Mewon #TS002
<¥2,240,000>税別価格
編集発行 株式会社 エスアイエス

東京都文京区千駄木5−42−5

GEM TS208 <アンビエント>

 久々にオーディオの“魔力”を感じた瞬間であった。

私は、これからいったい何組のGEMを導入することになってしまうのか・・・

 今回導入したのは、GEMのTS208である。このように書くと、“なーんだ”と思われたかもしれないが、使い方が通常とは異なり、GEM TS208を“アンビエント”として利用しようというものである。

初めてこの話を聞いた時は、あまりの突飛な話に、こんな高価なツィータをアンビエントに使うとは、はっきり言って正気の沙汰でないと思った。普通の感覚では、こうした発想すら思い浮かばないと思う。ただ、いったんその効果を体験すると、もうこれなしではいられない程の魔力的な再生音の変化に、ただ驚くばかりである。

最小のシステム構成としては、メインのスピーカにフロント用とアンビエント用の2組のGEM TS208を追加するものであるが、さらにアンビエント側の数を増やすことで拡張が可能である。聞けば、すでに実施されている方の中には、4組のGEMでシステムを構成されている強者もいらっしゃるらしい。

このように書いてもあまり実感がわかないと思うので、以下の図と写真を見ていただきたい。写真は拙宅での調整が完了した状態のものである。ちょうどフロントからリスナーに向けたGEM TS208がフロント用、壁面に向け設置しているGEM TS208がアンビエント用となる。

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今回の導入劇については、前年の東京インターナショナルオーディオショーでANAT?の奏でる音を聴いた事に端を発する。

私のメインスピーカは写真にあるとおりAudioMachinaのPure Systemであるが、ANAT?を聴き、その高域の繊細でありながら力強く美しい音を体験し、序々に不満を感じ、限界を感じるようになっていた。

Pure Systemは、16cmのウーファーをフルレンジ動作させ、高域にホーンツィーターを、低域にサブウファーをプラスした形となっているが、高域部分が他の帯域に比べ弱く、しなやかで美しい音ではあるが、力強さや“フワッ”とした音場がなかなか得られないのである。

その後、CH PRECISIONのD1を使いはじめ、今年6月にはC1を追加し、ソース側のクオリティが“グ―ん”と向上し、より一層スピーカの能力に限界を感じるようになり、そろそろ交換の時期かと考えていた。ちょうど、ANAT?のデモをSISで行っていたので、試聴しにSISに出向くことにした。

試聴した、ANAT?の再生音は素晴らしいもので、高域の繊細さ、エネルギー感においてPure Systemを大きく引き離していた。ただ、音触がかなり違い、Pure System自身を大変気に入っていることもあり、なかなか結論がでないまま悶々としていた。

さて、どうしようかと考え、気になっているのは高域部分なので、その部分を改善すれば良いのではと思い、そういえば、小島さんが“GEMのTS208をアンビエントとして使うと効果があるよ”と言っていたのを思い出した。

話を聞いたときは、Pure Systemの上にも乗っけられないし、以前のSPでGEM TS208を使用し、最後にはメインのツィータと音が合わず売却した過去もあり、当時はあまり興味を持たなかったが、たまたま、SISに中古のGEM TS208があり、自宅で試聴して、効果がなければ、再度ANAT?への移行を本気で考えればいいやと軽い気持ちで試すことにした。

翌日にはGEM TS208が届き、フロントに一組を追加し、リスニングポイントに向け設置し、簡単なレベル調整を行い、1曲聴いてみる事にした。意外や意外、この段階でPure Systemに抱いていた不満な箇所はほぼ改善されており、フロントだけで、ここまで効果があるのであれば、もっと早く追加してれば良かったと思った。

フロントでの効果に気をよくし、アンビエントとしてもう一組のGEM TS208を追加することにした。こちらも簡単なレベル調整を実施し、アンビエントは反射音をきくので、どの角度で壁面にあてるかが重要になるかと思い、角度を大まかに探っていくが、なかなかここだと思う角度が見つからない。思い切ってググッと中央よりに振ったところで、左右の音場がパーッと広がる角度を見つけることができ、とりあえずその場所に決め本格的な試聴に入ることとした。

最初は、いつものカルミニョーラの四季を聴くが、その効果は部屋を演奏会場に一変させてしまう程の音場となって現れてくる。音場の奥行感が増すことは、ある程度、予想していたが、それよりも、アンビエントを加えることで、音場の隙間を埋め尽くしていき、演奏をしている場を見事に再現するのである。

そして、カルミニョーラのバイオリンは美しいエコーを伴いながら、“ポカリ”と立体的な定位を見せ、しばらく“うっとり”と聴いていたが、序々にメインのSPと合わない部分や、低域がブーミーになっている点、高域が上ずったりしている事に気付き、そう簡単にはいかないかと、角度やレベルを再度調整するがなかなかうまくいかない。

試しに、フロントだけにしてみると、こうした症状は出なくなるものの、一度、アンビエントの効果がもたらす立体的な音場を体験してしまうと、もう後には戻ることができない。そこで、SISにヘルプを出し、調整の“コツ”を聞くことにした。内容を確認していくと、どうやら拙宅では、“レベル”が高すぎることが原因みたいだ。

原因が判明したので、様々なディスクを聞きながらレベル調整を行い、さらに、設置場所の細かい修正を加えていく・・・何度も、もうこれで良いと思ったりもするが、どこかで違和感が出てしまう。調整から5日目くらいでようやくコツが掴め、序々にメインとのつながりにも不自然さがなくなり、音がまとまり始め、10日ほどで調整を終えることが出来た。

早速、カルミニョーラの四季を聴く・・

序奏が終わり、カルミニョーラのバイオリンとなるが、表情はより細やかになり、音場は立体的あふれるものとなり、調整前に見せた“ポカリ”でなく、“ポッカリ”と強烈な実在感となり現れ、疾風のごときスピードで迫ってくる。

私は今まで、音場と実在感(音像)は両立しないものなのだと、それがオーディオの定説だと思っていた。当初、アンビエントを追加することで、音場が豊かになることは、想像していたが、音場が豊かになり立体感が増すことで、音の実在感がこれほどまでに向上するとは思ってもみなかった。今までに、これほど豊かな音場を形成しながらも、実在感あふれる再生音を体験した事が無い!!!!

例えば、“THE ALL STAR PERCUSSION ENSEMBLE”の中にハッペルベルのカノンが収録されているが、この中で、長さの異なる金属棒を横に並べたウィンドチャイムを奏でる部分がある。アンビエントを追加して聴くと、金属棒の一つ一つの動きが明確になり、まるで部屋の中で実際に演奏されているのではと錯覚する程の実在感を得ることが出来る。

アンビエントが無い状態でも、フロントのGEM TS208の効果か、十分美しい再生音を得ることができるが、アンビエントを追加した音と比較すると、音の実在感が薄くなり、平面的な音場となることで、音楽が動かなくなり、聴いていてもワクワクしないのである。

又、ムラビンスキー指揮のチャイコ4番では、先ほどの透明でクリスタルを思わせるような音場から一変し、冒頭のファンファーレでは濃密でむせ返るような音場に表現を変えてくる。アンビエントを追加することで、音場の変化度合は今までと比べようの無いものとなる。

その証拠に、冒頭の管楽器によるファンファーレが終わり、その後、弦楽器による第一主題となるが、先ほどの高さのある、少し幅の狭い音場から一変し、一気に両翼まで広げ、より前方に張り出してきて、実際のオーケストラの配置に近い形での音場を形成してくるのである。今まで何度も聴いてきたが、このような音場の変化に気付いたのは初めてである。アンビエントを追加することで、音が立体化し、今までの音場を聴くといった感じから、音場を耳で視るといった感じに変化するのである。

さらに、冒頭のファンファーレの部分では、最初、左側のファゴットとホルンにより演奏され、その後、右側に位置するトランペットに引き継がれていくのだが、アンビエントを追加すると、強烈な実在感のもと、一体感を持ちながら同一の空間で音を引き継いでいく感じが見事に表現される。試しに、アンビエントをはずすと、実在感や、つながりが希薄になり、音の一体感がなくなってしまう。

その後、展開部となるが、普通、強奏に向かっていくに従い、多少なりとも、音が希薄になったり、うるさくなったりするものであるが、そういった危なげな気配は微塵もなく、逆に強奏になるに従い、実在感を高めながら、さらに音のエネルギーをどんどん高めていくのである。12分過ぎには、劇的なクライックスを迎えるが、それまでのエネルギーを一切のリミッターを外したかのように、恐ろしいまでの瞬発力と実在感をもって放出してくる。

こうした、エネルギーを持った実在感のある再生音を奏でるスピーカも少なからず存在するが、それらの再生音と大きく異なるのは、圧倒的な音場の透明度とその立体感にあるといって良い。事実、クライマックスになっても、音場は全く崩れる様子をみせず、立体的な定位をみせながら、渾然一体となりながらも、細部を明確に描き出してくる。

当初はPure Systemの欠点を補う事を目的として導入したGEM TS208ですが、得られた効果は、想像を絶するものであり、久々に自分のオーディオシステムのブレークスルーを果たせたと思っています。実際のところ、このアンビエントを加えてから、オーディオで音楽を聴くのが楽しくて、楽しくてなりません。でも、これはあくまで、最小構成でのインプレです。

SISの角さんからは、GEMを増やしていくことで、音楽性がどんどん高まっていくと聞き、今は、さらなるGEMの追加のことで頭が一杯です。

現状は、センタ−に向けアンビエントを追加していますが、逆に右図の様に、センタ−から外向きにアンビエントを追加することで、今まで以上の音の広がりを得ることができるのではと考えています。

最後に、調整は難しく、根気のいる部類に入りますが、新品を購入すると製作者の入江さんが自宅まで調整を実施してくれるサービスもあるので、調整に自身ない方はこちらを利用されれば良いと思います。

~皆様のオーディオライフの一助になれば幸いです。~
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