マラソンブーム(2008年6月29日)

 マラソンをはじめて約3年たちました。最近は山屋というよりも市民ランナーになってます。「山に行く」と言うと、家族はいい顔をしませんが、「マラソン大会に出る」と言うと、笑顔で応援してくれるので、つい、つい、マラソンの方に偏ってしまいました。

 しかし、マラソンはけっして身体にいいスポーツではありません。活性酸素が出ますし、膝の軟骨がすり減るようですし、土埃や自動車の排気ガスを吸い込みます。健康には適度な運動がいいそうですが、マラソンは適度を越えた運動です。

 でも、精神にはいいように思います。規則正しい呼吸をしながら、前方を見つめ、流れる景色を楽しみながら吹き出す汗を拭っていると、いろいろな事が頭の中をよぎります。体調とペースが合っているとリラックスできて、そういう状態で自分の人生を考えると、かなり前向きな思考が可能になります。仕事のことを考えていても、けっこういいアイデアが出たりします。フルマラソンや100km マラソンなどでは、終盤に入ると拷問にあっているような気分になりますが、ゴールしたときには、そのぶんの開放感があり、自己新記録を出したりすると嬉しくなります。身体には悪いようですが、ストレス解消には絶大な効果があります。

 このためか、ここ数年は、空前のマラソンブームで、どこの大会でも前年より参加者が増えているそうです。酔っぱらって駅のホームでゲロを吐く人がいなくなり、タバコをやめる人が激増し、マラソンをする人が増えてるわけです。日本人の嗜好は、身体に悪い酒やタバコから、同じく身体に悪いマラソンに移行しているようです。私も、ランニングをはじめた頃にタバコをやめ、その頃から酒の量が減り、宴会をなるべく避けるようになりました。宴会料理は太りますから、アスリートには好ましくありません。ストレス解消ばかりでなく、マラソンはメタボ対策にもなります。

 ただし、マラソンは孤独なスポーツです。大会だと、大勢の参加者と一緒に走るわけですから、寂しくはありませんが、走りはじめると自分ひとりの世界にひたります。宴会ですと、常にだれかと話をしていて、どうやって皆を笑わせるか、どうやって自分を売り込むか、どうやって面白い話を聞きだすか、というようなことばかりを考えますから、自分ひとりの世界にひたることはありません。まあ、中には、皆を相手に自分ひとりの世界にひたる人もいますが、そういう人は皆から敬遠されます。しかし、マラソンは、まさに、皆を相手に自分ひとりの世界にひたるものです。マラソンブームの背景には、宴会を嫌う、または、苦手とする人の増加があるように思われます。他人との関わりを軽くして、自分ひとりの世界を大事にする傾向の顕れがマラソンブームなのだと感じます。

 そして、この傾向は政治の面にも影響しています。自民党が虫の息となり、民主党が天下取りに王手をかけている今の政治情勢も、実は、マラソンブームと同じ背景の現象だと思われるのです。自民党は、市民の皆さんの「協調」の上に立脚している政党です。これに対して、民主党は、市民の皆さんの「個人的な損得感情」をねらい撃ちにする政党です。町内会がすたれ、市民運動家まがいの屁理屈屋が急増し、他人との協調を説いていた年寄りまでもが「天引きは差別だ」などと個人的な損得感情をムキ出しにするようになっていますが、それらの現象は、日本人が協調の精神を失い、皆を相手に自分ひとりの世界にひたるようになったことに起因しているのだと思われます。宴会よりもマラソンを好むようになった日本人は、自民党の主張を理解できなくなっており、民主党の主張には興奮するようになっているようです。そして、事態は、幕末の討幕運動のような雰囲気を呈しつつあります。来年の総選挙は、おそらく鳥羽伏見の戦いとなるでしょう。その後の地方統一選は、新政府軍による戊辰戦争です。そうなれば、私どもは五稜郭に立て籠もることになるかもしれません(笑)。

 新しい日本がどのような形の国になるのかわかりませんが、このまま進んでも、そう大したことにはならないでしょう。民主党も政権をとった後には、市民の皆さんに協調の精神を求めることになるでしょう。幕府を倒して新政府を興した脱藩浪士たちが結局は開国の道を進んだように、年金問題も、後期高齢者医療の問題も、ガソリン税の問題も、結局は自民党がやろうとしたことを踏襲することになるのでしょう。そして、消費税については、やはり、恐ろしくて触れられないでしょう。労働組合との関係を断ち切れない民主党政権は、自民党よりも役人に甘い姿勢をとるでしょうから、役人天国はますます助長され、強固な国家体制として根づくでしょう。あと10年もすると、マスコミも役所を敵にまわすような報道はしなくなるかもしれません。

 こんなことを考えながら走っているとストレスが溜まってきますが、足腰がしびれてくるまで走り続け、へとへとになって自宅に戻り、シャワーを浴びて、柔軟体操を終えると、すっかり気分は爽快です。


戻る