大冒険

1965.10.31併映・喜劇駅前大学
107分 カラー 東宝スコープ


スタッフ
製作     藤本真澄 渡辺晋
監督     古沢憲吾
特技監督   円谷英二
監督助手   長野卓 砂原博泰 大森健次郎 小林理
脚本     笠原良三 田辺靖男
撮影     飯村正 小泉福造
音楽     広瀬健次郎 萩原哲晶
主題歌   「大冒険マーチ」 「遺憾に存じます」
作詞     青島幸男
作曲     萩原哲昌

キャスト    
植松唯人   植木等
谷井啓介   谷啓
谷井悦子   団令子
花井部長刑事 ハナ肇
乾刑事    犬塚弘
市橋刑事   石橋エータロー
加倉井編集長 桜井センリ
石崎     安田伸
森垣久美子  越路吹雪
首相     森繁久彌
日銀総裁   柳永二郎
大蔵大臣   高田稔
通産大臣   北龍二
警視総監   佐々木孝丸


あのスピルバーグがパクッた!?
痛快娯楽映画の集大成!

この作品のスゴイところはなんと言っても、娯楽映画のありとあらゆる要素が一本の作品の中にたたき込まれているところではないだろうか? アクション、特撮、戦争、サスペンス、ミュージカル、コメディ、恋愛とおよそ考えられる娯楽映画の素材がすべてがそろっている集大成と言っても過言でない! が、そんな色とりどりの素材がひとつのまとまりを見せているかというと、そんなことは全くなく「デタラメにも程がある」という作品で、マジメな映画ファンなら怒ってしまうような滅茶苦茶な映画なのである。

が、同時にここまで強引な勢いというものを持っている映画を私は他に知らない。理屈なんかはどうでも良い、勢いがすべての古澤突撃演出の真骨頂が思う存分堪能できるのがこの作品なのではないだろうか? デタラメにも関わらず文句無く面白いのである。そしてその勢いは海外にまで伝わり、後にスピルバーグがこの作品からインスパイアを受け、あの大ヒット作「レイダース」を製作したという話はあまりにも有名である(ウソです。とはいえ敵がナチスであること、馬を使ったアクション、Uボートで敵の本拠地に乗り込み処刑されそうになるなど類似点は極めて多く、その可能性も完全には否定できない)。

さて、この作品にはひとつ信じられない話がある。というのも、この作品の原案はなんとあの新藤兼人なのだ!(ノンクレジットだが…)クレージー作品とはおよそ縁のないあの社会派のマジメな監督兼脚本家がいったいなぜ? こんなデタラメな映画のどこが新藤原案なんだと思うだろうが、田波靖男の回想録によると、どうやら事実らしい。

話のいきさつを順を追って説明しよう。この作品が企画された当時はまさにクレージーキャッツの絶頂期。しかも1965年は結成10周年に当たる年でもあった。記念作品が企画されるのは極々自然な流れだった。「従来のクレージー映画の枠を大きく越えるものを作ろう」という発想の元、プロデューサーの藤本真澄は動き出した。が、彼はこの企画に少し気合いが入りすぎていたようだ。大作の風格を出そうとその原案を事もあろうに新藤に発注してしまったのだ。(古澤監督談によると、脚本家と二人呼ばれて「渋滞中の道路を1人スイスイ行くような気持ちの良い作品を作れ」と言っているので、この脚本家が新藤だったんだろう。ま、どう考えても古澤憲吾と新藤兼人が馬が合うとは思えないが…)

で、約束通り新藤は原案をあげてきたのだが、それは社会派らしい「ヒーローが偽札偽造団を追いつめる007ばりのマジメな作品」だったそうだ。そしてその原案はクレージー映画常連の脚本家・笠原良三へと手渡された。が、この新藤が原案を書いたというのが、笠原の逆鱗にふれることになる。笠原はそれこそ娯楽映画一代で生きてきた人間。にもかかわらず原案を畑違いの新藤に託したことが面白くなかったのである。平行して何本もの脚本を抱えていた笠原はやる気もなくし「大冒険」にはまったく手をつけずに時間だけが過ぎていった。結局クランクイン直前になっても1行も書いていなかったそうである。

しかし、これにあせったのは藤本真澄。急遽、田波靖男を呼び寄せ二人の共同作業で脚本を書かせる作戦に打って出た。やる気のない笠原ではあったが田波の参加で渋々腰をあげ、新藤原案から偽札偽造団がコピー機を使って偽札を作るというアイデアだけを残し、1晩でなんとか新たなストーリーをでっち上げたという。その後とにかく時間がないので、笠原が前半、田波が後半という分担で1稿を書き、まとまりのない部分は第2稿で修正を加えることでつもりで二人は書き上げた。が、時間はあまりにも無さ過ぎた。結局、やる気のない笠原と、なんとか形にと焦っていた田波がでっち上げた第1稿のまま古澤監督の元にいったっきり、修正の加えられないままクランクインしてしまったという。

ま、こんないきさつから、この作品はクレージー作品でも類を見ないまとまりのなさとなってしまったのである。が、そこは古澤監督。「映画の出来の善し悪しの70%は脚本で決まる」のが常識の映画の世界の中、かくもデタラメな脚本を逆手に取り、逆に勢いに変えてしまったのだから! そんなことのできる監督は世界でもこの人ぐらいなもんだろう。とにかくその逆境に爆発したパワーは作品全体にほとばしっているのだ! 

当然、時間がないので細かいことまでは気にしない。神戸のシーンにも関わらず、誰が見てもわかる横浜山下公園でのロケするなんぞ朝飯前。同じく神戸にあるという設定の「ホテルメリケン」の外観は、これまた有名な「赤プリ旧館」。しかも「赤坂プリンスホテル」の看板まで入れている。製作者が妙に理屈っぽくなってしまった現在なら、確実にリテイクを言い渡されるだろうが、そんなことを気にしてたら映画なんか撮ってはいられないのだ。その結果、古澤監督曰く「1カット1カット俺の魂がたたき込んである」という素晴らしい作品となった。まったく「無責任男」の話を地で行くような話だが、マイナスの要素さえもプラスに変えるその勢いと、細かいことは気にしない男らしさは、是非とも見習いたいものでないか!! (ホントか?)                                                                                        「東宝見聞録」トップに戻る                 


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