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壁構造


   ■板倉構法採用上の課題
■耐力要素の選択構法
■TSボード
■断熱材とボードの納まり
■透湿と気密
■厚板の入れ方・・・秘密

(2006/3/28)
このページは<板倉の家>に引き続いて、拙宅で採用した板倉構法の壁構造について詳しく説明していますが・・・。

「我が家のこだわり」は他の施主の方々にもイチオシのことを紹介しています。しかしここで紹介する「板倉構法」の選択は私の好みの要素が大きく、みなさんにも推奨するというわけではありません。筋交を使った木造軸組構法いわゆる在来構法に問題があるわけではありません。

ですから、このページは板倉構法の推奨としてではなく、その構法を採用し、しかも断熱性を高めようとした拙宅の場合に、こんなやり方もある、という1例としてお読み下さい。
■板倉構法採用上の課題
拙宅は落とし板倉構法で建てます。この構法については<板倉の家>のページで紹介しています。

そこに書いたようにこの構法を採用する場合の問題点は、建築基準法上での耐力壁としての評価の低さがあります。板倉は厚板を柱間に落とし込んで面耐力を形成させるのですが、しかし現行の評価では、その壁倍率は「木摺り」と同じ0.5倍の評価です(例外的に板倉を1.0倍に評価するところもあります)。木摺と板倉とでは全く異なるのですが、現行法上ではそうなっているのだからまずはしかたがない。

これでは家が建たない。あるいは壁長を非常に長くとるので、窓がつくれません。倉はつくれても住宅はできない。そこで板倉構法では、壁倍率を高めるためになんらかの耐力補強を行います。

補強は筋交いでも不可能ではないですが、板倉構法はそもそも面耐力なので、面材を張って耐力を高めるのが相性がいい。合板でもいいのですが、通常は室内に石膏ボード(またはラスボード)+左官をしたりあるいは外壁に木摺+左官をします。前者の場合には1.0倍プラス(ラスボード+左官で1.5倍プラス)になり、板倉自体の壁倍率と合わせて合計で1.5倍とか2.0倍の壁倍率になります。内部に左官だと、室内には板が見えなくなりますが、外部に左官をすれば室内は板倉の厚板が見えたままで内装仕上げにできます。こうして石膏ボードを張って左官をすることは、壁の剛性が増すだけではなく、面材によって気密性も高まる利点があります。


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■耐力要素の選択
拙宅でも石膏ボード+左官の方法を採用してもいいのですが、ちょっと課題がありました。

1.コストを削減したい。左官屋さんに左官作業を頼むとコストがかかる。施主が左官するという方法もありますし、石膏ボードを張ってそのままにするという方法もありますが、せっかくの板目が見えなくなるのは残念。
2.太陽光をできるだけ取り入れてパッシブソーラー住宅にしたいが、そのためには南面の開口部を大きくする必要があり、できだけ壁倍率が大きい壁構造にしたい。
3.断熱性能を上げるために断熱材を用いる。
4.当初は土壁と狙っていて、できるだけ熱容量の大きい構造にしたい。

以上のような課題を解決する方法を色々考えました。
実際に考えたのは、私ではなく、ほとんど設計士さんですが。

筋交いを併用するのは1つの方法でしょう。屋外側に筋交い(45mm厚)を入れれば室内からは見えませんが、断熱材が入れにくいということに加えて、そもそも面耐力と筋交い耐力では相容れない。(設計者の判断)
合板の使用もポピュラーでしょうが(貫に合板という仕様がよくある)、厚板の外側に合板を張るとはいえ、ホルムアルデヒドの放散があるような合板は使いたくない。(施主の判断)
ダイライトという提案もありましたが、ダイライトの表面はロックウールで、ロックウールからはホルムアルデヒドは放散するし、ロックウールの発ガン性も危惧される(<断熱材>を参照下さい)のでパス。(施主の判断)

ということでかなり難航。

その結果ついに出てきたのが、面材として「高圧木毛セメント板」を使うということです。
「木毛(もくもう)セメント板」といっても聞いたことのないでしょうが、以下のようなものです。

木毛(もくもう)セメント板
木材を長さ10〜30cm、幅3.5mm、厚さ0.3〜0.5mmに薄く削ったもの(木毛・もくもう)とポルトラントセメント、水、硬化剤を加え、加圧整形した板です。一般には、下地、断熱、吸音材として使われている。セメントと複合されることで、腐る、燃える、狂うという木材の欠点が改良され、またセメントは軽さと容積を得る。

木をセメントで固めたボード(セメント系ボード)には木毛セメント板のほかに、木片セメント板木質繊維板(木せん板)があり、木せん板は断熱材、木片板(とくに硬質木片セメント板)は耐力用面材に使われています。
これらセメント系ボードはセメントを用いているので蓄熱性の高い建材です。木繊セメント板は蓄熱性のある断熱材で、熱伝導率が0.045kcal/mh℃でグラスウール並に高く、熱容量が100kcal/m3℃で土壁の半分程度です。面白い建材です。
耐力用面材には硬質セメント板が実は一般的ですが、しかし硬質木片セメント板はアスベストが混入されていますから私としては絶対に使いたくない。(アスベストの問題については<アスベストの瓦>をご覧下さい。)

木毛セメント板は下地に使われるが耐力要素にはならない。しかし近年、「高圧木毛セメント板」という製品が耐力壁を形成する面材として開発されました。竹村工業の「TSボード」という製品です。これを面材に使おうという提案がありました。

竹村工業 TSボードのメーカー


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■TSボード
ここで特定の製品の宣伝になってしまいますが、拙宅で採用する高圧木毛セメント板(製品名「TSボード」)の性能を紹介します。

木毛セメント板は、繊維方向に長く削りだした木毛(もくもう)をセメントで被覆した板で、原材料は木とセメントと水です。また材料に使用される木材は、建築用として利用できない木材部分を使用している。高圧木毛セメント板は、その木毛セメント板を高圧プレスしたて、かさ比重を通常の2倍にしたものです。

性能などを列挙します。
TSボード
項目 性能 備考
厚さ 20mm 構造用合板(12mm)
重さ 20kg/m2 1枚(910mm×1820mm)で33kg
不燃性 準不燃 不燃合板は不燃材入り
壁倍率 直貼仕様、受材仕様
ともに2.5倍
45mm×90mm筋交い=2.0倍
構造用合板=2.5倍
熱伝導率
(熱抵抗)
0.105kcal/m℃
(0.190m2℃/kcal)
構造用合板 0.14kcal/m℃
石膏ボード 0.19kcal/m℃
透湿抵抗 9.9m2・h・mmHg/g
(0.0047m2・s・Pa/kg)
木毛セメント板は1.3m2・h・mmHg/g
2cm厚スギの辺材が10m2・h・mmHg/g
容積比熱 420kcal/m3
(これを若干下回る)
石膏ボード 216kcal/m3
土壁 232kcal/m3
コンクリート 453kcal/m3
価格 1220円/m2 構造用合板(12mm) 1,160円/m2
杉厚板(30mm) 4,000円/m2
注:カタログより。ただし透湿抵抗についてはE-mailでいただいた実測値、
容積比熱は推測値。

耐力性能、価格ともに構造用合板並です。

興味深いのは熱的性能がかなりいいこと。断熱性能や透湿抵抗は板並みです。比熱についてはメーカーからいただいた推測値ですが、石膏ボードよりも高くセメントに近い。2cm厚のコンクリート、4cm厚程度の土壁並です。
断熱性が高く、かつ比熱が高いので、熱拡散率が小さくて蓄熱性が大きい素材です。(蓄熱性に関しては<蓄熱>を参照下さい。)これに断熱材を外張りすると、蓄熱性の性能を引き出した外断熱の家になります。


原材料からみた安全性は、特別の有害性はないと考えます。ただし70%含まれているセメントからは放射性物質であるラドンが放出される可能性があるので(程度は不明)、室内に露出させる場合には換気に注意する必要はあると思います。また有害成分が含まれている廃木材を使っているとすれば問題ですが、そうではないようです。

耐久性に関しては、強アルカリ性のセメントに木材が覆われているので木材が腐敗することはほとんどない。また防蟻・防カビ性能が高い。
問題はセメント部分が炭酸化や中性化で劣化する可能性があること。せっかく張ったボードが炭酸化によって強度をなくして(セメントでなくなる)、ボードを打ち付けている釘の周囲の劣化がおこると問題だと考ます。耐力要素として無意味になる。炭酸化のスピードは設計強度240kgf/cm2のコンクリートで、50年間で約10mmです。水がかかったり乾燥したりを繰り返す部分ではかなり問題ですが、壁であれば大きな問題はないだろうというのが最終的な判断です。だが、これについてはデータがないので正確なことは言えません。

コンクリートの炭酸化
セメント糊体積の25%は水酸化カルシウム、60%はケイ酸カルシウム水和物という微細な結晶です。しかしこれらが、二酸化炭素と化合して、セメントじゃなくなります。

1.水酸化カルシウムが二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムと水になる
2.ケイ酸カルシウム水和物(セメント糊)が二酸化炭素によって炭酸カルシウムとシリカと水になる。

これらはともに「炭酸化」と言われ、そのうち前者をとくに「中性化」と呼ばれる。この炭酸化のスピードは設計強度240kgf/cm2のコンクリートで、50年間で約10mmとのことです。
(詳しくは小林一輔『コンクリートが危ない』岩波新書、2000をご覧下さい。)


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■断熱材とボードの納まり
断熱補強と耐力補強をどう納めるかも難しかった。

断熱材についてはあれこれ悩んだ末にセルロースのバイタルウールにしました。羊毛系はTSボードなどのアルカリと相性が悪いとの判断です。断熱材の選択については<安全な自然系断熱材で「高の下」断熱を>を参照下さい。

壁は厚板ですから、断熱材は壁内充填ではなく、厚板の外側に張り付けです。
そこで問題です。柱厚は120mm(実際には115mmですが)。その心に30mmの厚板があるので、その両側には45mmの余裕がある。厚板の外側に50mm程度の断熱材を張ると、さて20mmのTSボードはどこに納めればいいのか?

「TSボードを柱に張り(外側が大壁になる)、厚板との間に断熱材を充填する」という方法があります。拙宅では防湿シートを使いませんから、これでは透湿抵抗の低い繊維系断熱材の外側にそれよりも透湿抵抗が高いTSボードがあるから、断熱材とTSボードとの境界付近で結露する可能性がある。そう施主は判断しました。(計算上は結露する)

「TSボードを厚板の室内側に張って、それに左官する」という案もあります。石膏ボードの代わりにTSボードです。通常の板倉では外壁(外気に接する壁)も内壁(部屋間の壁)も板倉なので、外壁の室内側に石膏ボードを張っても内壁は板倉の様子が見えます。ところが拙宅ではコストの関係から外壁は板倉ですが、内壁は間柱+石膏ボードにしました。これで外壁にTSボードを張ると、せっけくの板倉壁が全く見えなくなってしまう。それなら板倉にする必要がな〜い。

結果的には、厚板の外側にTSボードを張り、さらにその外側に断熱材を張ることにしました。断熱材は胴縁を打って40mmの空間に75mm厚のものを押し込むことにしました。(屋根と床には断熱材を100mm充填します。)

この40mmに押し込む方法は施工者側から問題が指摘されて、55mm厚に押し込むことになりました。(2002/2/27追記)

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■透湿と気密
拙宅の壁は防湿層を設けないことにしました。もともと土壁を指向していたことから、呼吸(吸放湿)機能のある壁(当然、厚い)でかつその機能を阻害しないような壁構造を考えてきました。土壁が板倉になった後も、屋内と屋外との透湿(湿気の流通)を残そうと考えました。その方が壁自体には健康だと考えたからです。

しかし防湿層を設けずに断熱を行うということは、壁内結露が必然的に起こることを普通は意味します。結露が起こらないような構造にするとともに、もしも起こっても大きな問題にならないような構造が必要です。そこで以下のような選択をしました。

1.断熱材の室内側にはそれより透湿抵抗が高い材(厚板、TSボード)を置くが、その外側には透湿抵抗が高いものは置かない。

結露するどうかは、断熱性・透湿性のデータを元に机上の計算をして、問題なしという結論は得ています。しかし実際には結露する可能性があります。だから、
2.断熱材の外気側には透湿防水シート(タイベック)を張り十分な通気層を設ける。
3.断熱材は保水性の低いものにする。

ただし天井については予防のために防湿シートを張ることにしました。


気密はしっかりとった方がいい。冷気侵入による寒さの問題もありますが、冷気が断熱材に入ると結露の原因です。そこで断熱材の外側には防風シート(タイベック)を張ります。
もう1つ、室内の湿った空気が壁内に入りにくい方がいい。厚板の外側にボードを張ることはそれを防ぐと同時に、冷気が室内に入ることを防ぎます。厚板は乾燥で空くでしょうから、TSボードとの間に気密テープを貼ることも検討しています。


■厚板の入れ方・・・秘密
板倉構法では、1階の柱を立てたところで壁部分の柱間に厚板を落とし込み、それが終了後に壁部分の柱に梁をかけ、さらに2階の柱と厚板落とし込みをしてから、小屋組、上棟へと至ります。こうすると上棟までの建て方に1週間程度の時間がかかります。ということは建て方の作業者やクレーンなど、かなりのコストがかかります。

この費用をどう削減するか。ここが実は最後に残った課題でした。
板を順次落とし込みつつ上棟へ至る、という通常の経路ではなく、上棟までは一気にやってその後に柱間に板を落とし込む方法はどうだろう、これが設計士の提案でした。

柱がすでに立っているところに、柱間の内法長よりも長い厚板を柱間全面にどう入れ込むのか?
その答えがわかりますか?

ここはしばらく秘密にしときましょう・・・(^^)


2002/2/9 open
2002/2/27 一部追記