海底軍艦

1963.12.22併映・香港クレージー作戦
94分 カラー 東宝スコープ


スタッフ
製作     田中友幸
監督     本多猪四郎
特技監督   円谷英二
監督助手   梶田興治
脚本     関沢新一
原作     押川春浪
撮影     小泉一
音楽     伊福部昭
美術     北猛夫
録音     上原正直

−特殊技術−
撮影     有川貞昌 富岡素敬
光学撮影   真野田幸雄 徳政義行
美術     渡辺明
照明     岸田九一郎
合成     向山宏
監督助手   中野昭慶

キャスト    
旗中進    高島忠夫
神宮寺真琴  藤山陽子
伊藤刑事   小泉博
楠見     上原謙
西部善人   藤木悠
海野魚人   佐原健二
神宮寺大佐  田崎潤
工作隊23号 平田昭彦
ムウ国長老  天本英世
ムウ国皇帝  小林哲子


ドリル最強伝説を生んだ
東宝空想科学映画の集大成!

 1966年生まれの私にとって最も最強で、最も燃えるものと言えば、猪木の延髄切りでもヤマトの波動砲でもなく、何はなくともドリルとパラボラである。このふたつがあればご飯3杯は軽くいけるし(?)、同世代の男でこのふたつに燃えないという人間を男とは認めたくないぐらいの勢いで今まで生きてきたといっても過言でない!(それは嘘。過言です。笑)で、そんなドリル最強伝説の中でも「世界3大ドリル」といえば、「サンダーバード」のジェットモグラ、「ウルトラマン」のペルシダー、そしてこの「海底軍艦」の轟天号で決まりだ。ちなみに次点は「ウルトラセブン」のマグマライザー、「宇宙戦艦ヤマト」のドリルミサイルなどが続くが、とにかくドリルが最強であることはご理解いただけたかと思う(笑)。で、そんなドリルがついた空飛ぶ万能戦艦が活躍するのが、この作品「海底軍艦」である。

 突如、海底の奥深く超科学文明を築いていた「ムー帝国」から突如宣戦布告を受けた人類。人類は抵抗を試みるが、あらゆる通常兵器もムー帝国の科学力の前には役には立たない。しかし、彼らがたったひとつだけ恐れていたものがあった。それが海底軍艦・轟天号である。轟天号とは終戦前夜、日本を脱出した元帝国海軍の潜水艦の権威・神宮寺大佐を中心に大日本帝国再興を果たすために密かに建造していた万能戦艦だった。が、あくまでも大日本帝国再興を目指す彼らは、人類全体の危機に力を貸してくれようとはしない。しかし、神宮寺の一人娘・真琴の必死の説得により心を動かされた大佐は、ついに人類の未来を掛けて轟天号発進させた! ここに火蓋を切られた一大科学攻防戦! はたして人類の運命は!
 
 そんな空想科学映画(SF映画ではない)の王道物語を、特撮を駆使した一大科学攻防戦見せ場に描いたこの作品。魅力といえばやはり主役メカ・轟天号の格好良さにつきる。いかにも兵器という無骨なフォルムのリアリティ。御大伊福部昭の重厚なテーマ曲をバックに、ドッグに停泊する轟天の勇姿は東宝特撮屈指の名シーンだろう。このシーンはビデオで見てもなかなか迫力が伝わらないのだが、劇場の大スクリーンで見ると圧倒的な迫力で、男の中に潜む少年の心を揺さぶることは間違いない。またドリルの作動時のドリル尖端の動きや、飛行時、地中潜行時などの形態変化などもなかなか凝ったギミックで、まさに主役メカにふさわしい存在感を見せてくれる。

 ちなみに、この「海底軍艦」。明治時代の作家・押川春浪の同名小説を原作としているが映画とは全くの別物だ。原作での主役メカも決して空飛ぶ万能戦艦ではなく、まさに「海底の軍艦=潜水艦」である。とはいえ潜水艦がまだ実用化される前の話なので、明治の感覚ではやはり夢の超兵器だったとは思う。ま、なんのことはない和製「海底2万マイル」だと言ってしまえばそれまでなのだが…。で、肝心のドリルはというも原作にもちゃーんとついているのだ。もっともそのドリルは敵艦に体当たりをして穴を開けるためについているもので、ノーチラス号や実在の戦艦や潜水艦についているものに近い。そんな轟天を空飛ぶ万能戦艦にしたのが、やはりセンスだと思う。

  主演は「キングコング対ゴジラ」に引き続きの「極楽コンビ」高島忠夫と藤木悠。軽快なやり取りが実に面白い。残念ながらこのコンビは本作と「キンゴジ」の2本だけだが、もっと様々な作品でもコンビを組んで欲かった東宝の名コンビと言えるだろう。そして、この作品に深みを与えた人物として忘れてはいけないのが、神宮寺大佐を演じた東宝の名優・田崎潤だろう。

 東宝ファンにはお馴染みのこの人だが、腹黒い社長、古風で粋なヤクザの親分、善気のいい飲み屋の親父などなど、善人から極悪人まで実に多種多彩な役をこなしてきた人だ。田崎潤の魅力といえば、やはりその落ち着いた中にも強い意志を秘めているというその存在感だろう。なんというか「大人の中の大人」みたいなオーラを持つ人で、「この人についてゆけば大丈夫」という安心感を見るものに与えてくれる人なのだ。この作品でも、そんな落ち着いた中にも強い意志を持つ神宮寺大佐をもの凄い存在感をもって演じている。彼の代表作といっても良いだろう。特に神宮寺の一人娘・真琴(藤山陽子)が、彼を説得するシーンはこのドラマを一層厚いものにしている。

ちなみに、このシーンは藤山陽子にとっても一世一代の名シーンといって良く、いつもは影の薄いお嬢様役ばかりで、バラエティ番組に例えるとアシスタントの様なスタンスの役ばかりの彼女にとって、珍しく血の通った人間を演じたという役だったと思う。

 ま、とにもかくにも東宝がもっとも充実していた時代の底力が全編に感じられる1本と言える作品であることは間違いないだろう。

「東宝見聞録」トップに戻る


トップページに戻る