蘇軾の豆粥
山家清供(南宋 林洪) 8 豆粥
レシピ再現第3回目は『山家清供』から豆粥を再現する。この『山家清供』は南宋時代の林洪という役人が、山林江湖の清らかな生活に憧れ、その生活にふさわしい料理、およびそれにまつわる佳話を集めた本である。そのため、この書はその内容も、俗で贅沢な肉料理よりも質素な野菜料理に偏っており、単なる一般的な料理書ではなく、著者がその料理にまつわる古典を引用したり、山家での生活の理想を語ったりした読み物となっており、当時の文人の嗜好の一端ををうかがい知ることができる。今回の豆粥は、林洪が、彼の時代より少し前、北宋の大詩人蘇軾が豆粥を詩に読んだというエピソードをまじえながらつづった一節に書かれているレシピを元に再現した。なお、平凡社の東洋文庫594 中村 喬編訳 『中国の食譜』を参考にした。
また、蘇軾の詩の、原文と書き下し文を一部抜粋する。この詩の大意は、蘇軾が、後漢の光武帝が飢え疲れていた時に馮異という人が差し出した豆粥のことをずっと忘れなかった、と言う故事から説き起し、晋の石崇の金谷園の豆粥のことをあげて後、広々として雪景色のような蘆の穂が茂る江浜の、茅葺屋根が点在して、踏みうすでうるち米をつき、土鍋で豆を煮る、といったところこそ、金谷園にまさるものであって、年老いた自分も、こうしたところに移り住んで朝目を覚ませば豆粥が煮えている、といった生活を送りたいものだ、と言う意味である。(『中国の食譜』より)
豆粥 蘇軾
豈 如 江 頭 千 頃 雪 色 蘆 , 豈に如かん江頭千頃 雪色の蘆(あし)
茅 簷 出 沒 晨 煙 孤 。 茅 簷 (ぼうえん)出 沒し、晨 煙は孤なり
地 碓 舂 粳 光 似 玉 , 地 碓(からうす)は粳を舂き光は玉に似たり
沙 瓶 煮 豆 軟 如 酥 。 沙 瓶(どなべ)は豆を煮て軟らかきこと酥(そ)の如し
我 老 此 身 無 著 處 , 老いたる我が此の身は著しく所無し、
賣 書 來 問 東 家 住 。 書を売りて来り問う東家の住(すまい)
臥 聽 鶏 鳴 粥 熟 時 , 臥して聴く鶏鳴粥熟(に)えるの時、
蓬 頭 曳 杖 君 家 去 。 蓬 頭に杖を曳き君家に去らん
豆粥再現
@沙 瓶(どなべ)で赤豆(あずき)をくずれるほどに煮る

←小豆を一晩水に浸してから煮たので20分ぐらいで崩れるほどになった。
A粥が少し炊きあがったところにこれを投じ、一緒に煮る

←別なべに、米をお粥の水加減にし、沸騰したところに煮た小豆を投入。お粥の火加減で炊く。
B煮えたら完成

◎再現後記◎
調味料は特に書かれていなかったので、小豆と米だけの味でまず試食。あっさりしていて小豆の香りが香ばしい。年老いた蘇軾が好んだというだけに、年配の方向けのお味か?ダイエットや離乳食にもよさそうだ。しかし、この豆粥よりも、余った煮小豆に砂糖をたっぷり加えて作ったおしるこのほうがずっとウマイ!と感じてしまった私は、「書を売りて来り問う東家の住」の境地に達するのは遥か先の話であろう。(永遠に到達しない?)
蘇軾の豆粥試食中
←おまけで作ったおしるこ(ウマイ)
←アチチチ!
2003.7.2 更新
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