芦別岳・本谷(5月17日・18日)

 群別岳の疲労がようやく回復しはじめたころ、芦別岳の本谷をやることになった。

 昨年に芦別岳の新道コースに連れて行ってくれた渡辺さんが、「今度は、本谷だな」と言ってくれたのが話の発端だった。私は、その本谷なるものがいかなる谷なのかよく知らなかったが、「急な雪渓をアイゼンとピッケルで登るんだ」と聞いて「待ってました!」とばかりに話に乗った。

 今回は、芳川くんも参加することになり、一応、3人で打ち合わせをしたが、酒ばかり飲んで細部の打ち合わせはほとんどしなかった。ただ、今度の晩餐は私が担当することになり、本谷の麓のユーフレ小屋でパエリアをつくることだけはしっかり決定された。

 当日は、私の都合で12時出発となった。高速を三笠で降りて、富良野市に入り、登山口に着いたのは、午後2時ころだったと思う。

 私の荷物は、ザックが24.5kgで、ポシェットが2.7kg。合計27.2kgとなった。(パエリアの鍋やらスープやら米やらだけでも4kg近かった。群別岳をやった際の雪を溶かした水があまりにまずかったので、今回は、水も5リットルほど持った。)登山口からユーフレ小屋までは2時間くらいだという話だったので、少々ザックが重くても平気だろうと考えたわけだが、これは甘かった。登山口から小屋までの道程は、ユーフレ川の縁を巻きながら進むものだったが、はじめから急な上り下りが続き、登攀開始後30分で心臓が口からはみ出そうになった。飲み水は、川の水を沸かせばいくらでもつくれたわけで、5リットルもの水を持って来たのも大いなる誤算であった。

 20年前にマッターホルンやモンブランをやったことのある渡辺さんは、骨董品のような珍しい道具を持っている。ピッケルの杖は木製だし、ザックも骨董品としての価値が高そうで、新田次郎の小説なんかを彷彿とさせてくれる。が、靴だけは、最新式のプラスチックブーツだった。

 芳川くんは、群別岳のときの経験で、ザックを軽量化するよう心がけたそうで、かなり小さいザックを持って来ていた。が、そのわりには、ワイン2本とウイスキーを1本持って来ており、肉や野菜なんかも入っていたので、その荷物の量は、けっこうなものだったのではないかと思う。

 荷物の量のせいもあるが、今回の登攀でもっとも苦しかったのは、ユーフレ小屋までの2時間であった。そして、もっとも危険を感じたのも、このユーフレ小屋手前の丸太橋であった。


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