名曲「ゴマスリ行進曲」が鳴り響く
日本一の男シリーズ第3弾!
「色男」「ホラ吹き男」に続く、植木等主演「日本一の男」シリーズ第3弾。前作の「ホラ吹き男」と構成が酷似しているため何かと比較される両作品だが、どちらも傑作であることは間違いない。私個人としては、伸び伸びした雰囲気が全編に流れる「ホラ吹き男」の方が好きだが、作品を貫くパワーとしては本作「ゴマすり男」の方が上てないだろーか。監督は古澤憲吾。この作品が製作された1965年といえば古澤監督はあの「大冒険」も演出した年。監督デビュー4年目の最も脂がのりきり、ボルテージが高かった頃の作品である。
さて、この「ひたすらゴマをすって出世してゆく男の物語」が、どれくらいボルテージが高かったのかというと、オープニングの植木登場のシーンからして古澤節が炸裂なのだ。バスから突き飛ばされ転げ落ちてくる植木。「危ねえな! 気をつけろ!」と車掌(当時のバスはワンマンじゃなかったのだ!)に怒鳴りつける。が、ハッキリ言ってこの演出にはまったく意味がない。別に普通にバスを降りてきても問題のないシーンなのだ。ただ、そこにあるのは「勢いとパワー」だけである。そうまさにこの「意味はないけど勢いはある」これこそが古澤演出の醍醐味ではないか!
その後、実家で両親と、就職が決まったなんていう軽いやり取りがあって「ゴマもすりようじゃ出世の近道。お前にはでっかいゴマをすり当ててもらいたいんだよ」とありがたいお言葉を父親からいただき「ゴマすりなんて能なし野郎のすることさ。俺は絶対にゴマなんかすらないからね」と啖呵を切ったところでメインタイトル。私としてはこのタイトルもこの作品の見所として是非とも上げておきたい。疾走する新幹線を空撮望遠でカメラは追う、が新幹線の上り下りが交差した瞬間、ドカーンと大俯瞰の風景までズームアウト、そしてこれまたドカーンとでっかいタイトルが飛び出してくる。言葉では伝わりづらいが、とにかくドッカンドッカンくるシリーズ屈指のパワフルさ誇るタイトルなのだ。
タイトル後はしばらく植木の新入社員初日の様子や、お馴染みのヒロイン・浜美枝の出会いなんかが展開してゆくがこの辺は少々退屈ではある。ま、ヤナセが全面的に撮影協力してくることもあって、カルマンギアなど当時のクルマがいろいろ登場するので、クルマ好きならそれなりには楽しめるのだが…。で、結局現実の壁にぶつかり、わずか一日で「絶対ゴマをすらない」という決意は挫折してしまう。父親の「ゴマもすりようじゃ出世の近道。お前にはでっかいゴマをすり当ててもらいたいんだよ」という言葉が彼の頭に去来する…。「よーし!」彼の表情に決意の色が浮かび立ち上がった瞬間、シリーズ屈指というか、クレージー映画屈指のシーンが登場する。そう名曲「ゴマスリ行進曲」の大ミュージカルシーンである。
噴水まである豪華な巨大ステージを、所狭しと軽やかにステップを踏みながら歌い踊る植木。青島幸男の詞といい萩原哲晶の曲といい文句無く素晴らしく、植木の豪快な歌いっぷりを見ていると、従来のゴマすりという後ろ向きで陰湿なイメージをガラッと覆し、まるで男らく正々堂々とした行為のような気さえするくらいの説得力があるのだ。まさに植木のエンターテイナー面目躍如のシーンであるとともに、そのパワフルさは圧倒的といってもいいだろう。私はこのシーンを初めて見た時人生観が変わるほどの衝撃を受けた! つまらんプライドは捨てても何事も堂々とやれば、それはそれで男らしい事を私が知った瞬間といってもいい。
その後の展開は詳しくは書かないが、お馴染み人見明の係長、犬塚弘の課長、有島一郎の部長にゴマをすりまくり最終的に彼が所属するグループ会社の大社長にたどり着く迄の展開もパワフルそのもの。「ホラ吹き男」と違い仕事で功績を積んで認められていくという納得感があるわけでなく、とにかくゴマだけすってステップアップしてゆくので、余計にパワフルさが強調されているのかもしれない。もちろん、最後に待っているのはお約束の大出世。痛快で豪快、作品の丁寧さは少々欠けるがとにかく一級品のパワーを持っているということは間違いないだろう。
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