悪性脳腫瘍について
悪性脳腫瘍ってどうしておこるの?

脳腫瘍も含めて腫瘍は一般に遺伝子の突然変異で起こると言われています。悪性脳腫瘍を引き起こす遺伝子異常も最近になってかなり明らかになってきました。
悪性脳腫瘍ってどのくらいの人が罹るの?
原発性脳腫瘍(脳腫瘍のうちもともと脳に発生した腫瘍のことで、他臓器の癌から脳に転移したものを除いたもの)の発生頻度は一年あたり人口1万人に対して1人、つまり東京の場合、毎年1200人の人が脳腫瘍になっているということになります。
悪性脳腫瘍って治療しなければどうなるの?
悪性脳腫瘍に限らず、脳腫瘍は放置すると一部の例外を除いて速さの差こそありますが確実に大きくなります。頭蓋骨の内側で余計なものがどんどん大きくなるといろいろな神経症状が出てきますし、引いては頭蓋内圧が高くなって命も危険な状態になります。ですからまったく症状を出していない一部の良性腫瘍を除いて、通常はまず手術で腫瘍の塊を減らすことをします。
悪性脳腫瘍と良性脳腫瘍ってどこがちがうの?
脳腫瘍は病理組織学的に分類するとなんと20種類以上のものがあり、それらは大きく良性のものと悪性のものに分けられます。良性のものが約60〜70%を占めていて、悪性のものは30〜40%を占めるに過ぎません。ですから脳腫瘍と診断されても決して悲観する必要はありません。良性腫瘍の場合、的確な手術によって完全に治癒するからです。
悪性脳腫瘍ってどれでも同じなの?
悪性脳腫瘍の中にも比較的良性に近いものから、きわめて悪性度の高いものまで様々な種類があります。比較的良性のものの場合、手術で全部摘出できれば放射線治療や抗がん剤治療の必要がないものもあります。しかし、悪性度の高い腫瘍の場合は事情が異なります。腫瘍が周りの脳組織に根をはるように浸潤していることが多いため、手術で全部摘出することができないことが多く、仮に全部摘出できたと思っても肉眼では確認できない腫瘍細胞が残っていることが多く、手術だけではすぐに再発してくるため、手術後に放射線治療、抗がん剤治療が必要となります。
悪性脳腫瘍になったらどのくらい生きられる?
では具体的に悪性の度合いによってどのくらい予後(治療後の余命を含めた患者さんのたどる経過の見通し)が違ってくるかということをご説明いたしましょう。例えば、グリオーマ(神経膠腫)と呼ばれる脳腫瘍では最も良性に近いアストロサイトーマ(星細胞腫)の場合、5年生存率(治療を開始してから5年間生きる確率がどのくらいかという数値)が80%前後あるのに対し、最も悪性度の高いグリオブラストーマ(神経膠芽腫)では5年生存率は5%前後しかありません。つまり、100人グリオブラストーマの患者さんがいるとするとそのうち5年間生きられる人は5人しかいないということを意味しています。悪性脳腫瘍の患者さんはこの間にあてはまると考えられます。
悪性脳腫瘍の診断はどうやってするの?
悪性脳腫瘍の診断は主としてCTおよびMRIを用いるとかなり正確に診断することができます。ですから、CTおよびMRIを備えた病院で脳神経外科医がいる病院であればほぼ間違いなく診断可能と言えるでしょう。
悪性脳腫瘍の治療はどうするの?
診断まではどこの病院の脳神経外科でも可能ですが、問題はそこから先のステップです。悪性脳腫瘍の治療ということになると、手術だけでなく、術後の放射線治療、抗がん剤治療も含めて総合的に治療戦略を考えなければなりません。放射線治療、抗がん剤治療が悪性腫瘍には有効であることは皆さんご存知かも知れませんが、逆に正常の臓器への毒性による副作用も強いためこれは諸刃の刃です。ですから悪性脳腫瘍の治療を専門とする医師がいること以外に、放射線設備の面、看護婦、薬剤師の抗がん剤に対する熟練度も要求されるわけです。このような条件を十分に満たす病院はそう多くはなく、大学病院あるいは癌の治療を専門にする病院(都内であれば国立がんセンター、都立駒込病院など)ということになります。これらの大学病院を含めたこれらの専門病院では通常、様々な悪性脳腫瘍に対する標準的な治療の基本方針(プロトコール)を決めてそれを実施していますので、安心して治療を受けられると思います。
何か新しい治療法はないの?
悪性度の高い脳腫瘍はこのような手術、放射線、抗がん剤を組み合わせた標準治療を行っても有効性の方ははかばかしくなく、上で述べましたように5年生存率は5%前後です。そこで何か新しい有効な治療法はないかという話になりますが、残念ながら、現時点ではこれは効くということが患者さんで実証されている新しい治療法はありません。最近抗がん剤でテモゾロマイド(テモダール)が悪性グリオーマに有効であるという試験結果が米国で発表され我が国でも臨床試験が進行中です。動物実験レベルでは遺伝子治療、ウイルス治療などが有効であるというデータはありますが、実際の患者さんではどうかというとあまり有効ではないようです。私は、科学的根拠あるいは実際の東京大学での臨床試験の結果から、抗原特異的細胞性免疫を用いた免疫治療、たとえば樹状細胞治療ミニ移植治療などがこれから有望な治療法だと考えます。現在、東京大学当時おこなっていた樹状細胞治療を含む免疫細胞治療を埼玉医科大学総合医療センターでできるように準備中です。
悪性脳腫瘍と診断されたらどうする?
診断および治療についてセカンド・オピニオンを求めることをお薦めいたします。セカンド・オピニオンを求めるとは、最初に診察を受けた医師と別な医師(通常は別の病院の医師)を受診して事情を説明して診断および治療方針について意見を聞くことをいいます。悪性脳腫瘍の場合、一部の例外を除いて時間、分をあらそうほどの緊急性があるものは少ないですから、自分が納得のいく場所で納得のいく治療を受けることをお薦めいたします。
参考文献
(いずれも医師向けで高価ですが興味のある方は是非ご一読下さい)
1.松谷雅生著 「脳腫瘍」第2版 篠原出版
2.佐野圭司、淺井昭雄著 「脳腫瘍−その病理と臨床」第3版 医学書院
3.太田富雄、松谷雅生編集「脳神経外科学」改訂8版 金芳堂
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