き髪を作ったときは彼にすごく怒られた。
「美しい髪が台なしじゃ無いか!!」
でもこの時は私の為に言ってくれているものだと思っていた。
 本当はクリクリパーマをかけてみたい。ハイライトを入れた茶髪にもしてみたい。
しかし彼の異常なまでの黒髪へのこだわりでブチ切れるのが恐くてしかたなかった。
「絶対髪切ったり加工とかしないでね」
彼の口癖だった。休日に美容室に行くときもクドクドと念を押された。それでも美容
室に行ってきた日は、彼はやさしく、夜の性愛は凄まじかった。
 彼は髪を1束1束を丁寧に舐め、匂いを嗅ぎ、髪を撫でながら愛してくれた。私はた
びたびイッてしまい快楽にひたった。
 普段は酒もタバコもギャンブルもしない気弱なやさしい男であった。浮気もしない
し、私の言う事は何でも聞いてくれるし、私にはうってつけの彼氏だった。
 そんな彼に私は次第に違和感を感じ始めていく事になる。

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(2)

 彼とつき合って5年目の夏、髪は背中まで伸び、だいぶうざったくなっていた。こ
の夏は特に猛暑で暑苦しかった。よっぽどショートにバッサリ切ってしまいたかった
が、彼が五月蝿いので我慢した。
 ストレートの長い髪は結ぶのもひと苦労だし、垂らしたままだとじゃまだし、どう
しようもなかった。彼はこの夏仕事が忙しく、会える日がいつもより減っていたせい
もあり、とうとう私は美容室に行ってしまった。
「切らなきゃいいわよね」と自分で拡大解釈をし、美容師に相談した。切らないので
あればウェーブを作って空気入れた方がいいとか肌から髪を離したほうが涼しいとか
言うのである。
 どんな風にするか雑誌の写真等を見て、これ! というスタイルがあった。茶髪で
きつめのパーマ、2トーン明るいハイライト。写真のスタイルは外人のものであった
が妙に気にいってしまった。早速こんな感じでと注文した。カラーリング、ハイライ
ト、パーマ、仕上げで合計5時間もかかってしまった。少し腰が痛くなったが、それ
よりもずっと我慢していたパーマもカラーリングもやってしまってスッキリした。
 そんな時に限って彼から携帯に留守電が入っていた。
「今晩やっと行けるから! よろしく」
 この頭を見たらなんて言うか少し心配になってきた。でも自分ではすごく気にいっ
ている。私の事が好きなのだから大丈夫よね、とたかをくくって帰り彼が来るのを待っ
た。

 夜になり彼がやってきた。開口一番
「なんでそんなひどい頭にしらんだよ!!」
私は耳を疑った。普通いきなりそんな事を言われたらだれでも怒るだろう。
「カラーもパーマもしない約束じゃないかっ!!」
「切らないとは約束したけど、切っていないから別にいいじゃない」
「ダメだ! だめだ! 駄目だ!! あんなに綺麗だったのに!!」
「これが汚いとでもいうの? ふざけないでよね!」
「明日すぐに元に戻して来いよ!!」
「嫌よ、気にいってるんだから!」
「なにお〜っ!!」
彼は私を思いっきりぶった。初めてぶたれた。目つきが半端じゃなかった。なんでそ
こまで言われやられなければならないの?
「もう帰ってよ!」
「オレがいまからコンビニでストパー買って来てやる」
「何する気?」
「こんなクリクリ頭にしやがってー!!」
彼は私を襲い始めた。
「出て行ってよ!! 警察呼ぶわよ!」
「ふざけんな!!」
私は恐くなり彼を玄関から追い出してドアをロックした。
彼の異様なまでの私の髪への執着を改めて知った。とても恐怖に思えた。
 私は気持ち悪くなり、後日一方的に別れ話をし電話を切った。

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(3)

 私は彼からの呪縛から逃れようと連絡を一切断った。すると毎日のように電話がし
つこくかかってくるようになった。無視して出ないが留守電に10件20件と似たような
メッセージが入るようになった。
「なんで出ないんだ!」
「なんでパーマなんかかけたんだ!」
「なんで茶髪なんかにしたんだ!」
「僕はあの綺麗な髪が好きなんだ!」
等々。
 携帯番号を変更した。すると家のポストに手紙が入るようになってきた。
「なんで髪を元に戻してくれないいだよ」
「なんで綺麗な髪にしないんだよ」
「なんで僕の好みの髪型にしないんだ」
等のなぐり書き。
 警察に相談するも、予防策と一般的な話しかしてくれなかった。特に別れた彼氏と
いうことでなかなか親身に話を聞いてくれなかった。

 その後通勤電車内で私の髪が引っ張られる事があった。満員電車から降りると毛先
がべちょべちょに濡れていた。周りを見渡すと藤田友治に似た後ろ姿の男がダッシュ
で逃げて行った。まさか......。
 そうこうして、とうとう会社にまであの男は電話してくるようになる。最初は居留
守を同僚に頼んでいたが、あまいにも頻度が多くなってきたので、仕事的にもまずい
立場に私はなってきていた。
 意を決して電話に出て、会社帰りに会う事にした。私の腹は決まっていた。
「ナツキ〜会いたかったよ〜ん」
「何しにきたのよ、この変態!」
「変態はきついよな。僕はただ綺麗な髪が君には似合うって言っているんだよね」
「これが汚いというの? アンタは私じゃなくて私の髪を好きになっただけでしょ!」
「.................」
「このフェチ変態野郎! もう2度とつきまとうな!」
「そんな事言うなよ〜 今から美容室行って直してこいよ。色も黒に戻してさ」
「......そうね」
私は瞬時に考えて彼の言う通りにする事に決めた。
「じゃあ、今からあなたの望み通り美容室に行きます。あなたも一緒に来るでしょ?」
「ううん、僕は外で待ってる」
「あっそう。じゃあ、そこの店に入るからね」
私は2階にある大きめの入った事のない美容室を指差した。
「ストパーかけて黒髪に戻すんだよ〜」
「しつこいわね!!」
私は勢いで2階にあがる階段を駈け上った。

「今日はどうなさいますか?」
「カットで」
「担当者のご指名はございますか?」
「ありません」
「ではこちらにどうぞ」
がらがらだった店内で早速シャンプーされ、カット台に案内された。
「お待たせしました。どんな感じにしますか?」
「バッサリ切って下さい」
「どのくらい切ります?」
「これでもかっていうくらい短く」
「ベリーショートですね」
美容師はヘアカタログを持ってきてあれこれ見せた。
「この中で一番短いやつでいいです」
「一番短いのこれですけど」
「これですと上まで短い刈り上げになりますけど」
「いいですよ とにかく思いっきり短くしたいんです」
「分かりました」
美容師は私の血相をみて、短くする決意があるとふんだようだ。すんなりそのスタイ
ルにしてくれるらしい。でもなんかドキドキしてきてた。この自慢の髪を切るらなきゃ
ならないなんて。
ピンク色のカットクロスを巻いて、止めていた髪を元に戻した。私の気にいっていた
肩下まであるクリクリヘアの見納めである。クロスの上でふわふわした髪が泳いでい
た。

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(4)
 
 美容師が容赦なく濡れて更にクリクリになった肩下の髪を適当に掴んでは容赦なく
ザクザク切ってゆく。ザックリ感が髪を伝わって心地よい。ザクザク切られてアゴく
らいに全体を切られてゆく。こんな快感は久しぶり。カットクロスにはクリクリの濡
れた髪束がいっぱい振り落ちている。
 横は耳上5センチくらいの位置でブロッキングされピンで留められた。後ろもそれ
に準じて留められているみたい。
 ノーブロックのボリュームが減った部分にコームが入り、コームの上にバリカンが
走り、コームから飛び出た髪を削り落としてゆく。
 ビーーーーー ザザザザザザ
その動作をくり返し耳周りから徐々に上に刈り上げができあがってゆく。
 ビーーーーー ザザザザザザ
後ろも前向きに頭を押さえられ、コームを入れてはバリカンを走らせている。ある程
度まとまって ボザッって感じで髪が落とされていくのが分かる。刈り上げは初めて
だったけど結構癖になるくらい気持ちいい。ぞくぞくしてきた。なんかうっとりして
いる自分がいた。
 バリカンの音が止まるのと同時にハッと我に返った。鏡を見るとトップ以外がブラ
シのように短く綺麗な刈り上げになった私がいた。
 
「このままツーブロックというのもオシャレですよね」
 上にブロックして留めていたクリクリ髪が下ろされた。刈り上げに髪がかかるのっ
て変な気分。ツーブロックってこんな感じなんだ、けっこうこれも心地いいじゃない、
と思いながら頭を少し左右に振ってみた。上の長い髪が短い刈り上げ髪とこすれてこ
そばゆかった。
 美容師は戻した残りの長い髪をまた思いっきり掴むと、私の目の前でザクザク切っ
て行った。
 シャキシャキシャキ シャキシャキシャキ
指2.3本分くらいの長さを残して自慢のクリクリヘアが切り落とされてゆく。
 シャキシャキシャキ シャキシャキシャキ
トップの髪が立つくらい短くなってゆく。
 カットクロスには更に切られたクリクリした髪が落ちてゆく。なんか切ってしまっ
たパーマ髪ってけっこうエグく見えるかも。
 美容師はハサミを持ち替え、若干まだウェーブの残っているトップの髪に縦にハサ
ミを入れていく。細かい髪が耳や顔に振って来る。
 しばらく仕上げをしたあげく、美容師は私の頭を手でさすった。細かい毛が一杯落
ちて来た。感触はまさに不揃いなブラシになった気分。
 シャンプーして、ワックスを付け後ろに流した私は、気分的にだけ雑誌に乗ってい
た外人さんみたい。NYで働くキャリアウーマンって感じ?
 さあ、これでやつはなんて言うか! 現実問題がまた頭を過って来た。
 私は店を出て、やつを探した。
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(5)

 辺りを見渡しても奴は見当たらない。しばらく目で探していると柱の影にやつはい
た。
「終わったわよ、お望み通り切ってやったよ!」
「ふざけるな! なんで短くしたんだ!!」
私は奴のセリフを聞いた時に勝利を感じた。
やつは1人で文句をぶつぶつ言いながら私の前からダッシュで去って行った。

 それからというもの、例の髪フェチ変態野郎は連絡をしてこなくなり、目の前にも
現れなくなった。
 今後はどんな髪型でも普通に褒めてくれる普通の彼を探します。そして刈り上げた
短い頭で今はファッションを楽しんでいます。
 皆さんもくれぐれも髪だけをあいする男にはご用心!

<Das Ende>

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 第3惑星fetieam帝国<小説大隊>あて
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