開環重合 環を切るエネルギーはエントロピーも大切


開環重合とは、文字通り環が開くことで重合が進む反応様式のことを指します。
広い意味では付加重合になり、二重結合も、二員環が開くことで反応が進む開環重合ともいえます。



環が開くには、どこか環の中に切れやすい部分が必要です。
多くの場合はヘテロ原子や、C=C二重結合のような部分が切れます。
電子が偏ることで切れやすくなるので、多くはイオン重合で進行します。
また、開環重合でできたポリマーの特徴として、鎖の中に官能基を入れることができます。




二重結合への付加重合の場合、二重結合が一つ減り、単結合が二つ増えます。
二重結合のπ結合はσ結合よりも弱いので、単結合が二つあるほうが二重結合が一つよりも安定になります。
このときは、全体のエネルギーは負になります。
しかし、開環重合では結合の種類は変わりません。
開環重合が進行するためには、環のひずみが大きな、エンタルピーが大きな分子か、分子の運動が妨げられている、エントロピーが負の分子である必要があります。



環状エステル(ラクトン)

環状エステルの反応は、四員環、五・六員環とそれ以外では反応性が変わります。
五・六員環では環が安定に存在し、反応が進行しません。
多員環では、活性種がまずカルボニル基へ攻撃し、エステル結合を切ります。
開始剤に金属アルコキシドを使うと、重合した後の成長末端もアルコキシドです。
同様の反応を繰り返し、アニオン重合で反応が進行します。




しかし、ポリマー自身にもエステル結合があり、自身を攻撃してしまうことがあります。
この現象をバックバイティング(Back-biting)と言います。
この反応は可逆的です。
環状ポリエステルか線状ポリエステルのどちらが熱力学的に安定かによって、反応が進むかが決まります。
四員環の場合は、C-O結合のほうが切れやすく、カルボキシラートが成長活性種となります。


環状エーテル

環状エーテルの反応は、酸や塩基を使って環を開き、重合させることができます。
酸を使うと、オキソニウムカチオンが生成し、これが成長末端になります。
ここで使う酸は、鎖状のものを切る酸よりも弱い酸で反応します。

カチオン重合で反応が進みますが、鎖状エーテルに求電子的にバックバイティングを起こすため、うまく高分子を作ることが困難です。
天井温度が低く、平衡重合になります。
エチレンオキシドを用いた場合、一つ前のエーテルが活性末端を攻撃し、ジオキサンが生成します。

逆に、塩基を用いると、成長末端はアルコキシドになります。
鎖状エーテルは電子が多く求核剤と反応しないため、バックバイティングが起こらず、長い鎖を作ることができます。


イモータル重合

金属アルコキシドが成長末端になったときの成長中に、アルコールを加えても反応は止まるとは限りません。
生成した新たなアルコキシドが再び反応します。
しかも、生成したものがどちらもアルコールとアルコキシドなので、可逆反応になる可能性もあります。




プロピレンオキシドをポルフィリン錯体を使って重合させている中にメタノールを加えると、連鎖移動が起こります。
しかし、この反応は可逆なので止まりません。
この反応速度が成長速度よりも速いため、分子量分布が狭くなります。
リビングラジカル重合のようなドーマント種とアクティブ種を交換し合う、イモータル重合となります。


環状アミン

環状アミンを重合させるときは、塩基性、求核性が強いのでカチオン開環重合で進みます。
アンモニウムイオンにほかの環状アミンが攻撃し、開環反応が進めばポリマーになります。




環状エーテルのカチオン重合と同様、成長末端のアンモニウムイオンとポリマー鎖内のアミノ基と反応することもあります。
アンモニウムイオンの隣の炭素をほかのポリマーが攻撃すると、第三級アミンができ、そこで枝分かれのある構造が出来上がります。





オキサゾリンは、カチオン機構により異性化した構造ができます。
窒素の不対電子がカチオンと反応しますが、モノマーは酸素の隣の炭素を攻撃します。




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