数字から見るテニス

 
目 次  
ラケットスイングを解析する2010/02/05
テニスコートを見直す2010/07/05
サーブを考察する2013/02/20
 

サーブを考察する                                    掲載 2013/02/20

 オーストラリア)がサーブで史上最速の時速263キロを記録したと発表した。このほど韓国で行われた下部大会で計測された。 これまでの記録は、2011年3月にイボ・カロビッチ(クロアチア)がマークした時速251キロ。(2012年5月13日の記事)

 さて、時速250kmのサーブとはどのようなものだろう。センターから打ったサーブ(赤色)とサイドから打たれたサーブ(緑色)を表わすと 下図のようになる。この図は説明用の図だが、現実のサーブに照らしてもう少し詳しくみてみよう。


 1. センターからのサーブ      

  コートとネットのサイズからサーブの高さ(Hc)を求めてみる。

   [データ]  ネットを越えるときのボールの高さ=1.0m(ボールの大きさをプラス)
          サービスエリアの長さ=6.4m  コート半面の長さ=11.9m 

  データからサーブの高さを計算するとHc=2.9mとなる。

 2. サイドからのサーブ      

  サイドからのサーブ時のサーブの高さ(Hs)を求めてみる。

  計算は少し複雑になるので、結果だけを示すと、
  サーブの高さは2.9mでセンターからのサーブと値は同じになる。またネットを横切る位置は、センターから0.75mのところ、 サーブの位置からネットまでの距離は13.6mとなる。


 上記二例の計算で得られたサーブの高さは2.9mとなった。この高さは身長2m前後のプロが到達できるサーブの高さで、素人が及ぶ高さではない。 それではこの高さからサーブをすれば、直線で糸を引くようなサーブが入るかというとそうではない。なぜなら、地球上のあらゆるものは重力が作用しているからだ。 従ってボールには必ず地球に引っ張られる力が加わることになる。ボールの落下程度は、どのくらいの時間、ボールに重力がかかっているによって異なる。

 重力のかかり具合の理解する身近な例をあげるみよう。
 少し高い所(10階くらいの建物)からテニスボールを自然に落下させると、手を離してから1秒後には約5m、2秒後には約20mも落ちるのだ。 (空気の抵抗などは無視している)

 それではサイドからのサーブが13.6m先のネットに届くまでの時間を求め、一覧表にしてみる。
サーブのスピードによって所要時間も落下距離も大きく違ってくることに注目。
項 目サーブ時速サーブ秒速ネットまでの所要時間ネットでの自由落下量
単 位[km/h][m/sec][sec][m]
 25069.40.190.18
 20055.60.240.29
 15041.70.320.51
 12033.30.400.80
 10027.80.481.15
  8022.20.601.79
  5013.90.974.56


 世界最速レベルの時速250kmのサーブでも重力の影響を受け、ネットの位置で18cmも落ちる。一般プレーヤーなら速い部類に入る時速150kmの サーブの場合は50cm、普通のプレーヤーなら時速100kmのサーブくらいなので1m以上も落ちることになる。

 しかしサーバーはそれほど重力を意識してサーブをしていない。なぜならば日ごろ重力の世界にいることの慣れで、重力の影響を織り込んだ打ち方を しているからだ。すなわちサーブの際は、最初の図にあるように直線的にネット上を狙って下向きに打つのでなく、かなり水平方向(地面に平行)気味に ボールを打ち出しているのだ。

 もしレシーバーが、サーブのポールがネット上を通過した時には、フォアかバックかを判断して、ラケットを構えなければならないとすると、 プロプレーヤーは150km以上のサーブを打つことを考慮すると、その判断に許される時間は、0.3秒以下ということになる。 この時間でラケットを所定の位置に構えることは、プロプレーヤーでも相当困難なことが推測される。実際にはボールがネット上を通過する前に、即ち、 サーブが打たれた直後にフォアかバックを見極める、アマプレーヤーとは比較にならない反射神経や予測能力を駆使しているものと思われる。

▲ 目次へ

テニスコートを見直す                               掲載 2010/07/05

 見慣れたテニスコートに正方形があることをご存じですか。どこかの本に書いてあったのでご存知の方もいるかもしれませんが、 すぐに思い浮かばない方は暫しコートを思い出して考えてみてください。いつも見ているようでも改めて問われると見えていないもの、 身の回りだけでもたくさんあるようです。

 コートの見え方      

 下の図は、コートを縦向きと横向きに配したものです。どちらの図が正確に書かれているか判別できますか。 右側のBコートはAに比べて少し細長く見えませんか。
 実は両方とも同じ大きさなのですが、配置のしかたによって錯覚でこのように見えるのです。


 審判台に上がった時にはAのように見えます。ゲーム観戦などでエンドライン側から見るとBのようになります。 シングルスのゲームのときはダブルスのサイドラインを消す場合があるので細長さはもっと強調されます。
 この見え方は、プレーをするときにコートに立って見える感覚とは違いますが、知識として覚えておくと役に立つかもしれません。

 コートの中の正方形      

 はじめの質問の答えが分からない方のために、寸法入りのコート図を用意しました。全体を見るのに分かりやすいので、 寸法はフィートで表記してあります。ラインがないので分かりにくいかもしれませんが、青色で示した部分が正方形になります。


 コートの中の正方形      

 上記寸法図をよく見ると、サービスコートの幅がアレー幅の3倍になっていることが分かります。図で示すと次のようになります。すなわち、 アレーの幅をAとするとサービスコートの幅は3Aです。だからどうということはありませんが、サービスをするときの3分割の目安には役立ちます。 ゲームでは練習時のように仮設ラインやマーカーを置くわけにはいきません。アレーの幅を見ながら、センター、ボディー、ワイドと狙う上での 参考にすることができます。


 見慣れたコートでも視点を変えると、まだまだ知らない部分が見えてくるかも知れません。コートを形成するラインやネットの高さの持つ意味を 理解し役立てることにより、より正確な情報を得ることができるでしょう。

▲ 目次へ

ラケットスイングを解析する                           掲載 2010/02/05

 グラウンドストロークでは、ラケットとボールの接触時間は、およそ4/1000秒から5/1000秒と言われます。 これは超高速度カメラの撮影で、科学的に証明されています。
 ボールを打つ感覚は誰でも経験していることですが、ラケットとボールが4/1000秒という時間だけ接触しているということは、 今ひとつ実感がわかないという人は多いことでしょう。 そこで、この4/1000秒という数字を、もう少し深く考えてみることにします。
 数字や数式がたくさん出てくると頭が痛くなる人もいるかと思いますが、そういう人は最後の部分だけを見ていただくだけでいいですよ。

 ラケットの移動時間      

 スイングするときのラケットのスピードは、どのくらいでしょうか。図1でテイクバックされたポイントをA、180度振られたポイント をBとします。
 ビデオ撮影された映像のA、Bポイントに相当する撮影画像時刻からAからBまでにかかった時間が分かります。
 ベースライン付近からの通常のラリーでは、男性も女性も0.25〜0.35秒ほどです。





 スイングの回転半径      

 次にスイングの回転半径を考えてみよう。
 肩を中心にラケットを振るとき、肩から打球ポイントまでの長さRは、身長170cm前後のプレーヤー(男性をイメージ)では 実測値で95cm。この値は、腕の伸ばし方の違いで多少変化します。
 女性をイメージした身長160cm前後のプレーヤーでは、R=85cmくらいでしょう。




 図1のAからBまでの移動距離は、Rを半径とする円の周長の半分です。R=95cmであれば、周長をLとすると円周を求める 公式に当てはめ、L=πR=298 [cm] 。この値を、図1のラケットの移動時間で割ると、単位時間 [ms] 当たりのラケットの 移動距離=0.995 [cm/ ms] が求められます。ラケットとボールの接触時間を4msとすると、接触している間に動くラケットの 移動距離は 0.995 [cm/ ms] *4 [ms] =3.98≒4.0 [cm] となります。

 即ち、ラケットとボールの接触時間 ; 4/1000秒、の短い時間の間に動くラケットの移動距離は4cmということになります。

 円周率腕+
打点
ラケットの
動き半周長
ラケットの
移動時間
ms当りの
ラケットの移動量
接触
時間
ラケットの
移動量
 πRL=π*RTt=L/TSM=t*S
単位cmcmmscm /msmscm
男性3.14952983000.995
(35.8km/h)
43.98
女性3.14852673500.763
(27.5km/h)
43.05
プロ3.141203772001.885
(67.9km/h)
47.54
各人の振りの半径:Rを入れて計算
     男性   M =π*R * S/T =π* R *4/300 = 0.042×R
     女性   M =π*R * S/T =π* R *4/350 = 0.036×R


 改めて4/1000秒の持つ意味は      

 今までの説明で理解していただけたでしょうか。
 結論は、一般プレーヤー(男女とも)が通常のスイングでボールを打つと、ラケットとボールが接している間に動くラケットの 移動量は、3〜4cmとなります。
 ちなみにプロは身体の大きさ、スイングのスピードも素人とは大きく異なるので結果も大きく違い、ラケットの移動量は、 一般プレーヤーの倍の7.5cmとなります。

 一般プレーヤーのスイング程度であれば、男女による違いはほとんどありません。
 今までの説明で分かるように、ラケットスピードが速くなればラケットとボールが接触したまま移動する距離が増すので、 ボールの方向を決める要素が安定するため、コントロールが良くなることを意味します。

 コーチは、「ボールを押し出せ」、「押し出すように打て」と言います。素人では3〜4cmという距離ではありますが、 確かにラケットにボールが接触したまま動いているのです。この事実をイメージして練習していけば、今まで以上にボール コントロールが良くなるかもしれません。

▲ 目次へ