群別岳への旅

 選挙が終わり、やっと山に行ける身分になった。ご支援をいただいた人たちからは、

 「山に登らせるために応援したんじゃないぞ!」

と言われそうで、なんとなく後ろめたかったが、芳川くんから電話がかかって来たときには、もう選挙のことは頭にはなかった。

 「そろそろ落ち着いたか?」

 「う〜ん、まだ、残務整理が色々あるけど、まあ、もう、終わったよ」

 「それならさ、浜益御殿から群別岳への縦走をやらないか?」

 「ハードなやつか?」

 「百名山を書いた深田久弥が暑寒別岳をやったときに群別岳を見て、あそこに登れるのはごく僅かな人たちだけだろう、って溜息をついた話があってさ、かなりとんがった山なんだけど、これを浜益御殿の方からやる人はあんまりいないんだわ。厳冬期はいつも吹雪いているそうで、登山道もないから夏にもやれないコースで、やるとしたらこの時期しかないんだとさ、でも、浜益岳まではみんなやってるけど群別岳まではやる人がないから、記録も少なくてね、これをやって、その写真を勝木のホームページに載せれば、貴重な資料になるぞ」

 「よし、じゃあ、今晩にでも打ち合わせしようや」

 ってなわけで、話はその晩のうちに決まった。

 5月3日に浜益村から山に入って、スキーにシールを貼って浜益御殿に登り、さらに進んで浜益岳の山頂付近にキャンプを張り、翌日に群別岳に登り、その日のうちに来た道を引き返して帰宅する、という1泊2日のスケジュールとなった。

 が、実は、私は、この打ち合わせの時点では、浜益御殿が独立した山の名前であるとは知らなかった。浜益岳の横に張りだしたコルのようなものだとばかり思っていたのだ。なにせ、私が持っている夏山ガイドには、浜益岳も浜益御殿も載っていない。夏にはやれない山だからだそうだ。

 ちなみに、私は、腕立て伏せ500回とヒンズースクワット350回の筋トレを選挙中も一日おきに続けていた。が、半年以上も山に入ってなかったため、縦走という響きに不安を感じ、とりあえず、その数日後に、残雪の中を真狩コースから羊蹄山に登ってみた。4時間40分で噴火口のところまでたどり着いたので、「まあ、なんとかなるだろう・・・」と思ったが、このときはスキーを使わなかった。スキー靴での縦走には、やはり、少なからず不安が残った。昨年の春にスキーで余市岳をやった際の帰路、右足のスネに凄まじい靴擦れを起こし、一歩進むごとに脳天を突くような激痛にさいなまれたことが頭から離れなかった。

 左が登山にも使えるスキー靴(1.9kg)で、右が羊蹄山に使った冬用の登山靴(1.0kg)である。スキーが上手ならば右の登山靴にスキーを履くという手がある。が、私の技術では、左のスキー靴を履かないと、V字回転もできない。登るだけならいいが、滑走するには、スキー靴でなくてはどうにもならない。お店には、この2種類の他にプラスチック製の登山ブーツというのが売られている。革製の登山靴よりも足首が締まるので、スキーにも使える。それを買ってくればよかったのだが、バタバタしていて思いつかなかった。


次へ