震災 人口減 統一選 (2011年4月8日 東京新聞) 今回の震災で、多くの自治体が存続の危機に立たされている。しかし、率直にいうと、既に震災の前から、多数の地方都市は「消滅」しかかっていた。 私は、大学で研究をしながら、公開討論会支援NGO「リンカーンフォーラム」の公認コーディネーターとして、選挙時に候補者同士が議論を交わす公開討論会の手伝いをしてきた。約十年ほど様々な地域の選挙の議論に立ち会ってきたが、特に前回の統一地方選挙のあたりから、地方政治に深い変化が起こりつつあるのを感じてきた。東京で暮らしているとみえにくいが、いま地方で一番の問題は人口減少。人がいなくなって市町村自体が消滅する危機感が蔓延している。 例えば、石川県の輪島市。輪島というと、輪島塗が有名で、あり続けるのが当たり前と思われているかもしれない。しかし、現在の人口は約三万人、毎年六〜七百人ずつ人口が減っており、計算上は約五十年後に無人となる。しかも、すでに40%程度になっている同市の高齢化率を考えると、事態がもっとシビアであることは言をまたない。 もちろん、このような事態は、輪島に限らない。震災前には、千葉県の我孫子市で討論会のコーディネーターを務めたが、東京近郊の同市でさえ、課題は高齢化と人口減であった。町が「消滅」しかかっているというのは、そういうことだ。 興味深いのは、その中で地域の政治構図が変化していることだ。十年前には、中央との「パイプ」をもつ政治家を地域の有力者が取り囲む保守層(「旧住民」)と、それ以外の「革新」派や「新住民」が選挙を戦うという左右の構図があった。しかし、小泉政権以降、「パイプ」が機能しなくなり保守層が崩れると同時に、「革新」や「新住民」も高齢化することで、地域内の構図が、左右という軸から、年金をもらえる「勝ち抜け世代」と、人口減少と高齢化の中、これからも町で生きていかなければならない若手世代の「対立」となりつつある。 いま、震災に際し「日本の復興」が叫ばれる一方、統一地方選の議論は低調だ。しかし、危機に直面しているのは被災地域のみではない。膨大な数の中小都市も高齢化と人口減という見えない波に飲まれつつある。 だからこそ、今回の選挙で我々は、世代と地域の問題を視野に収めた、社会保障と国土計画の一体的なグランドデザイン、被災地共々の復興プランを考えるとともに、それを担いうる人材を選出しなくてはならない。 震災の様々な犠牲に報いるためにも、各地域と国、それぞれの生き残りに向けた新日本への構想と行動力、それが今、問われている。
◇ おうさか・いわお 立教大助教、政治コミュニケーション論 1965年生まれ。広告会社勤務、東京大助手などを経て08年から現職。 <サイトトップへ> |