美女と液体人間

1958.06.24
87分 イーストマンカラー 東宝スコープ


スタッフ
製作        田中友幸
監督        本多猪四郎
特技監督      円谷英二
監督助手      梶田興治
脚色        木村武
原作        海上日出男
撮影        小泉一
音楽        佐藤勝
美術        北猛夫
録音        三上長七郎

−特殊技術−
撮影        荒木秀三郎 有川貞昌
美術        渡辺明夫
照明        城田正雄
合成        向山宏

キャスト    
新井千加子     白川由美
政田        佐原健二
富永        平田昭彦
宮下刑事部長    小沢栄太郎
真木博士      千田是也
内田        佐藤允
三崎        伊藤久哉
花枝        北川町子
管理人のおかみさん 中野トシ子
田口刑事      土屋嘉男
峯子        白石奈緒美


さまざまな疑問が残る
変形人間シリーズ第1弾 !

のちに「電送人間」「ガス人間第1号」、さらにその発展型の「マタンゴ」を生むことになる東宝変形人間シリーズの第1弾。ま、もっともこの前に「透明人間」があるにはあるんだが、こっちは古典的なネタのもとにしているので、東宝オリジナルという意味の「変形人間シリーズ」第1弾と思って欲しい。

実はこの作品20年ほど前に浅草東宝や池袋東宝で特撮オールナイトが月1ペースで上映されていた頃、何度も見てはいたんだけど、「まともに」観たのはつい最近のこと。この「まともに」っていうのがポイントで、その頃の上映は「まとも」でなかったのだ。どう「まとも」で無かったのかというと、なぜか途中のロールが入れ替わっていたりして話の前後がグチャグチャなっていたのである。しかも浅草でも池袋でも同じプリントが流通していた。いったいなんでそんなことが起こったのかはわからないけど、そんなわけで最近まで「観たことはあってもストーリーはよくわからない」という映画だったというわけ。おそらく20年ほど前に同じように特撮系のオールナイトに通っていた方は私と同じような経験をされてた人も多かったんではないだろうか?

で、まともに観てみると…。話的にはどうってことない作品だったな。とはいえ、いつもの本多特撮路線よりも岡本喜八あたりが撮った東宝アクション的な雰囲気が強く醸し出されているのは面白いじゃないかとは思った。恐らくそれも、佐藤允が悪役で出ている事が一番の要因とは思うが…。ちなみに、佐藤允ファンにとっては、初めて重要な役に抜擢されのちのスターへの道を築いた重要な作品といえる。忘れてならないのが冒頭に出てくる相合い傘のカップルの男は夏木陽介。こちらは出世前のチョイ役です。

また、音楽も佐藤勝が担当していることも「東宝アクション」テイストを強くさせている。ただ、音楽に関しては気になる点もある。たとえば核実験の気持ちの悪い映像から始まり、謎の漂流船に漁船が近づくという不気味なトーンで映画が始まるにも関わらず、その雰囲気を、まるで運動会のように軽快なメインタイトル曲がぶちこわしていたりいるのは、いかがなものか? ちょうどこの感じは岡本喜八の「どぶ鼠作戦」で、仲間を助けるために、中谷一郎が単身死を覚悟して八路軍に立ち向かう悲痛なシーンで、場違いな軽快なマーチが流れるのにも似ているな。佐藤勝は時々こういう「はずした音楽づけ」をするんだよね。なぜか。

ストーリー展開的にはギャングたちの銀行強盗で手に入れた金を巡る争いと、同時並行で液体人間出現の事件が語られ、それがやがて繋がってゆくというもんなんだけど、全体的にはもっさりまったりとした展開であまりいただけない。が、その分クライマックスの液体人間殲滅戦は豪快である。なにせ下水道にガソリンを流し込み、液体人間を道連れにまるまる街の一区画を焼いてしまうんだから…。

おいおい待てよ! ホントにそれで良いのか? 液体人間はそのエリア外にも潜伏しているかもしれないし、いくら人類の脅威でもある液体人間を殲滅する目的とはいえ、街を焼くのは乱暴すぎないか? いやいや、もっとそれ以前に液体人間を焼いてしまって良いのか? という疑問も残るぞ。たとえ液体人間は接触した者を同化させ液体人間にしてしまうという危険性はあってもだよ。液体人間になっても人間だった頃の記憶や思考は残っているみたいだし、不本意ながら液化してしまった善人だって数多くいたはずだ。作品の中ではそんな不幸にも液体人間になってしまった人たちの人権はまるっきり無視されたまんまである。そうそう、あの液体人間の中には善良な刑事だった田島義文もいたはずだぞ! いいのかホントに? あの街の住民たちの補償は?

にもかかわらず、この作品は東宝特撮でお馴染みの科学者の説教というか警告でもっともらしく締めてしまう。「人類が核戦争で滅んだ後この地球を支配するのは液体人間かもしれない」って千田是也演じる科学者はいってるけど説得力ないぞ。その前にいろいろ考えることあるだろう! そんな大上段から発言されても…。うーん。さまざまな疑問を残したまま終わってしまうのだった……。

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