私の家づくりノート 1.危険な建材・薬剤
■ホルムアルデヒド濃度の指針値
■指針値への誤解:「23℃で0.08ppmが指針」ではない
■ホルムアルデヒドの害−急性毒性−
■ホルムアルデヒドの害−発ガン性−
■高気密住宅は特に注意を
■発生源
□建材
□家具
□タバコ
■繊維製品とタンスからのホルムアルデヒド
シックハウスの有力な原因物質がホルムアルデヒドです。
ホルムアルデヒド(水に溶けるとホルマリン)は主に防腐剤や接着剤に用いられ、安価であるので古くから建材等に使われてきました。しかしホルムアルデヒドはアレルギーの原因物質のみならず発ガン性の可能性があります。
■ホルムアルデヒド濃度の指針値
建設省・厚生省・通産省・林野庁等で構成された「健康住宅研究会」が平成10年3月に「設計・施工ガイドライン」を発表して3物質3薬剤の化学物質を「優先取組物質」としてそれを低減させる指針を示しました。ホルムアルデヒドはその中の1つです。
そのガイドラインでは、室内でのホルムアルデヒド濃度の指針値を平成9年6月に厚生省が示した指針値を目標にしました。世界保健機構(WHO)のガイドラインをそのまま採用してます。
これは室温23度では約0.08ppmに相当する、と説明されてます。(この点への注意は後述)
※指標は単位の違い:
「mg/m3」は、ホルムアルデヒド重量/室内空気の体積。
気体は「ppm」が一般的で、これは体積/体積(cm3/m3)。
■指針値への誤解: 「23℃で0.08ppmが指針」ではない
ホルムアルデヒドの室内濃度指針値は、30分平均値で0.1mg/立方メートル以下です。
厚生省はこの数値をわかりやすくするために、「室温23℃に換算すると約0.08ppm」だと説明しています。数字を細く示すと23℃で約0.0802ppmです。
ところで、実際の室内環境では温度が上がると建材からの揮発量が増加します。したがって23℃の室内でホルムアルデヒド濃度が0.08ppmになる部屋は、30℃になれるとその濃度はもっと高くなります。
温度が1℃上がると濃度が1.12−1.13倍上がるという試算式によると、23℃で0.08ppmになるような室内は30℃では約0.18ppmになるそうで、実際の実験でもそのようなレベルになるそうです。
しかし、厚生省は「23℃では0.08ppmだから、30℃では約0.18ppmが指針値だ」などとは言っていません。温度が何度であっても0.1mg/立方メートル以下にせよ、「30℃であっても、ホルムアルデヒド濃度は0.1mg/m3以下にせよ」と指針を示しているのです。 「0.1mg/m3以下」を30℃で換算する約0.0830ppmになりますから、「気温30度でも0.08ppmにせよ」なのです。
だからもしも「ホルムアルデヒドを測定したら濃度が高かったが、それは気温が高かったせいで、厚生省のいう23℃ならばもっと低い値になるから厚生省の基準はパスしています」などという説明をするところがあったら、それは誤りなのです。
先に述べたようにホルムアルデヒド濃度は気温とともに変化して、23℃の室温で0.08ppmになる部屋では30℃になると約0.18ppmになるのですが、このことは逆にいうと、30℃で0.08ppmである部屋では、室温23℃ではホルムアルデヒドの放散がずっと減って、0.08ppmをはるかに下回るレベルになるということなのです。
東さんのHPの厚生省のホルムアルデヒド濃度の指針値と室内温度の関連性参照。
■ホルムアルデヒドの害−急性毒性−
まず、急性中毒の1つである刺激性です。
ホルムアルデヒドの刺激性
| 影 響 |
ホルムアルデヒド濃度(ppm) |
| におい検知 |
0.05-1.0 |
| 目への刺激 |
0.008-1.6 |
| 喉の炎症 |
0.08-3 |
| 鼻・目への刺激 |
2-3 |
| 流涙(30分間なら耐えられる) |
4-5 |
| 強度の流涙(1時間しか耐えられない) |
10-21 |
| 生命の危険、浮腫、炎症、肺炎 |
31-50 |
| 死亡 |
50-104 |
注:欧州共同研究
0.08ppmで臭いを感じます。0.4ppm程度で目がチカチカする。0.5ppm程度で喉が痛くなる。
人によっては0.1ppm程度でも結膜炎のように目が充血します。
だから「ホルムアルデヒドの臭いがする」ようなところでは基準値を越えています。モデルハウスや見学会ではご自身の鼻検知器を使ってその体験をすることが可能です。
■ホルムアルデヒドの害−発ガン性−
ホルムアルデヒドにはさらに発ガン性の可能性があります。
発ガン性について世界的権威である国際ガン研究機関(IARC)は
2A : ヒトに対して発がんの可能性がある
(possibly carcinogenic to humans) |
に分類しています。理由は、ヒトでの証拠は限定されているが、動物での証拠は十分にあるからです。ラットの吸入暴露実験では鼻腔内の扁平上皮ガンを主とする腫瘍が暴露濃度の上昇につれて増加しました。日本産業衛生学会も発ガン物質としています。
普通の毒性はある量以上摂取しないと身体に影響を与えないものです。許容量がある(閾値(しきいち)がある)のです。しかし「発ガン性」はいかに微量であってもそれに応じて癌が発症します(閾値がない)。すなわちその存在がゼロでないと、発ガン率はゼロにできない。
そこで発ガン物質の規制値は生涯暴露によるガンの死亡率で決められていて、職業性曝露では「1千人に1人(10-3)」、一般暴露では「10万人に1人の死亡(10-5)」または「100万人に1人の死亡(10-6)」という危険性レベルが使われます。「10万人に1人」の死亡率とは、日本の人口を約1億2500万人とすると、平均寿命を80年として生涯曝露すると、年間の発がんリスクの増加が
125,000,000×10-5÷80=15.6人
となり、ガンの死亡者が毎年16人増加する計算になります。
ホルムアルデヒドの発ガン性の動物実験では非常に低濃度で発ガンしていて、それを人間に当てはめると、厚生省によるホルムアルデヒドのガイドライン値では、危険性レベルは「10人に1人」という高レベルとのこと。このレベルを日本に当てはめると、毎年15.6万人がホルムアルデヒドによるガンで死亡する計算になるそうです。(以上、危険性レベルについては圓藤陽子「環境基準−労働現場と住宅」『大阪保険医雑誌』1999.6による。)
厚生省のガイドラインをクリアした家に一生住むと、毎年10人に1人づつホルムアルデヒドによるガンで死亡するということです。これは驚きです。あなたはそんな家に住みますか?
厚生省のガイドラインは「刺激性」を基準につくられています。発ガン性については「健康住宅研究会」の報告でも触れられていますが、それにもとづいた規制値をしめしたわけではありません。発ガン性を考慮すると非常に低い数値にしないといけない。しかしそれでは業界が困ります。だから政府(厚生省・建設省等)は業界を考慮して発ガン性の観点を外した数値を示したという見方ができます。(この最後の行は、ガイドラインでの政府の姿勢を擁護するような書き方になってましたが、それは誤記です。2002/3/3訂正します。)
ホルムアルデヒドの危険性レベルが「10万人に1人」というのは一般的都市の室外の数十分の1の濃度でないと実現できないそうです。それは確かに不可能なレベルなのですが、ホルムアルデヒドを極力排除した家づくりをしたいものです。
石森屋材木店のサイト「有害大気汚染物質」の一覧があり、ホルムアルデヒドの発ガン性についても載ってます。
WHO・国連環境計画・ILOによる「化学物質の安全性評価」のホルムアルデヒドの翻訳。
(追記2005/7/13)
国際ガン研究機関(IARC)は2004年6月の報告書で評価を変更しました。
Group 1:人に対して発ガン性がある
carcinogenic to humans |
■高気密住宅は特に注意を
室内の化学物質汚染との関係に限れば、気密性が高いこと自体が問題ではないですが、気密性が高いと室内空気質の問題がハッキリと出てきます。
昔の家は気密が悪く、すきま風だらけでしたから、そうした家ではたとえ少々の室内空気の汚染があったとしても有害物質は家の外に出ていってしまったでしょう。しかし気密性が良くなると、それらが室内にこもってしまって、モロに居住者に影響が出てくる。高気密住宅がもてはやされていますが、その反面でシックハウス対策が不十分であるために、問題が生じている例が非常に多いです。
室内の汚染物質は機械換気だけでは排出しきれません。高気密化に対応して室内環境には高い注意が必要なはずです。この点について詳しくは<合板・パーティクルボード、集成材>を参照下さい。
■発生源
□建材
建材として使われている合板からホルムアルデヒドがかなり出ます。
合板ではホルムアルデヒドの放散量に応じてF1からF3の区分があります。最近では「F0合板」と称して、ホルムアルデヒド放出量の少ない製品もありますが、別な物質が放出されたりして、問題は尽きません。詳しくは<合板とパーティクルボード>参照
合板を使わない家をお勧めします。どうしても合板を使わざるをえない場合には、ホルムアルデヒドの少ないもの(F1、F0)を使いましょう。
ホルムアルデヒドの放散を抑制する塗料があります。国産ではホルマリンシーラー(三精塗料工業株式会社製)という製品が販売されてます。
□家具
作り付けを含めて家具からのホルムアルデヒドは相当に影響あります。合板やパーティクルボード(木材粉砕片をホルムアルデヒド系接着剤で固めた板)、ファイバーボード(木材繊維等を接着剤等で成形したもの)を大量に使っているからです。洗面化粧台、台所の収納は要注意です。
タンスからの放出も問題で、それが衣類に移ってしまいます。
システムキッチンも例外ではありません。安全な自宅づくりをした有田さんのHPの「あぶないシステムキッチン」を参照下さい。
□タバコ
タバコもホルムアルデヒドの発生源です。
部屋内でタバコを吸った場合、ホルムアルデヒド濃度が0.1mg/m3を越えることがあります。
空気環境からの平均的な毎日の摂取は、屋外空気では0.02mg/日、通常の建物の屋内では0.5〜2mg/日、ホルムアルデヒドを用いる作業場では4mg/日であるのに、1日当り20本のシガレットの喫煙は吸入により1mg/日の摂取に相当すると報告されています。
タバコの有害性はいろいろ指摘されていますが、ホルムアルデヒドの点からみると、タバコを吸っていながら「健康住宅」をうんぬんする人物など信用できないと言い切ります。
(2002/6/19追記)
換気していない6畳間でたばこを1本吸うと、副流煙によって発がん物質やシックハウス症候群の原因物質などが基準値を大幅に上回るそうです。
| 6畳間でたばこ1本 有害物質濃度、環境基準4倍に |
朝日新聞 2002/6/18 |
リンク切れ |
■繊維製品とタンスからのホルムアルデヒド
カーテン、絨毯などからもホルムアルデヒドが出てきます。
新品の衣類にもホルムアルデヒドが含まれています。
法律による基準では、
・2歳以下のベビー用衣類はほぼゼロ(実際は0.05ppm以下)、
・大人用下着は75ppm以下
・それ以外には規制がありません。
http://dmd.nihs.go.jp/dmd2/law/house.htmlを参照
(ちなみに、このppmはホルムアルデヒド重量/衣類の重量(mg/kg)です。)
衣類に含まれている量なので、これがただちに気中に放出されるものではないですが、肌に接すると炎症の原因です。
ベビー服はゼロとされていますが、それを入れるタンスには規制がありません。ベビーダンスには規制なしです。タンスから出たホルムアルデヒドが衣類に移ることを考えると、タンスが規制なしは問題です。
ホルムアルデヒドは水に溶けやすいので、衣類の場合には使う前に洗濯すればかなり洗い流されるはず。あまり不安にならなくてもいいはず、と思ってました。
ところが、洗濯しても効果が少ない種類の衣類があって、問題になりました。ノーアイロンシャツなどの形状安定衣類のホルムアルデヒドなんです。名古屋市衛生研究所の検査結果で、新聞記事が5月に出てました。以下のサイトに紹介があります。
http://www.ylw.mmtr.or.jp/~noryuasa/su6.html#iron
以下はシキボウ社のサイトで、最近はYシャツにも「ノンホルム」があるそうです。
http://www.shikibo.co.jp/fablics/da/da2.html(リンク切れ)
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2000/2/16 発ガン性の説明内容を追加
2002/3/3 ガイドラインに対する評価の記述を訂正。