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 私の家づくりノート 2.自然素材の光と陰
珪藻土と漆喰

   ■珪藻土と珪藻土建材の違い
■不明な成分と性能
■珪藻土建材の安全性
■珪藻土の安全性
■せっかい(石灰)とせっこう(石膏)
 ○せっこう
 ○石灰
 ○生石灰クリーム
■顔料の安全性

■珪藻土と珪藻土建材の違い
このところ自然素材のブームですが、内装材に珪藻土を使っているというのが売りになっていることも多い。吸放湿性がある、シックハウス防止に効く、健康によいなどなど。確かに珪藻土自体の吸放湿性能は高いから、それを壁に塗ることは室内環境を改善することは確かだろう。
しかし実際に内装建材として売られている「珪藻土建材」に吸放湿性能はいったいどの程度あるのか、かなり疑問です

珪藻土にはいくつかの種類がありますが、太古のプランクトン(珪藻)の遺骸が堆積したものであることは同じです。石灰化した粒子(プランクトン遺骸)の表面に無数の孔が空いていることから、活性炭のような吸放湿効果が高いのです。こうした珪藻土自体の説明はご存じのことでしょうから、省きましょう。
問題は、その「珪藻土」と建材として販売されている「珪藻土建材」とは同じ物か? です。

ところで漆喰や石膏、セメントは水を混ぜれてしばらくすると固化します。しかし珪藻土には固まる性質(自硬性)はありません。乾くとまた土の状態に戻ります。珪藻土製品として代表的な七輪が固まっているのは、高温で焼いているからです。その七輪でもこすれば、珪藻土が容易に削れてきますよね。
正確には、七輪の製造方法は「切り出し」と「練り」があって、ともに釜で焼くようです。前者はやや高価なもの、後者は廉価なものです。詳しくは鍵主工業のHP(2007/9に加筆)

しかし左官材として販売されている「珪藻土建材」は壁に塗ると確かに固まってきます。ではなぜ固まるのかというと、珪藻土に固化材が混ぜられているからです。さてではその固化材の成分はいったい何か?


■不明な成分と性能
珪藻土を左官するためには、珪藻土を固化させるために何らかの固化材を混ぜる必要があります。
石膏、漆喰、セメントに珪藻土を混ぜて用いることもできます。これらの材料は、それ自身にも吸放湿性能があるので、珪藻土の吸放湿性質を大きく損ねるということはないでしょう。

しかし市販の珪藻土建材のほとんどは合成樹脂を固化材に使っています。合成樹脂には吸放湿機能が全くありません。だから合成樹脂を加えることは珪藻土の吸放湿性質を阻害します

そこで問題は、では市販の珪藻土建材にはどのような固化材がどの程度含まれているのか? です
これを明確に示しているメーカーはほとんどありません。
しかも驚くことに、珪藻土建材に珪藻土が何%入っているかを示しているメーカーもほとんどありません。


唯一といえる例外は、サメジマコーポレーションです。そのサイトの珪藻土建材の資料を見ると、製品によって珪藻土の混入率がかなり異なっていることがわかります。混入率は21%から57%まであります。珪藻土建材といってもかなりの差があるということです。他社の製品はいったいどうなんでしょう。
またそのサイトには、合成樹脂を用いることは珪藻土の性質を阻害する、とも書いてあります。珪藻土の混入比率が少なければ吸放湿性能が劣る、また合成樹脂の比率が多いほど吸放湿性能が劣る、というデータも示されています。
(特定の会社の製品が優れている、と言っているのではなくて、この会社しか情報を提供していない、と言っているのです。念のため。2007/9に加筆。)

珪藻土建材と言ってもこのようにピンからキリまである、ということです。その中からどれがいいかを選べればいいのですが、しかしその選択をするためのデータは(1社を除いて)ほとんど公開されていない。これが現状なのです。
何をつかまされるかわからない珪藻土建材を使うなら、漆喰に珪藻土を混ぜて左官する方が確かな性能が確保できるでしょう。


■珪藻土建材の安全性
安全、健康が謳い文句の珪藻土建材はしかし本当に安全なのか。配合されている物が何なのか不明確なので正確なことは言えないのですが、以下のことは言えますので要注意と思います。

まずは、合成樹脂の問題です。混入されている合成樹脂自体の安全性は、その成分をメーカーが明らかにしていない状態では何とも言えません。

樹脂については、次のようなことを予想するべきです。

1つは合成樹脂の経年変化による劣化の問題です。紫外線をあびるなどによって合成樹脂は劣化し、もろくなってきます。その結果、固まっていた樹脂自体が飛散するようになる可能性があります。塩ビクロスは発ガン性がある塩ビを素材にしていますが、劣化によって将来、塩ビが飛散することが予想されます。同様に、珪藻土建材に含まれる合成樹脂の飛散の問題も予想されます。飛散すればその樹脂を吸い込むことになります。だから樹脂の安全性は重要です。
20年、30年先にいったいどうなるのか。「合成樹脂が多い方が安心だ」などという意見の方は、合成樹脂の安全性と耐用年数がいったい何年なのか、よく調べた方がいいでしょう。

もう1つ、合成樹脂自体は安全かもしれませんが、その場合でも合成樹脂の劣化とともに、合成樹脂で固化してあった珪藻土がバラバラになって飛散するということが起こる可能性があります。珪藻土が飛散したからといって健康上大きな問題になることはたぶんないでしょうが(次の項で説明します)、ほこりっぽくなるでしょうから、塗り直しということになります。

安全性に関しては、含まれる薬剤、例えば防カビ材の問題もあります。珪藻土自体は腐りはしないですが、湿気を吸うために建材にカビが生えることがありえます。そこで珪藻土建材には防カビ材が配合されていることが多くあります。それはどの程度安全なのか。幼児なら壁を舐めることもありえますし、手で触っても安全なのか。また薬剤が揮発することはないのか。しかしこれらも、建材に含まれる成分が秘密では、確認しようがありません

固化材に石灰(漆喰)やセメントを用いている場合には、そのアルカリのおかげでカビは生えにくいので防カビ材を不要にできます。またこれらは合成樹脂のように劣化することはありません。固化材を何にするかは、こうした意味で重要なのです。


■珪藻土の安全性
では珪藻土自体は絶対安全か。

珪藻土の成分であるシリカ(二酸化珪素)じん肺(珪肺症)の原因です。だから大量に吸い込むと問題になります。しかし工場内とは違って、家庭内でそのような状況にはならないと思います。というよりそんな状態になる前に、珪藻土が室内に舞って埃っぽくなりますから、きっと何らかのメンテをするでしょうから、健康上の大事には至らないだろうということです。

珪藻土がガンの原因ではないかという情報もあります。確かに結晶性シリカは肺ガンの原因とされています。国連のIARC(国際ガン研究機関)では、シリカの項目に珪藻土(diatomaceus earth)の発ガン性が載っています。
  結晶性シリカの発ガン性は最も高いランクのGroup 1で「発ガン性あり」です。
  しかしAmorphous silica (非結晶性シリカ)は、Group 3で「人に対する発ガン性を分類することができない」というランクです。

結晶性シリカとは石英のことです。珪藻土は未焼成の場合は結晶性シリカはほとんど入っていない(ICSCカード「けい藻土(未焼成品)」)。しかし焼成すると結晶性シリカ(クリストバライト)が生成します。焼成した珪藻土にどの程度の結晶性シリカが含まれているのかは知りません。

非結晶性シリカは、ガンの「可能性あり」とも言えないが「可能性がない」とも言えない、要するに「わからん」というものです。というのは、非結晶性シリカ自体は珪肺症の原因物質ですが、その珪肺症がガンに発展するから珪藻土には発ガン性があるという見解(研究結果)が一部にあるからです。そうではない(珪肺症とガンとは関係ない)という見解もあって、「分類できない」となっています。

 したがって焼成珪藻土には珪肺症や発ガン性の可能性があるとは言えますどの程度あるかわかりません。塗り壁にした場合にどの程度室内に飛散するかも問題だと思います。将来的にも飛散の可能性が低いような固化剤を使うならば安全性は問題ないでしょうが、そうでない場合にはやや不安な面があると言えると思います。


■せっかい(石灰)とせっこう(石膏)
珪藻土自体は水を加えても乾けばまた土の状態に戻るけれども、石灰や石膏(せっこう)、セメントは固まります。その性質を利用して左官材に使われてきているのです。(これらに珪藻土を混ぜて左官することもできます。)

石灰、せっこう、セメント(ポルトランドセメント)は化学反応によって硬化します。石灰は二酸化炭素と反応して硬化する(気硬性)。石膏やセメントは水との反応で硬化します(水和反応)
ここでは内装用の左官材として使われる石灰とせっこうについて説明しましょう。


○せっこう
せっこうの化学成分は硫酸カルシウムで、それには結晶水の量によって3種類ありますが、普通「せっこう」というと焼せっこうの「半水せっこう」と、それに水を加えて硬化させた二水石膏(結晶石膏)とを指します。
二水石膏 CaSO4・2H2O
半水せっこう CaSO4・1/2H2O
半水石膏は水を加えてると10数分で発熱硬化します。そのために左官に用いるせっこうプラスター(せっこう左官材)には凝結遅延材が加えられています(ボード用せっこうプラスターの凝結時間は1〜16時間)。

せっこうプラスターは、乾燥・硬化による収縮が非常に小さいためにひび割れしにくい、中性または弱酸性なので乾燥後に油性ペイントが塗れる、結晶水があるために火災時に防火性能が大きいなどの特徴があります。しかし施工時に長時間の練り置きができない、水や湿気によって変質しやすく耐水性がないという弱点もあります。


○石灰
石灰岩や貝殻を焼成すると生石灰(きせっかい、せいせっかい)になる。成分は酸化カルシウムです。なお石灰岩からできたものを石灰(いしばい)、貝殻からできたものを貝灰(かいばい)と呼びます。
生石灰に水を加えると発熱膨張して消石灰になります。またこの現象を消化と呼びます。生成された消石灰の成分は水酸化カルシウムです。消化には水を加える方法ではなく、湿った空気中で自然消化させる方法もあり、これによる消石灰は可塑性に富み品質が良いとのこと。

消石灰に水を加えて練り合わせ、壁に塗りつけると、乾燥後に空気中の二酸化炭素と反応して、もとの石灰石の成分である炭酸カルシウムになります。
生石灰 CaO
消石灰 Ca(OH)2
石灰石 CaCO3
消石灰を水で練ったものは粘性に乏しいので、作業性を向上させるためにこれに糊を加えたものが漆喰(しっくい)です。糊には伝統的には角又(つのまた)などが用いられます。またスサと呼ばれる植物繊維を混ぜて補強もします。漆喰は硬化とともに収縮するので、それを少なくするために川砂を用いることもあります。スサや川砂・珪砂を混ぜるとテクスチャも変わってきます。

ヨーロッパの建築にも石灰が使われています、それは消石灰に川砂だけを混ぜた石灰モルタルです。糊の有無を別にすると、日本の漆喰と同様な石灰の壁です。


○生石灰クリーム
ヨーロッパでは生石灰クリームも使われています。生石灰を大量の水で消化させ、ペースト状にして、数ヶ月さらには数年寝かせたものです。寝かせることで、消石灰の結晶が成長し、可塑性などの性質が向上します。この生石灰クリームは、消石灰に比べて、硬化後の収縮が少なく、表面硬度が硬く、コテによる艶が出やすい性質を持っているとのことです。

石灰の既調合品は数種類販売されています。ほとんどは現場で水と練り合わせて用います。「消化」させるわけですが、実はこのときに熱を出すので、素人には危険を伴います。生石灰クリームであれば、すでに水と合わされているのでそうした心配はいりません。日本でも田中石灰工業が「生石灰クリーム」(商品名:タナクリーム)を販売しています。これには左官作業時の初期粘性を増すためにメチルセルロースが混入されています。食品にも混入されるものなので、安全性には特に問題はありません。

拙宅ではこれを用いて壁を左官します。


■顔料の安全性
左官材には着色することも多くあります。
「顔料」には化学合成されたものが各色ありますが、顔料の色はほとんど重金属で出されます。舐めると危険、というものがほとんどでしょう。

漆喰の着色は、従来は色土で行われていました。各地でとれた土には色々な色があり、それを昔から聚楽壁などに使っていた。こうした色土は、では安全なのかというと、実はよくわからない。成分表なんてないですから。(笑)

とはいえ、色土の方がまだましだろう、という判断で、拙宅では「黄土」を用います。



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2002/7/7 open
2002/7/20 「顔料の安全性」を追加
2002/10/20 安全性について訂正
2007/9/17 七輪、サメジマコーポレーションについて加筆。