建築記録
伝統技法
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■土台と足固め
●足固め / ●長ホゾ差し込み栓打ち / ●雇いほぞ
■柱
●四方差し
■床組み
●追い掛け大栓継ぎ / ●台持ち継ぎ / ●平ほぞ差し鼻栓打ち / ●差し物(差鴨居) / ●渡り腮
■小屋組
●折置組
■耐力壁
●落とし板倉
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拙宅は、木造軸組構法ではありますが、在来構法ではありません。在来構法は第2次大戦後に形成された意外に新しい構法で、それ以前の伝統的構法とは異なります。伝統構法では貫構法が一般的ですが、拙宅では板倉構法を面耐力で補強した構法を採用しています。
板倉構法の実際は後に紹介するとして(まだそこまで工事が進んでない)、ここでは木造軸組の伝統技法について拙宅の例を紹介します。
HP内の参照箇所
| 木造住宅の構法 |
「私の家づくりノート」より |
| 板倉の家 |
「わが家のこだわりと工夫」より |
| 壁構造 |
「わが家のこだわりと工夫」より |
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| ■土台と足固め |
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●足固め |
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基礎の上は土台です。土台に差し込まれている柱と土台とは長ホゾ差し込み栓打ちです。まだ込み栓はなくて後日込み栓の穴を開けてから込み栓を打ち込みます。
土台の上にそれ平行してある横架材は足固めです。土台から約60cm程度上がったところにあって、ここが床のレベルです。この足固めは土台近くで柱に差し込まれ、土台に平行して家をぐるっと囲んでいる。柱は土台とこの足固めとで柱は自立できます。拙宅では、土台と足固めの間に通し貫が入ります。
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昔の家は布基礎も敷き土台もなく、独立基礎の上に柱が乗っていて、それを足固めが固めた。その伝統技法を現代の家にも応用したものです。柱の両側から刺さる足固めは、柱を貫通する雇いほぞを介して結束され、雇いほぞは込み栓で足固めに止められます。
この足固めは、土台に近い位置で柱に差し込まれているので、建て方は大変。土台に柱を立ててしまってからでは足固めが入らない。足固め入れた柱を吊して土台に据えないといけない、でも全ての柱を同時にそうするわけにはいかない。大変に時間がかかったとのことで、この部分だけで初日の午前中いっぱいかかったらしい。
しかしそれでもやっぱり難しかった。写真の右側の柱にとりつく足固めは雇いほぞが入らなかったので、それが入る穴があいたまま。雇いほぞ(板)はその柱の右に置いてあります。後で削って入れるそうです。
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●長ホゾ差し込み栓打ち |
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長ほぞ差し込み栓打ち。柱に長いホゾ(凸部分)を切り出し、それを横架材に差し込んで、横架材からそのホゾに込み栓を打って止める。
込み栓は堅木を使っている。込み栓は販売されています。
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これは2階の軒桁と柱とのとりあい。外壁側から釘で止めています。建て方のときには、こうやって止めたものをクレーンでつり上げた。ここは後で釘を抜いてドリルで穴を開けて込み栓を打つのかと思ったらそうではないようです。
後ほど設計者がドリルで穴を開けて込み栓を打つ、と言ってます。 |
以前は横架材と柱との取り合い(仕口)の接合は、長ホゾ差し込み栓打ちで良かったのですが、2001年の建築基準法改訂で仕口・継手の規定が厳密になり、仕様規定では長ホゾ差し込み栓打ちを使える仕口はかなり限定されました。
しかし最近の研究では、長ホゾ差し込み栓打ちはT字金物と同等の強度(引き抜き防止力)があるとのことが示されています。長ホゾ差し込み栓打ちに弱点があるとすれば、長ホゾが脆弱な樹心部であるために、長ホゾはせん断に弱いことです。そこでホゾの幅を広げて(平ほぞにして)込み栓を2つ打つとか、長ホゾをせん断に強い木にした雇いホゾにするとねばり強さが出てくるとのこと。
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●雇いほぞ |
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雇いホゾ |

小根ホゾ(左)と雇いホゾ穴(右) |
左写真は、足固めの写真で脇に置いてあった雇いほぞです。ホゾは本来は材自体を削って作り出すものですが、別の材(ヒノキなど堅い木)をはめ込んでホゾとすることがあります。それが雇いホゾ。
右写真は、横架材が2つ並んでいますが、左は材自体に短いホゾ(小根ホゾ)がついています。右は短いホゾの上に溝が切ってあります。この溝に「雇いホゾ」を差し込んで、柱をはさんで対面する横架材と接合します。
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雇いホゾは板車知(いたしゃち)で止めるのが伝統構法ですが、拙宅は込み栓を使ってます。
雇いホゾを多用する方法は、北米で復活したティンバーフレーム構法に倣ったもの(設計士の言)。ティンバーフレームは元々はイギリスで発達した軸組工法で「頬杖(ほおづえ)」という斜材を使うのが特徴ですが、近年、北米で復活したものでは横架材と柱との接合に雇いほぞと込み栓を多様するらしい。それを取り入れたのが拙宅です。
ところがその雇いホゾ込み栓打ちの工法は、実は彼らが日本の伝統構法からヒントを得たもののようです。太平洋をはさんで、軸組工法技術のキャッチボールが行われている。
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| ■柱 |
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●四方差し |
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通し柱に四方から梁と胴差しが差し込んでいる。

1.横から |
通し柱に胴差(家の外周を回る横架材)が差し込まれたところ。柱から飛び出しているのが雇いほぞ。ヒノキの板を横架材(胴差)に差し込んで、柱をはさんで対面する胴差同士を繋ぐ。
本来は横架材自体の端部を削ってこうした凸部分をつくる(竿と呼ぶ)のですが、そのためには竿の長さ分だけ長い横架材が必要。拙宅ではコスト削減のために定尺材を使っているので、雇いほぞを使って長さを確保しているということ。(後から設計者に聞いたこと)
「竿」や「雇いほぞ」を相手の横架材と止めるには、シャチ(車知)という小さな板状のものを斜めに挟むのですが(といっても図がないとわかんないですね)、拙宅の雇いほぞは込み栓で止めます。写真ではまだ入れてなくて、穴があいているだけ。
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2.下から |

3.ベランダ側から |
大黒柱にかかる梁が柱の向こうから差し込まれている。手前側はベランダの床梁が入る。左右には胴差し。結局、通し柱の穴には4方から横架材が入る四方差しになる。
胴差には写真に見える穴のさらに下の位置で雇いほぞが通っている。梁とベランダの梁は穴の上半分の位置で雇いほぞでつなげる。梁に雇いほぞが入る部分は凹状態になっているので、穴の向こうの空が見える。 |

4.断面欠損の様子 |
こうした四方差しは柱の断面欠損が大きいので、柱にとって良いことではない。対策として通し柱は5寸にしている。(通柱じゃなければ1階の柱と2階の柱とは梁で縁が切れているから、四方差しにはならない。)
梁が差し込まれる部分をすこし細くして「小胴付き」にしているけれども、それでも断面欠損は大きいです。4寸を5寸にしても残る部分はさほど変わらない。
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5.ベランダ側から |

6.込み栓を仮止め |
建て方2日目に柱の向かって左側にも胴差しが入れられた。
右は込み栓を打ち込んでいるところ。
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7.四方から差し込み |
2階ベランダの梁が通柱に差し込まれたところ。左側がベランダ。
それぞれの梁には雇いホゾがついて、対面する梁と連結されている。
柱の手前側に溝がついているのは、ここに厚板を落とし込んで板倉にするためのもの。
(2002/2/13追記) |
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| ■床組み |
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●追い掛け大栓継ぎ |
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独特の刻み方が見えるでしょうか。梁成(はりせい)が大きい(120×300)ので四角い栓を入れている。成が小さい場合は丸い栓をしてます。
栓の周辺の木がちょっと剥がれたので接着剤をつけてピンで止めて整形しているようです。(こんな写真、とっちゃいけなかったかな) |
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●台持ち継ぎ |
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梁のスパンが大きい。 |
ダイニング、キッチン部分の1階床組み。基礎立ち上がり60cm、土台から足固めまで60cmですから、約1m20cmの高さの床下空間があります。その空間を有効に使えるようにという設計者の考えから、束の数を少なくしている。
通常の1階床組みは太い大引の上に根太を乗せるのですが、拙宅の1階床は束の間隔が大きいので、その大きいスパンに梁(120×300)をかけ、それに力根太(120×240)をかけている。力根太が梁にかかる部分は台持ち継ぎ(真継ぎ)で継いである。
こういう継手は2階の床組みなどに使うものと思ってましたが、その伝統の技がなんと1階床にある。しかしここは見えないんですよ、ああもったいない。興味のある方は床下をお見せします。(笑)
なお、束同士は通常は根がらみという材を横に渡すのですが、拙宅ではそれでは床下空間が制約されるので束の途中から梁に斜め材(頬杖)をとりつけます。
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台持ち継ぎ |
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2階天井の梁に小屋裏の桁(120×300)が乗っているところ。交差部に継手があってこれも台持ち継ぎです。
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上棟のページに載せた写真ですが、2階天井の桁に、根太を梯子のような形に差して吊し上げている。上記の梁はこの梯子状のものを2つ繋げている。写真で左端の斜めの部分が台持ち継ぎの継手部分、下側の欠けは梁と交差する部分。
持ち上げられている材は、上の写真の左側の部分ということ。
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その桁は梁に乗っているので、桁の天端は梁の天端よりも上にあります。
そのために桁の端部では、梁だけではなく柱にもとりつくことになる、というよりむしろ柱にとりついていると言う方がいい。
その接合部分はどうなっているか。ホゾ差し込み栓打ち、ならわかりますが、写真のように込み栓はありません。柱に桁を差し込んだんじゃないんです。ここをどうやって組んだか?
ここは梁の上に桁を乗せて、さらに桁の端部に柱を落とし込みました。桁は蟻落としで柱に組まれています。 |
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●平ほぞ差し鼻栓打ち |
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下から |

上から(2002/2/16) |
上の2階天井の梁で、梯子段のように見える部分は4寸角の力根太。その根太からは、根太幅と同じ幅のホゾ(平ホゾ)が桁を突き抜けていて、その先には鼻栓を差し込んで止めている。
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●差し物(差鴨居) |
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居間の吹抜に走る梁。松を太鼓に落とした(丸太を縦に切った)梁は両端が柱に差し込まれている。差し物という手法。中央部分に束を立てて、その上の登り梁を支えつつ、柱を固める役割も果たしている。ここは長ホゾが柱を貫通して差し込まれ込み栓で止めている。
柱から出ている部分は、2階の壁の中に入ってしまう。見えたら面白いのになあ。(そんな間取りにしたのは私です。) |
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奥から2つ目の横架材は2階のトイレの床梁(120×300)に力根太(120×180)がかかっているところ。
この床梁は柱に乗っているのでも、柱に落とし込んでいるのでもなく、柱に差し込んであって、ここも差し物です。下端に建具(襖、障子)が入れば差鴨居です。「鴨居」というと構造材の感じがしませんが、差鴨居は構造を構成する横架材として使われる手法です。
柱の上に梁を載せるのと違って柱の間に挟むのだから、建て方はやや面倒です。
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向かって左端 |

向かって右端 |
差し込まれた梁のホゾの先端は写真のように柱から出ている。このホゾは梁成よりも細いホゾ(小根ほぞ)で、ホゾが柱から出た部分に鼻栓(出っ張っている部分に穴をあけて、そこに栓をする)をつけます。
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●渡り腮 |
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上の写真の梁にかかる力根太は、落とし蟻じゃなくて渡り腮(わたりあご)になって梁に乗っている。交差部の掛かる部分で両方の材を欠込んであり、重なる部分には太ホゾは入ってます。
根太の上に床を張るのですから、根太だけが梁に乗っている分だけレベルが高くなっては床に段差が出来る。それを解消するために梁のレベルを下げて差し物にしたということでしょう。差した梁に渡り腮が乗っている部分は居間に現しになり、鼻栓は居間に続く和室(当面板の間)に現しです。
拙宅の渡り腮はここと、ベランダにかかる軒の折置組のところと1階デッキにあります。 |
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| ■小屋組 |
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●折置組 |
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2階ベランダ屋根の軒。
柱の上に小屋梁(120×180)があり、それに軒桁(120×240)が乗り、その上に登り梁(120×240)がかかっています。軒桁は小屋梁に載って渡り腮で組まれています。小屋梁に軒桁が載るのを「折置組(おりおきぐみ)」と言います。逆に軒桁に小屋梁が載るのが「京呂組」。折置組の方が小屋梁に屋根過重がかかるので安定している。拙宅では軒桁にさらに登り梁が載るので荷重がいっそうかかりやすくなっている。(登り梁と軒桁の引き抜き対策は?)
通常は柱に軒桁が乗ってそれに小屋梁が大入れ蟻掛けで組まれて、桁と梁の天端をそろえたところで、軒桁に垂木が乗ります。拙宅でも、ここ以外はそうなってます。
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| ■耐力壁 |
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●落とし板倉 |
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最後ですが、外気に面する壁は落とし板倉構法となってます。詳しくは<板倉の家><壁構造>を参照下さい。
厚板を落とし込む部分にの上下左右には溝がプレカットされています。
通常は軸組を立てながら厚板を落とし込んでいくのですが、拙宅では先に軸組を組んで、後で厚板を落とし込む。そのための準備もしてあります。
さて、どうやっていれるのかな・・・ |
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2002/2/9 「木工事(4)」から抜き出して独立
2002/2/17 構成を変更
2003/3/27 工事日記から移動
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