おすすめCDコーナー幻の名盤解放歌集

これは立派な考現学だ!

すべての音盤は すべからくターンテーブルで平等に再生表現される権利を有する(幻の名盤解放同盟)


 この日本にこんな歌があったのか!と心に風穴が・・・。いったい誰が、何のためにこんな歌を作ったのか??
 世の中には、21世紀に伝えておきたい、名作と呼ばれる作品が多く存在する反面、なかった事にしておきたいという扱いを受ける作品もまた数多い。
 冗談ではない。光ある所に影があり、真の闇なくして光は輝けないのだ。影を認めない者は光の本質を見抜くことはできない。
 このCDシリーズは、売れそこなって歌謡界に埋もれ黙殺され続けた影のレコードを引きずり出し、レコード会社ごとにオムニバス形式でまとめてしまった快盤である。
 ディスク内には歌い手ひとりひとりの、さまざまな本気汁がみなぎっている。商業的な成功など目的でない自己表現欲がいろいろな形をしてひしめきあっている。いったい人間とは?
 それにしても音楽とは実に幅広い表現方法であることよ。
 これらのCDはPヴァインより発売されていた。だけど買うのに少し勇気がいるんだこれが。(税抜価格2800円)※現在はどうも廃盤のようです。YAHOO!のオークションで一定の人気で出品されてはいるが、ややプレミアがついている模様っす。

この解放歌集CDの特色
  • 湯浅学(音楽評論家)、船橋英雄(デザイナー)、根本敬(特殊漫画家)からなる幻の名盤解放同盟による監修。
  • 15〜20曲の多数の収録。
  • 3人による各曲目のクロスレビューが絶妙で効果的。
  • 音楽評論家の湯浅が曲および歌い手の解説をする。歌の登場の背景やエピソード、歌い手のプロフィールに至るまで、詳細である。
  • 漫画家の根本敬による汚いイラストもある。
  • 全曲目のレコードジャケットのサムネイルつき。
※幻の名盤解放同盟;一般論、道徳、倫理などにとらわれることなく、人間の「生」の現われである「歌」を底辺から集め、「いい顔といい歌を既存のあらゆる倫理/道徳、価値体系から解放」するために結成された。曰く「平等に聴く耳を持て。音楽に貴賎はない。同情も同調もいらぬ」。'82年以来このユニットで廃盤レビューと中古レコード蒐集などの活動を展開。'93年からはこれら「幻の名盤解放歌集」シリーズをリリースし、少なからぬ反響を呼び起こす。

ハートを狙い撃ち〜クラウン編
PCD-1512
  1. 妻の日の愛のかたみに/苅田千賀子
  2. ハートを狙い撃ち/有馬竜之介
  3. こころがわり/山岸英樹とサムソナイツ
  4. お聞きください皆様よ/津田耕次
  5. 四時半ブルース/一節太郎
  6. 東京・ア・ゴーゴー/高木たかし
  7. ワン・ツー・スリー・ラブ/よつば姉妹
  8. ドンデン育ちのおけさっこ/おさげ姉妹
  9. ローリング・ストーンズは来なかった/西郷輝彦
  10. 夏の夢/ミッキーカーチスとザ・サムライズ
  11. 可愛い悪魔/クーガーズ
  12. マサオ/赤木さとし
  13. 行きずりの人/ノンちゃんと兄ちゃん
  14. 四国のおばあちゃん/森雄二とサザンクロス、橋本直美
  15. ロス・プリモスのディスコ・おはら節/黒沢明とロス・プリモス
  16. 俺はやる/ムーディ松島、鳥羽一郎
  17. Get Tomorrow/マイク三宅
一人爆発GS歌謡の2は「バン!バン!バンバンバンバン!」と口で擬音を発生しながら容赦なくハートを狙い撃ってくる。聴く者の心は風穴だらけとなる。要注意。クラウンレコードが誇るひしゃげボーカルの重鎮45は味があり、世相をひょいひょいさばく軽快なナンバーと労働者人生讃歌となっている。12はミリオンナイツで大騒ぎになった歌で、すさんだ10代における熱い友情を生々しく再現。もたもたしたディスコナンバーの14/15はやる気がないようで実はある。16は壮大に2人がかりで「命かけ、俺はやる〜」と熱唱するが主題が見えない。17は『365歩のマーチ』を英訳したもので、R&B風に歌う意欲作だがもったりし過ぎ。ほかにも様々なタイプの曲が揃った好盤。

スナッキーで踊ろう〜日本コロムビア編
PCD-1513

  1. スナッキーで踊ろう/海道はじめ・スナッキーガールズ(風吹ジュン・吉沢京子・小山ルミ)
  2. もだえ/マリア四郎
  3. 傷恋/マリア四郎
  4. 青春火山/港孝也
  5. 恋のチューリップ/港孝也とパッション・グループ
  6. 南国の夜/中井昭・コロラティーノ
  7. 東京のひと/ゲイリー高木とルーパー6
  8. 太陽がほしい/万里れい子
  9. 磯釣り音頭/野田憲司とギャランティ
  10. 父ちゃんどごさ行った/奈良寮子
  11. 恋情/マリア四郎
  12. 恋のふきだまり/マリア四郎
  13. 女の裏町/マリア四郎
  14. あなたの愛を知りました/マリア四郎
  15. どこへ行くの/川崎幸子・敏子
地の奥底から響くような風呂場エコーの1は違和感たっぷり。ジャケット写真も同曲のもので、そうとうご満悦状態につき必聴。スナッキーとはプリマハムの商品名だそうで、CMに使われていたらしい。ぜひ見たいものだ。若気の空回り5は全編にわたり意味もなく3人ほどの気が違ったような女の子の嬌声が入っている。7は加藤和彦作曲の変拍子の意欲作であるが、しっとり歌い上げるムード歌謡でありながら尺八の伴奏となっており変な気分になる。出稼ぎに出たままだまされて帰らない父を歌った日本一絶望的な悲しい家庭環境を暴露する10は何のために録音したのか理解に苦しむところがよい。しかも歌い手は中学生。15は一見メルヘンタッチであるが、実は現実逃避っぽい朦朧とした危険な香りのする、どこかへ行ってしまうナンバー。またこの盤には世の相対性に揺さ振りをかける中年悶絶歌手マリア四郎が多数フィーチャーされている。
太陽に抱かれたい〜ミノルフォン編
PCD-1514
  1. 太陽に抱かれたい/ジョニー広瀬
  2. いつでも拍手を/チャコとアップリーズ
  3. 四人の刑事/トリオ・サイゴンズ
  4. 消えていったあいつ/千波丈太郎
  5. 激しく愛して/加賀ひとみ
  6. 東京フラメンコ/加賀ひとみ
  7. どかちんブルース/下沢志郎
  8. 石松おとこ節/ガッツ石松
  9. 望郷賦/輪島大士
  10. 故郷だより/輪島大士
  11. なかないでママ/ボネ
  12. どうだっていいわ/大門弓子
  13. レッツ・ゴー・ミリタリー・ルック/ザ・シルビーフォックス
  14. ブーガルーNo.1/ザ・マーミーズ
  15. 二人のブーガルー/ザ・マーミーズ
  16. 風がさらった恋人/ザ・シルビーフォックス
  17. 風のサイケデリック/ザ・ディビーズ
 この盤における聞き物はタイトル曲ので、ほかははっきりいってどうでもいい。特に後半にはGSが多いが、まったくどうでもいい。
 ジャケットの右側で虚空のポーズをとっている男が唄うは、灼熱のディストーションのかかった割れた声が、聞く者の耳から全身を共振させ、ついには発熱に至る。どのような歌声かというと、体中の粘液を喉に集め、血が出るほどに全力で叫ぶような、どギタない声である。何の迷いもなく、まっすぐに唄っている。そのせいで、季節に関係なく灼熱の太陽にじりじりとあぶられるような暑苦しさを覚えるものである。浮かんでくる情景は、干上がりかけた沼の泥で暴れまわるザリガニ、といった事を評する者が多い。この一曲プラスαに2800円かけることができるか否かが、入手の決断の分かれ目であるといえよう。
シューベルト物語〜テイチク編
PCD-1520
  1. シューベルト物語/ニッキー
  2. 愛の絶唱/太子乱童
  3. モナリザ仁義/鈴江京子
  4. 公害ブルース/アプリコット
  5. 当地興行/栃若清光
  6. ダイナマイト・ロック/梅宮辰夫
  7. コンドルは飛んで行く/トリオ・ロス・チカノス
  8. 時計を止めて/トリオ・ロス・チカノス
  9. ブラボー東京/北条竜也・吉本まゆみ
  10. 僕ら就職コース/石黒高二
  11. ほんのはずみさ/グレート宇野
  12. 男のマーチ/小宮あけみ
  13. 噂の恋/内田高子
  14. 女のときめき/時アリサ
  15. DUBA LA BA LOU/イレーヌ和田
  16. 愛のほのお/イレーヌ和田
  17. 暗い港/佐久間浩二
  18. 怨歌/佐久間浩二
  19. 人生一、二、三/江波健太郎
  20. 女と花ごころ/小山恵子
  21. 釜ヶ崎人情/三音英次
1はジャケット左上の男ニッキー(本名ニック・クラウス)によるものだが、すっかりシューベルトになりきっており、夜霧の一人同時通訳歌謡となっている。2は朗々と歌い上げるさわやか歌謡かと思いきや、突然広沢虎造のようなダミ声に変化し、また何事もなかったかのように元の快唱にもどる。まるでセレクタースイッチをA-B-A-B-と切り替えているような両声具有の力唱である。4は公害の現象と地名をまるで早口言葉のように羅列していながら、メロディはさわやかでアンバランスである。ブルースかどうかは議論の余地がある。はサイモンとガーファンクルのカバーであるが、まさに直訳。12〜16はお色気歌謡。12は発声リズム歌謡とでもいうべきで、スキャットで様々なリズムを出している。ボイス・パーカッションといえる。15,16もまたおまじないのようなスキャットの連発。21はゆったりと重たい唱法で土地の息遣いと臭いを感じさせる寄場歌謡の名作である。
ダイナマイト・ロック〜テイチク編
PCD-1525
  1. ダイナマイト・ロック/梅宮辰夫
  2. シンボル・ロック/梅宮辰夫
  3. 夜は俺のもの/梅宮辰夫
  4. 梅宮辰夫の東京流れ唄/梅宮辰夫
  5. 新宿子守唄/梅宮辰夫
  6. 柄じゃなかった恋なんか/梅宮辰夫
  7. 男泣かせの霧が降る/梅宮辰夫
  8. 番長/梅宮辰夫
  9. 番長ブルース/梅宮辰夫
  10. 番長シャロック/梅宮辰夫
  11. 辰ちゃんの青春日記/梅宮辰夫
  12. 辰兄いの三度笠/梅宮辰夫
  13. デカンショ・ロック/梅宮辰夫
  14. ウッシッシ節/梅宮辰夫
  15. 暗い夜(ファンキーNo.9)/古谷充とザ・フレッシュメン
  16. テスト・パターン/古谷充とザ・フレッシュメン
  17. 古いギター/レイ斉藤とブルー・スターズ
  18. ブルース通りのならず者/太田浩明
  19. 人生あばれ太鼓/三音英次
  20. ヤスジのオラオラ節/谷岡ヤスジ
 全面的に梅宮辰夫がフィーチャーされている。不良番長、夜の帝王といったイメージの映画主題歌・挿入歌が大半である。東映映画『不良番長』シリーズは全16本が作られた長寿シリーズであった。そうした映画シリーズや、テレビドラマ、トーク番組などに出ている梅宮辰夫はどこか空々しい。このCDで歌う梅辰もまた、詞の内容とは裏腹に空々しい。設定がスリリングであったり、大胆であったり、夜の世界であったとしても、そうした世界を増長させるでなく、マイペースでクールで、つまり棒読み調に無感情にこなしている。しかしそれは心地よい余裕と暖かみであり、梅辰亭のコロッケや漬物よりも味わい深いはずだ。その辺りについてはインナー・スリーブで杉作J太郎による解説がなされている。
 後半部では梅辰以外の曲が入る。
 15,16はスモーキーな和製ジャズ、17はシャープでドライなスティールギター、19では豪快な和太鼓が冴えている。20は『メッタメタガキ道講座』の世界そのもので、ドバドバブー鼻血がブーの圧倒的なパワーである。
男が死んで行く時に〜ポニーキャニオン編
PCD-1522
  1. 男が死んで行く時に/安藤昇
  2. 君が欲しい/風間ひろしとメロディー・クイーン
  3. まぼろしのブルース/中川あつしとヨコハマ・セブン
  4. 悲しくないわ/松井久とシルバー・スターズ
  5. 悲しくないわ(カラオケ)
  6. 港まつり/安藤昇
  7. 銀座八丁光のまつり/敏いとうとハッピー・ブルー
  8. ぎんざのお地蔵さん/敏いとうとハッピー・ブルー
  9. さすらい彼岸花/安藤昇
  10. 人間砂漠/宮崎憲二とハーバー・ナイツ
  11. 愛の夜明け/宮崎憲二とハーバー・ナイツ
  12. 君にいかれて/ジューク・ボックス
  13. 血と命/安藤昇
  14. いやだ公害/榎谷おさむとニュー・フェニックス
  15. 明日はない/安藤昇
  16. 炎の男/輪島功一
  17. 盛り場二十年
  18. 田園/井上宗孝とシャープ・ファイブ
  19. 黒犬/安藤昇
  20. 男が死んで行く時に/安藤昇
 安藤昇である。むかし安部譲二が子分だった安藤組の親分なのである。
 その安藤の歌と語りは実に熱く、親分的、兄哥的である。男を通し、傷つき、転がり続ける有り様を、我々の魂に訴えかける。突然からんできたり、怒り出したりするので驚かないように。
 1は圧巻である。死に際の男の独白なのだが、重く激しく潔い。しかし実際の死ぬ時にこんなにうるさい男はいないだろう。6は宇崎竜堂によるもので「港のヨーコ、ヨコハマ、ヨコスカ」の姉妹作である。祭りにおけるいざこざがスリリングに再現され、結局自分は刺されてしまう。なんてこった。他のナンバーにおいても語ることと歌うことが同格になっていて、覚悟の上に成り立ったその世界がぐいと押し付けられる。梅宮辰夫の「不良番長」とは格が違う。
 また1がアンコールで20でも流れる。実に男くさいヘヴィな一枚だ。
 おまけの特製ステッカーつき。
うちの家族は女の天下〜ビクター編
PCD-1528
  1. うちの家族は女の天下/ホーム・クッキーズ
  2. あの子のせいなの/ホーム・クッキーズ
  3. 渚のメロディ/ケン・サンダース
  4. ネバー・ネバー/ケン・サンダース
  5. ワン・ナイト・ワン・キッス/ケン・サンダース
  6. ロンリー・ガール/ケン・サンダース
  7. エブリシングス・オール・ライト/ケン・サンダース
  8. 悲しき願い/ケン・サンダース
  9. 悲しき戦場/ケン・サンダース
  10. 恋愛射撃隊/ザ・ジャイアンツ
  11. 恋の66/湊まさゆき
  12. パンチ野郎/和久田竜
  13. スピード野郎/平尾昌章
  14. 可哀相なチロ/マハロ・エコーズ
  15. 甘えに行くぜ/西城正三
  16. 3番ゲートで待ってるよ/花田
  17. たそがれ海峡(白鳥の湖)/殿様キングス
 ジャケット写真はホーム・クッキーズなるものであるが、真ん中の女の子がしゃしゃり出ているので、いかにも態度がでかそうに見えるであろう。父さんなぞ、もはやかすみかけている。実際に曲を聞いてみると全く写真の通りで、この女の子の生意気な存在が誠にうっとうしいのである。はニセサザエさん風な曲調で、男の弱さのために保たれている、亀裂の入った家族平和讃歌、は女の子のソロであるが、あらゆる現象を他人のせいにするという、ミリオンナイツでかかるやいなや苦情が殺到したほどの生意気さであふれている。弛み気味のベースが奏でる「ドウーンドウーン」という音色がさらに腹立たしさを煽る不快指数の高いナンバー。
 この盤の聴きどころ3〜9の歌い手ケン・サンダースは俳優で、アフリカン・アメリカンと日本人のハーフで右のような男であるが、声は適度に太く低く、粘着力があり、しつこいのに陰湿でなく、へこたれない頑丈さをもった純天然の名ボーカリストである。声の感じとしては用水路を泥水が流れるようで、人物でいえばささきいさおと田村正和を足して3で割ったような印象を受けた。は独白の合間に朗々とフレーズを歌うが、確固たる自分の世界に入り込んでおり、メロディが外れているのも気づかせないほどである。
 13は車のエンジン音が入った、カーレースを舞台にした疾走感あふれるナンバーだが、曲はなんと「ひとつ〜.....、ふたつ〜.......」と数え歌形式となっている。ドラムサウンドではなく速弾きベースでスピード感を再現。こんなに不確実で速い数え歌はない。しかも随所に気のふれたようなシャウトが入る。作詞はなななんと詩人の谷川俊太郎!若かったんだねぇ。17はクラシックの有名曲に日本語詞をのせたアルバム『パロッタ・クラシック』から。「白鳥の湖」に日本語演歌詞をのせたものだが、宮地おさむの下世話な歌い方がすっかりオリジナリティを勝ち得ている。

いかものレコード

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