『祝婚歌』
 1996年4月から3年間、山形県酒田市に単身赴任をした。
酒田は、北前船と呼ばれた江戸、京都、大阪との交易により繁栄を極めた最上川河口に位置する港町である。酒田では毎月『SPOON』というタウン誌が全戸に無償で配られ、私も社宅のポストに入るのを楽しみにしていた。
『SPOON』は、1999年に「第13回NTT全国タウン誌フェスティバル」で部門賞企画賞(大賞次点)を受賞した実力のあるタウン誌である。
 ある日、『SPOON』を見ていると酒田市出身の詩人吉野弘さんのインタビュー「おしゃべりポエム 風の記憶」(1997年4月より1年間連載、1998年に同名の本として出版)に『祝婚歌』という詩が紹介されていた。

感動した。
何度も、何度も繰り返した。

 インタビューには、詩にまつわる話が綴られている。『祝婚歌』は、姪御さんの結婚式に出席できない吉野さんが送ったものだそうだ。題名も『祝婚歌』ではなく『・・・・夫妻に』(・・・・は姪御さん夫妻の名前、ここでは記載せず)だったそうだ。当時吉野さんは40代後半、姪御さん夫妻にいい夫婦でいてほしいという願いを伝えたかったこと、自分にも言っておきたかったこと、奥さんへのお礼を言いたかったとコメントされている。

 これからも折に触れ、読み返したい詩(うた)である。

 今月は、June Bride。たくさんの幸せなカップルに捧げたいと思います。
『祝婚歌』 吉野 弘
二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい

        ・第六詩集(詩画集)「風に吹かれて」
        ・おしゃべりポエム 風の記憶 著書吉野弘
        ・続・吉野弘詩集 収録作品
 『祝婚歌』の著作権に関しては、「イッセーおやじの中年のひとりごと」に吉野さんご本人のお考えが
紹介されています.
吉野さんのコメントを参考にして、私の責任で掲載させて頂きました。