2006年1定予算特別委員会質問原稿 (経済局)

 私からは、市内のデジタル産業について3点ほどお伺いします。

 今回の我が会派の鈴木議員の代表質問に対する答弁によりますと、本市としては、「市内のIT産業を10年以後には、1兆円規模へと育成していきたい」ということでした。大変景気のいい噺で、ホントにそのようになればいいなと、私も思うわけですが、ひょっとして、これは、緑30等の市長公約に続く、大ボラではないか、という心配もありますので、是非とも、今日は、私の心配を払拭していただきたいと思いまして質問させていただくことにしました。

 皆様ご承知の通り、先日来、ライブドアの粉飾決算の件が取り沙汰されており、国内のIT産業の行く末が危ぶまれるようになり、本市の札幌バレーを含めたデジタル産業界にも少なからず影響が出ているものと思われます。もっとも、業界関係者の話によりますと、ライブドアの一件がなくても、ソフトウェア開発の最前線では、もう、日本は国際競争力を失っていて、技術者の質の面でも、数の面でも、中国・インドなどにもかなわない状態になってるそうです。

 日本が中国・インドに負けてしまった要因は色々あるみたいですが、私の聴いたところでは、大きく3つの要素があるようです。

 ひとつは、業界内における収益の相場が国際化していることです。同じ仕事をして、同額の収入を得ても、賃金レベルの高い日本などでは、その仕事は全然おいしくなくて、中国・インドでは凄くおいしいわけです。今の日本では、そっち方面の仕事は安くてキツくて、身体に悪い、ということになっており、若者の就職先としては不人気な部門になっていて、そこには優秀な人材が集まらないそうです。これに対して、賃金レベルの低いインド・中国では状況が逆で、優秀な人材が競い合ってデジタル産業に参入してくるそうです。

 2つ目の要因は、デジタル産業自体の特異性です。

 そもそも、デジタル技術は、その分野の論理構成の仕方さえ身につければ、他の産業が要するような長い年月で培われるノウハウの蓄積のようなものを必要としないため、先進技術に追いつくのが至極簡単なのだそうです。その上に、日本の大学では、あまり、コンピュータに関する専門知識を教えておらず、コンピュータソフトの会社に入社する人材のほとんどが、何もわからずに入社してくるそうです。日本の技術者は、スタートの段階で国際レベルに追いついていない上、業界自体に歴史的な経緯からくる優位性がないため、新規に参入して来たインド・中国にまったく太刀打ちならなくなった、ということだそうです。

 3つ目の要因は、中国やインドの社会構造上の特異性です。

 中国の社会構造上の特異性とは、ひとことで言うと、都市戸籍のことです。都市戸籍という単語は、日本人には耳慣れない言葉ですが、要するに、中国では、その都市戸籍を得られると都市に居住できるようになり、生活水準が飛躍的に良くなるそうです。農村部にいる人たちは、農民戸籍というものしか持たないそうで、それらの人たちは、都市戸籍を獲得して都市に住むのが夢だそうで、一族の中のだれかが都市戸籍を得ると、一族の者が皆それにぶら下がって都市戸籍を手に入れられるため、一族総がかりで優秀な子に投資をして大学に行かせる、というような状況もあるそうです。そして、中国の大学生の間では、中国人にすれば破格の収入を得られるデジタル産業界に就職するのが夢となっており、その下準備として、コンピュータサイエンス系の学問を専攻するのがブームになっているそうです。都市戸籍を得んとして凄まじい競争を勝ち抜いてきた人材が、しっかりとした基礎を身につけた上でデジタル業界にどっと参入してくるわけです。

 インドには、都市戸籍はないようですが、職業カーストの縛りがあり、ありとあらゆる人民に職業による序列があります。人力車を生業としている者よりもオートバイで人を運ぶ者の方が上位にランクされており、タクシードライバーを生業にしている者はさらに上位に位置づけられていたりします。そして、その序列を越えて、人力車を生業としている者の子どもがタクシードライバーになることは許されていません。しかしながら、IT産業などの新しい産業は、その職業カーストの縛りを受けないため、どんな人材でも参入できるようになっており、ここに優秀な人材が競い合って参入してくる仕組みがあるようです。

 以上3つの要因により、日本のデジタル産業は、従事者の人数でも、質でも、負けてしまったようです。

 札幌バレーのデジタル産業系の企業を含め、国内のソフトウェア会社は、現在は、携帯電話関連の下請け仕事で、かろうじて生き延びているそうですが、こっちの方面には、もう、あまり将来性はなさそうでした。携帯電話の開発競争は、かなり激化しているため、いちいち海外に発注していては時間的なロスが多くて競争に追いつけず、そのために国内業者に仕事がまわるそうですが、ただ、それらの仕事はダンピング競争がひどくて、利益率の低いものばかりだそうです。

 業界が生き残るためには、その中国・インドといかに共存・共栄するかが課題となっているようで、その共存する方策の一例としては、仲介業的な窓口業務があるそうです。日本の中堅企業などは、なにかのソフトウエアの開発を注文する際、ほとんどの場合において、何が必要なのかに関する明確で克明なビジョンをもっておらず、紙に書いた契約書もつくらずに、口頭で業者とあれこれやりとりし、そのやりとりの中で注文するモノの内容が煮詰まってくるようです。実際にプログラムを書く仕事は中国・インドに発注するのが価格の面でも質の面でもいいわけですが、何を注文するかを煮詰める作業を手伝って仕様書のようなものを作成する部分に国内のソフトウェア会社の入り込む隙間がある、ということでした。

 その仲介業的な部分の仕事というのは、まだ、はっきりとした形で分業化されていないわけですが、本市側でなにかの手助けができないものかと思っておりましたところ、この度、経済局の方では、今回の予算案の中に、高度情報通信人材育成・活用事業なるものを盛り込んでいます。その目玉となるのは、プロジェクトマネージャーの育成ということのようです。

 そこで、1点目の質問ですが、そのプロジェクトマネージャーなるものが、いったいどういうものなのか、その仲介業的な部分をやる仕事なのか、現在の札幌市には、それをやっている人が何名くらいいて、どのような仕事をしているのか、その人材育成から1兆円規模のビジネスを産み出すまでのスキームやビジョンを詳しくお知らせいただきたいと思います。

 2点目の質問としては、新たに創設される留学制度についてお伺いします

 昨年の3定で、民間サラリーマンを対象とした留学制度を創設してはどうか、という質問をさせていただきましたら、「調査研究する」というようなご答弁をいただきましたが、経済局は、デジタルコンテンツ産業の従事者向けに留学制度のようなものを企画しており、ささやかながらも予算措置を決めているようです。そこで、その予算額がどの程度のものなのか、また、その留学先はどこの国を考えているのか、期間はどのくらいなのか、といった点をお知らせいただきたく存じます。また、その札幌のデジタルコンテンツ産業には、一般のデジタル産業とは異なる国際競争力があるのかどうかも併せてお伺いします。

 (再質問)

 プロジェクトマネージャーについては、よくわかりました。ただ、話題になっているライブドアも、もともとはソフトウエア開発の仕事を本業としていた会社なわけですが、先にも申し述べました通り、本業では中国・インドには太刀打ちできなくなり、生きのびるために企業を売り買いして自社株の時価総額を増やす奇妙な商売に手を染めたわけです。

 高度情報通信人材育成・活用事業がうまく行って、プロジェクトマネージャーの育成に成功しても、楽天やソフトバンクのような流通業や金融業的なIT産業が栄えるばかりで、へたをすると第2、第3のホリエモンを育てることになるのではないかと心配です。この点についてのご見解をお伺いします。

 それから、デジタルコンテンツ産業についてですが、答弁内容を整理しますと、市立大学のデザイン部門による下支えで国際競争力を養う、ということかと思われますが、そうなると、その学生のレベルがどの程度のものかが大きなキーポイントになると思われます。となると、その手の学生を対象とした市主催のコンテストなどがあってもいいかと思うのですが、そういう企画があれば、お知らせください。