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 私の家づくりノート 2.自然素材の光と影


自然系断熱材

   ■自然系断熱材の種類とメリット
■結露の心配
■施工方法
■有害成分の吸着機能?
■炭化コルク
■セルロースファイバー
■セルロース断熱材
■羊毛断熱材
■ホウ酸

■自然系断熱材の種類とメリット
 自然素材系断熱材にはいくつかの種類が販売されてます。
 これが注目される理由は、1つは結露しずらいこと、2つには安全性が高いことです。
 それらの点を検討しましょう。


■結露の心配
 自然系断熱材は、透湿抵抗が低く吸放湿に優れているので、結露しずらいとされています。
 素材の安全化が進んでいるドイツの資料を元にして、あるいは実際に施工してみての観察からそう言っているようです。 

 「建築知識」1999年3月号に各種断熱材の評価が載っています。
 炭化コルクについては「水蒸気の保湿性が豊かなうえに吸放湿がよいので、防湿シートがなくても冬期の結露には比較的安全側であり、夏期の逆転現象結露にも有利です。防湿シートが必要なければ施工の注意点は気密施工の精度となり、施工は合理化できる。」とあります。保湿性吸放湿がよいとあります。

 断熱材の吸放湿については、吸湿性の問題ではなくて、それが放湿性があるかどうか、また結露によって濡れた場合を想定して保水性がないかどうかにかかっているようです。グラスウールは水分を吸うとそれを抱え込んで濡れたままになり、だから一度結露すると問題が大きいです。

 セルロースファイバーのことを書いている(宣伝している)本で、セルロースファイバーは室内側防湿層がなくとも結露がないと断言していて、不思議だったんですが、理由があるということのようです。
 炭化コルクも透湿性があり、室内側の防湿層なし、断熱材外側に防風シートのみという仕様がありえます。この仕様は『建築知識』1999年6月号(特集:私家版仕様書・仕上げ編)にも図が載ってました。


■施工方法
 プロでもない私が施工方法のことを書く資格はないのですが、注意点を1つ。結露域ができないようにする

 断熱材を設置すると、断熱材内部に結露ができる可能性があります。そうなるかどうかは、ある程度予測できます。詳しくは<内部結露>の項で述べますが、結露域が出来ないような壁構造にする必要があります。

 通常は断熱材の室内側に防湿層を設けて結露を防ぎます。

 しかし、防湿層を設けずに自然系断熱材の透湿性を期待している場合には、断熱材の室内側に防湿層を設けず、断熱材の外気側には透湿抵抗の高い材を配置せず、湿流を遮げない壁構造にします
 断熱材の外気側には防水透湿シート(タイベック)を張って気密を図りつつ、外側に十分な通気層を設けたり、透湿性の外壁材を用います。


■有害成分の吸着機能?
 自然系断熱材、とくに繊維系では、有害物質を吸着する能力があることがよく宣伝されています。
 しかしこれを評価すべきことかどうか疑問です。

 有害物質の吸着自体は歓迎すべきことですが、それはいつまで持続するのか、そのデータを示しているところはありません。ここが問題です。

 木炭の調湿機能のところで述べているように、吸着機能はいつか飽和し、それ以後は脱着がないかぎり吸着しなくなります。すなわち有害物質の吸着はいつか終わり、その後はその有害物質が放出される可能性もあるのです。


■炭化コルク 
 炭化コルクの性能は以下のとおりです。断熱性能がかなり良い。
熱伝導率
(kcal/mh℃)
熱貫流率
(kcal/m2h℃)
備考
厚さ30mm 厚さ50mm 熱貫流率=
熱伝導率/厚さ
0.034 1.13 0.68

日本で炭化コルクを輸入している商社は3社(神戸コルク、千代田コルク、東亜コルク)ですが、炭化コルクは価格が高いのが最大の問題です。

 ホルツェン社(本社神戸)は神戸コルク社の炭化コルク断熱材を以下のカタログ価格で販売してます。
  50mm厚を3,880円/m2
  30mm厚を2,340円/m2

 これだと20坪に総2階建ての家の天井・床・壁面積300m2の断熱に炭化コルクを用いた場合は
 50mm厚で1,164,000円、30mm厚で702,000円です。


■セルロースファイバー
 セルロースファイバーの原料は紙の繊維で、古新聞を原料にしているのが普通みたいです。直接に繊維からつくるものもあるようです。古新聞とはいっても、廃品回収で回収されたものでななくて、新聞社で印刷したけど売れずに余ったもののようです。それでもリサイクルです。

 セルロースファイバーの長所とされているのは、
 1.吸放湿性があるので、防湿シートを使わなくても高断熱で結露しない
 2.密度が高く施工するので防音効果が高い
 以上2点はグラスウールにはないメリットです。

 施工は、隙間が出来ないように、びっちり、パンパンにするようで、相当隙間面積が5cm2/m2程度になるようです。公庫の「気密住宅」程度になるわけです。気密シートなどの気密施工すれば、相当隙間面積2cm2/m2以下になるでしょう。

  セルロースファイバーは自然素材であることは確かですが、実はこの断熱材は問題もあります。
 新聞の印刷のインクが有機塗料なので、これが室内に揮発してきてアレルギーを起こすことがあるとのこと。新聞原料でない製品もあります。
 また難燃剤・防虫剤としてホウ酸(ゴキブリ用ホウ酸団子のホウ酸)を使っています。その安全性については後述します。 


■セルロース断熱材
セルロース繊維をマット状にした断熱材。透湿性、吸放湿性などの特徴があります。

セルロースを食べる虫(シロアリなど)の害やカビ、また火災への対策が必要でしょう。

そのために防虫剤、難燃剤として、ホウ酸を使っていたり、アンモニウム塩素系のDDAC(ジデシルジメチルアンモニウムクロライド)を使っていたりします。ホウ酸については後述、DDACについては<シロアリ対策>を参照のこと。


■羊毛断熱材
 新品の羊毛を用いたものもあるが、古ウールを使い復元力が弱いものや、薄くスライスしたものを接着剤で貼りあわせたものもあるので確認が必要です。
 接着のためにポリエステル(テトロン)を混ぜているものもあります。断熱性自体はその方が高いようです。

 羊毛は害虫に食害されやすく、幼虫が繊維を食害する。害虫は、甲虫目のヒメマルカツオブシムシ、ヒメカツオブシムシ、鱗翅目のイガとコイガ、が重要とのこと。
 ただしおもしろいことに、幼虫は羊毛のみでは十分に生育できずに、それ以前に昆虫の死骸などを食べて成長した幼虫が、顕著に羊毛を食害するとのこと。

 そこでその防虫のために薬剤が用いられます。ここは薬剤の種類と使用量を確認して下さい。
 防虫と難燃のために、ホウ砂ホウ酸塩で処理されたものがあります。(ホウ酸のことは後述。)
 また、ピレスロイド系薬剤を用いたものもあります。ピレスロイド系薬剤については<シロアリ対策>を参照して下さい。

 ところで、ニュージーランドでは、羊の放牧のため山を切り開いたために固有種の木が絶滅しかかっているとのこと。またそれが原因で土壌流出により近海の海水がにごり魚の種の減少という問題もおこっているとのこと。
 外国からの輸入材料を使うことは、こうした問題の助長や、さらには輸送コストをかけていることなど、エコロジーの観点からみると問題があることも理解したいものです。


■ホウ酸
ホウ酸は自然系断熱材に防虫、難燃用として使われることが多い薬剤です。

「目薬にも使われているんだから安全だ」という説明がよくありますが、これは誤り。毒性が問題になって、眼科用だけに用いられているのです。こういうサイトもあります。

以下は文献やシックハウスを考える会MLでの情報などから作成しました。

まずは急性毒性です。

ホウ酸の経口毒性LD50(体重1kg当たりの半数到死量)は、
  ラット2.7グラム、マウス3.5グラム、イヌ1.8グラム、ウサギ4グラムです。
経口LD50で3g/kgということは、人間の体重を60kgとすれば180g食べれば半分の人が死ぬということです。

経口投与のラットLD50(半数致死量)が50〜500ミリグラムだと「劇物」ランクに指定されますから、それには指定されていはいないということです。

ヒトの経口・最少致死量は成人640mg/kg、乳児200mg/kgです。
体重を勘案すると、乳児で2〜3グラム、幼児で5〜6グラム、成人で15〜30グラム、また中毒症状成人で1〜3グラムとのことです。だからゴキブリホウ酸団子は誤飲すると危険です。

なお、ホウ砂(ホウ酸ナトリウム)の経口LD50は、ラットで2.66g/kg、ヒトの経口・最少致死量は成人214mg/kg、乳児170mg/kgで、ホウ酸よりも毒性が高い。

慢性毒性について。

ほう酸を長期に取ると精巣に影響して精子ができなくなるということです。
ラットの実験による最大無作用量は17.5mg/kg/dayとか。

米国のEPAは、経口で0.09mg/kg/dayという指針値を設定しているようです。
体重50kgだったら、4.5mg/dayです。
また米国のACGIHの定めた気中濃度の基準は、
ホウ砂は5mg/m3以下、無水ホウ酸ナトリウムで1mg/m3以下です。

以上のような毒性がありますが、しかしホウ酸の蒸気圧は非常に低い(砂糖や食塩より低い)ようなので、蒸気として出ることはあまり心配がいらないと考えます。そのためにヨーロッパの自然系断熱材でも用いられているのでしょう。

しかし、微粉が飛ぶとか、幼児が舐めるとかを考慮するべきで、リフォームなどの解体時は十分な注意が必要です。



ホウ酸の毒性に関して日本セルロースファイバー断熱施工協会のIさんから2001/4/24に以下のDMを頂きましたので、掲載いたします。
なお、出典は角田邦夫(京都大学木質科学研究所)「ホウ素化合物の木材保存剤としての利用」木材保存、Vol.25.2(1999)とのことです。

ホウ素は、植物の健全な成長に不可欠な微量元素であり、通常の動物飼料や食品中に存在しています。
工業上の暴露とは無関係に、食品の種類に応じ、通常成人が飲食物より摂取する量は、一日あたり最低3.5mgから最大41mg(ホウ酸に換算すると、20mgから235mg相当)の間になると予想されています。
この一日あたり食品由来のホウ酸摂取量は、腎臓による排泄容量を充分に下回る値です。

ヒトに対する生殖毒性の危険性評価について米国EPAはリスクアセスメントのなかで、精巣萎縮を予防するために、70kgの成人あたり6.2mg/日のホウ素の経口摂取量を越えないこととしています。毎日の食品摂取に由来するホウ素が3.5mg〜41mgと推定されている事から、この低い推奨値は幾分疑問視されています。

ヒトのボランティアによる実験
 500mgのホウ酸を含む水溶液を静脈注射により一回投与した場合、ホウ酸は尿中に排泄され、21時間後には半減し、96時間内には完全に体外に排泄される事が知られています。

LD50
 ホウ酸のラットにおけるLD50は3000〜4000mg/kg体重であり、ホウ砂のLD50は4500〜6000mg/kg体重です。単純な比較では塩化ナトリウム(食塩)のLD50は3750mg/kg体重で、同じ程度と言えるでしょう。
病院での誤用の事例より、ネズミと比較した場合、ヒトはホウ酸の摂取による急性中毒影響を受けやすいことが知られています。

無機ホウ酸塩は、食品や動物用飼料に添加すべきでないという了解にもとずいて販売されています。化粧品や医薬品は外用に限定されています。


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 2000/2/14 updated
 2000/12/9 セルロース断熱材、羊毛断熱材、ホウ酸等加筆
 2002/2/10 ホウ酸に関するDMを掲載