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板 倉 の 家


   ■板倉構法?
■板倉の本
■板倉の性能
■現行基準法上の問題
■拙宅の板倉
■安藤氏による板倉構法の意義

わが家の構法を説明します。(構法の一般的説明は<木造住宅の構法>を参照してください。)

私は、当初は伝統的軸組構法の土壁(荒壁)の家を希望し、設計者にはそれを伝えました(プランニングシート家づくりへの遍歴をご覧下さい)。

しかし設計をしていくうちに、最終的に「板倉構法」を採用することにしました。
ここに至るまでには別のとても興味深い壁構造も検討したのですが、それはまた別のところで触れましょう。

(2003/8/2)
「我が家のこだわり」は他の施主の方々にもイチオシのことを紹介しています。しかしここで紹介する「板倉構法」の選択は私の好みの要素が大きく、みなさんにも推奨するというわけではありません。筋交を使った木造軸組構法いわゆる在来構法で住宅を建てることに問題はありません。
板倉構法の推奨としてではなく、古くからある日本家屋の良さを理解する素材としてお読み下さい。
■板倉構法?
板倉構法」なんて、初めて聞いた方がほとんどでしょう。私も、この設計士さんに会うまでは知りませんでした。

この構法を簡単に説明しましょう。

これは、4寸角の柱の間に厚板を落とし込んで壁とする「落とし板倉という伝統的構法を取り入れたもので、4寸の角材と厚さ1寸(3cm)×幅5寸(15cm)の厚板とで家の基本的構造を作るものです。正倉院の「校倉造り」に似ていますが、「校倉」は三角や四角の角材で壁をつくるのに対して、「板倉」は板材で壁をつくるところが異なります。

板倉構法は各地で行われていましたが、近年、筑波大学教授で自らも建築士である安藤邦廣氏によって研究・再興されました。安藤邦廣氏の『現代木造住宅論』(INAX出版、1995)から板倉構法の特徴を紹介しましょう。


骨組となる土台・大引・柱・梁を4寸角の杉材を主体として組み、梁組に補助的に丸太またはその太鼓落し材を用いる。
構造材の種類を整理し、大工手間も合理化する。構造材は伝統的な継手・仕口を用いて、金物は使わない。
壁・床・屋根を1寸の厚板で構成する。
厚板を柱間に落とし込んで丈夫な壁とし、床梁や垂木に厚板を直張りして水平剛性を高める。
厚板の片面はそのまま表し調湿性と断熱性を活かし、片面は別材で仕上げて気密性と断熱性を補う。


断熱材は使用せず、壁は漆喰塗りが一般的。
屋根は瓦、床はフローリングまたは畳が一般的な仕上げ。

近年の「在来構法」の住宅と比べると約2倍の木材を使い、それに応じて大工の手間も2倍かかり、木工事費が総工費の4割を越える、と安藤氏は書いてます。

しかし、材木はすべて杉の並材、主要構造材は4寸角の柱と1寸の厚板という2種類なので量をまとめて注文できるし、また板倉(落とし込んだ厚板)は構造であるとともにそれ自体で壁が半分仕上がっているので、下地や内装工事が大幅に省略される(板をそのまま表しのままで内装になります)。だから結果的には、ハウスメーカーの住宅と同程度の単価で造ることが可能だ、とも書いてます。

安藤氏は日本家屋における土壁(荒壁)の意義を評価しつつ、それに代わるものとして板倉を提唱しています。(氏が述べていることは、このページの後半に紹介します。)

■板倉の本
ところでこの板倉構法のことについて私はかなり前から知っていたことを後になって思い出しました。耐久性があって健康な住宅を望んでいろいろ読みあさった本の1つに、伊藤勝『二百年もつ家がほしい 私の家づくり奮戦記』(彰国社、1988、\1500)がありました。板倉構法で家を建てた人が書いた本です。その家は床も高床式という凝りよう。

この本は、板倉を採用するかどうかは別にして、とても興味深い、家づくりの参考になる本です。
その他にも板倉の家に関する本もいくつか出版されています、<お勧め図書>を参照下さい。

板倉関連のサイトでは以下があります。
仙台のササキ設計(板倉の説明はなくなりました)
横浜の工務店
岐阜県栗田設計


■板倉の性能
板倉構法を採用するにあたり、板倉の性能上の比較をいろいろ検討しました。


○断熱性・気密性
壁を構成するスギ板の断熱性は、意外と高い。下の表で「熱伝導率」の数字が小さいほど断熱性が高い。

断熱性と蓄熱性
建材 熱伝導率
(kcal/mh℃)
容積比熱
(kcal/m3℃)
熱拡散率
(m2/h)
参考:重量比熱
(kcal/kg℃)
コンクリート 1.4 453 0.0031 0.19
土壁 0.5 232 0.0022 0.18
木材(スギ) 0.09 155 0.0006 0.3
石膏ボード 0.19 216 0.0009 0.25
グラスウール(10k) 0.045  2 0.0225
注:熱拡散率=熱伝導率/容積比熱


杉板自体の断熱性はグラスウールの半分程度。しかし厚板の厚さは1寸(3cm)ですから、グラスウールにして僅か1.5cm程度。これだけでは断熱性能としては小さい。

安藤氏設計など板倉の家を見ていると、低い断熱性への対応として3つの方法をとっています。1つは開口部の断熱性を向上させています。具体的にはペアガラスの木製サッシを用いています。2つめは、薪ストーブ設置が基本になっています。薪ストーブは非常にハイパワーですし、また輻射熱で家を暖めます。これで家全体を暖めることで、家の断熱性の低さをカバーしているのでしょう。
3つめには、蓄熱性の向上です。後に述べるように板は温度変化が遅い(熱拡散率が低い)から、一度暖まると室内は暖かい状態を保持できる。蓄熱性の向上自体は断熱向上とは違いますが、温度変化を遅らせることで日中の太陽熱をため込んで夜間に利用する役にも立ちます。

しかし拙宅では断熱材を使って断熱性を高めます。断熱のしかたについては<安全な自然系断熱材で「高の下」断熱を>を参照下さい。


拙宅ではタイベックを張るので、気密はそれで確保できるでしょう。
断熱性は板だけでは心配です。拙宅では自然系断熱材を入れます(<安全な自然系断熱材で「高の下」断熱を>参照)。さらに断熱性を増すために開口部の断熱性能は高いことが必要でしょう。できれば木製サッシがいいのですが(安藤氏の設計はそれ)・・・コストの問題はありますので、ペアガラスサッシしかも枠断熱(障子と枠の中に樹脂を入れて断熱性を高めている)アルミサッシを使って、住宅金融公庫の「省エネ(一般)」レベルの断熱性を確保します

板の蓄熱性・調湿性はかなりあります。

蓄熱性について詳しくは「私の家づくりノート」<蓄熱>をご覧下さい。
スギ板の熱容量は先の表にある「容積比熱」ですが、かなりの程度あります。しかしコンクリートや土壁よりは劣りますし、しかも厚板の厚さは3cmしかなく、コンクリートや土壁が10cm程度あることと比べると薄いので、熱容量
板倉の壁に左官をする理由の1つは、これらの補完です。蓄熱性の高さは、浜田久美子『木の家三昧』(コモンズ、2000、\1800+税)の中で冷え切った家をストーブで暖めるのに丸1日かかったというような話が出ています。

さらに蓄熱性を上げるために、床に土を入れるという方法があります。拙宅でもそうした工夫をする計画です。

材料と工事は、土壁は貫(板)+土ですが、板倉は板だけなので、材料と工事が単純なのはメリットです。しかし壁が板や漆喰だけだと、隙間が開くし、風の向きによっては雨も入るそうです。隙や傷は家の歴史と考える、雨が入る方向には木を植えるという考えを持った施主じゃないと住めねないという話もあります。
拙宅では、タイベックを張った上に、外装は板張りしますので、雨や風は防げます。

■現行基準法上の問題
板倉構法の問題は、建築基準法との関係です。現在の基準では、筋交いや金物を使わない工法は基準上、不利です。これは伝統構法一般に当てはまります。

地震が来たら、筋交いは、軸組が歪まないようがっしりと押さえているが、一定以上の力がかかると、引き抜かれたり外れたりして、そのときに軸組が崩壊します。面材は釘の押さえがはずれるまでは歪んで、それ以後は耐力がなくなって倒壊する。
しかし貫や板倉は、うーんと歪むけど、なかなか倒壊しない

しかし現行の基準法では、「歪まない」というのが重要視され、”歪むけど倒壊せず”は評価が低いということが原因です。

役所は筋交が入っていないものは強度の検証が出来ない、という判断をしていて、板倉壁の壁倍率は「木ずり」とと同じ0.5倍だったり、役所によってはゼロだったりします。
幸いに拙宅が建つところの役所は1.0倍にカウントします。これは安藤氏設計の家が建ったときの功績です。


■拙宅の板倉
拙宅も板倉ですが、いくつか変更・工夫があります。

構造上の工夫。板倉は壁倍率が低いから、大きな開口部を開けずらい。しかし拙宅はパッシブに太陽エネルギーを使うために開口部を最大限大きくしたい。通常の板倉では壁長が不足します。これはかなりの問題です。

 実は筋交いを入れたり面材を張ったりして壁倍率を補えばいいのですが・・・
 合板などの新建材は安全なものがなく、施主としては使えない。
 筋交いは、断熱材がきれいに入らないし、筋交いが熱橋になる、板倉と筋交いとは相性が悪いというのが設計者の考え。
 ここをどうクリアしたのかは・・・後日紹介します。


・厚板の外側には断熱材を入れます。寒いのは苦手だからです。
 安藤氏が設計する家では断熱材を使わない代わりに薪ストーブを使って家全体を暖めます。拙宅では石油ストーブなので、きっと断熱材を入れないと寒いでしょう。どの断熱材にするかずいぶんと探しました。

・室内側は、腰壁の上はタナクリームの塗りにしたいので、左官を計画していましたが、費用の関係から左官部分はDIYになります。

・気密対策などいろいろ工夫はあるのですが、そこは後日紹介します。

■安藤氏による板倉構法の意義
板倉について、安藤氏の先の著書から、少し解説しましょう。

●優れた土壁が消えつつある要因
氏は土壁の代替として板壁を提唱しています。


「木造の壁といえば、(以前は)土を塗った壁であった。・・この壁は、木造住宅の壁として、大変優れたものであった。土壁はまず断熱性に優れると同時に、空気中の水分を吸収したり放出したりする性質に優れるので、室内の温度と湿度の変化を抑える役割を果たす。結露の心配もない。・・また、土は資源的にも自給でき再利用が可能で、廃材となった後は文字通り土に返る。また耐火性と耐久性にも優れ、住まいの素材としては究極の材料といえる。土壁の導入で日本民家が成立した歴史がそのことを物語る。

 それが現代の住まいから姿を消そうとしている要因は、主として施工上の問題だ。小舞をかき、泥を練り、壁に塗るのに手間がかかり、またその乾燥に半年ほどを要するために工期が長引くのである。」

民家の土壁は、茅葺き屋根と同じくもともとは住人自らが造り、セルフビルドの技術だから安かったのに、それをすべて職人の手で造るから高価になってしまう。また、小舞の材料の竹は切り旬があり、小舞をかく時期が限定される。

「このように土壁は、現代の専門化された住宅生産にはなじまないのである。このような事情で、今日の木造住宅構法で最大の問題は壁であり、伝統的な土壁に替わる日本の住宅にふさわしい壁の開発が、現代民家誕生の鍵と言える。」


●近年の住宅の壁構造の問題
氏によると、近年の住宅ではどこが問題かというと・・

土壁に替わる壁として今日もっとも普及している構法は、グラスウールなどの断熱材を挟んだ合板と石膏ボードのパネルである。このような断熱構法の普及のきっかけは、20年ほど前の2×4構法の導入だ。合板やボードで断熱材を挟んだこの構法は、隙間だらけで暖房の利きの悪い日本の伝統的な住宅に比べ、はるかに優れた気密性と断熱性を備えていた。以来、日本の住宅の居住性向上のお題目は、高気密高断熱となったというわけだ。省エネが問題となるたびに断熱材の厚さと、気密化が議論され、今日の日本の在来構法は、居住性の点では限りなく2×4構法に近付いている。」

 もともと北米や北欧で発達した断熱構法の、日本のような高温多湿な夏を持つ地域での適応性は、おおいに疑問がある。

 断熱構法の深刻な問題は壁内の結露だ。グラスウールにしみこんだ水は、通気性の悪い壁内で長く滞留する結果、断熱材は効力を失うばかりか、腐朽菌や白蟻の発生で木材が被害を受け、住宅の寿命を縮める。防湿層と通気層での対処は施工の信頼性が低く結露を防ぎきれない。台風・梅雨・秋雨など雨季の長い日本では雨漏りを完全になくすのは困難で、地震や建物の経年変化で、傷んだ部分から雨漏りする確率が高い。むしろ雨漏りしても重大な被害に至らない構法を採用すべきであり、一度水が侵入するとどうにもならない断熱材の使用は慎重であるべきだ。


●日本家屋の伝統に学ぶべき点
「 日本の伝統的住宅が通気性を重視したのは、木材を湿気から守り、耐久性に配慮した結果でもあったことを忘れてはならない。さらに温度変化に加えて湿度変化の大きい日本では、断熱だけではなく、調湿が居住性を大きく左右する。結露しないことも日本の住まいとして必須の条件となる。結露は木材を腐朽させ、カビとダニの発生の原因となり、人間の健康をむしばむ元凶だ。住まいが囲われ、気密化される方向に向かっている現代においては、なおその点に配慮が必要となる。」


●板倉構法の復活へ
以上のように安藤氏は論じて、「板倉構法」を提案しています。
「・・頼りとしてきた土壁に先立たれ、軸組だけでは立っていけない。後釜にすじかいと断熱材を迎えてみたが、はなはだ相性が悪い。なんとか具合の良い相手を見つけなければ、お先真っ暗という状況だ。
 その答えは、・・・板倉の復活ではないだろうか。板壁から土壁へと変遷した日本の壁は、いま再び板壁の時代を迎える状況にある。」

 杉を使った家は、杉の成長に要する年限以上、最低でも50年、できれば100年の耐久性が必要だ。2×4の小割木材と合板を用いて気密化した構法では、日本では20〜30年の耐久性が限界だ。木材を骨太で表しにして使えば、構造耐力と耐久性、断熱性と調湿性が期待できる。


2001/3/11
2003/8/2 冒頭に追記