独立愚連隊

1960.10.30併映・若い恋人たち
108分 白黒 東宝スコープ


スタッフ
製作      田中友幸
監督      岡本喜八
監督助手    竹林進
脚本      岡本喜八
撮影      逢沢譲
音楽      佐藤勝
美術      阿久根厳
録音      渡会伸 下永尚

キャスト    
従軍記者・荒木 佐藤允
大久保見習士官 上村幸之
石井軍曹    中谷一郎
大隊長児玉大尉 三船敏郎
橋本中尉    中丸忠雄
酒井曹長    南道郎
山岡少尉    瀬良明
ヤン亜東    鶴田浩二
妹ヤン小紅   上原美佐
慰安所立花   谷晃
慰安婦トミ   雪村いづみ
慰安婦花子   中北千枝子
慰安婦あけみ  横山道代
慰安婦梅子   塩沢とき
中村兵長    江原達怡


「喜八センス」荒野に炸裂!
掟破りの痛快戦争活劇!!

「花札に明日の命を賭ける地獄の守備隊!」というのが、この作品のキャッチコピーだが(上のポスター参照)、実際の作品はなんか微妙に違うような気がするが……ま、いいだろう。お話的には弟の謎の死を不審に思った主人公が軍隊を脱走、「独立愚連隊」と呼ばれるならず者部隊と行動を共にしながら、その真相を突き止めるという痛快戦争活劇。全編に岡本喜八監督のセンスが炸裂し、けれん味たっぷりのセリフ回しや、一癖も二癖もあるキャラクターの配置、短いショットを積み重ねてみせる独特のリズム感など映画の魅力たっぷりの作品だ。

特にキャラクターの面白さは群を抜いていて、当時、和製リチャード・ウィドマー クと呼ばれたニヒルなくせに妙に人を食ったところのある主人公はもちろんのことだが、他の映画なら「男の中の男」を演じる東宝のトップスター・三船俊郎演じる気の狂った大隊長なんかはホントにスゴイ! 

「お前らそれでも金玉ついてんのかぁぁぁぁぁ!」「ついてるわけないよ。女だもの。パカだなぁ〜」なんていう中北千枝子演じる慰安婦とのやりとりなんて、もう最高! 他の監督なら三船を絶対にああいうふざけた使い方はしないはずだし、三船以外のトップスターなら、彼の役を引き受けなかっただろうな。ま、これも三船の実質的なデビュー作「銀嶺の果て」(谷口千吉監督)からという、三船と岡本監督との深いつきあいあったからこそなんだろうけど。この頃はまだフォース助監督だった岡本監督の部屋に、ポッと出の新人だった三船が居候していたこともあるらしいし…。ともかくあの役は、三船だったから面白かったわけだし、三船の懐の深さとも言えるだろう。逆にそんな三船をコメディリリーフに使ってしまう岡本監督のセンスは、やはり唸る他はない。うーむ。

忘れてならないのがパイプレーヤーの使い方のうまさで、馬賊の人をなめた爺いを演じる沢村いき雄のとぼけた味わいや、東宝チンピラ(役の似合う)俳優ナンバーワンの中山豊の粋がってるくせに情けない妙な兵隊など、他の監督だと出してくれないような魅力を引き出してくれるのは岡本監督ならではだと思う。

とはいえ、私が初めてこの映画を見たときは正直言ってびびった! 「こんなのアリ?」と思った。それまで私が見てきた日本の戦争映画と言えば「反戦」をテーマに、主人公やその仲間たちがむごたらしく死んでゆく姿を描き、エンディングでは「さだまさし」や「谷村新司」がその悲しみを感動的に歌い上げるといったものばかりだったからだ。やむを得ぬ事情があったにせよ日本兵が八路と撃ち合い死体の山を作るというのは、バリバリ憲法第九条教育を受けてきた私にとって、かなりの刺激的な描写だった。

だが、よくよく考えてみると戦争アクションっていうジャンルは洋画にはいくらでもある分野だし、インディアナ・ジョーンズがナチスを撃ち殺すのは良くて、それが日本兵だといけないなんて理屈もおかしい。「娯楽映画なんだからこれでもいいんだ!」とごく当たり前の事を気づかせてくれたのもこの作品である。

もちろん作品的に「戦争賛美」なんてことはかけらもないし、戦場にいるナイスな連中を描いたり、痛快な描写をするだけで「好戦的」というのもどうかしている。それになにより、岡本監督の実体験から来る軍隊という「上官の命令は陛下の命令と同じである=上官は神」式のバカバカしさや、理不尽さへの強烈な皮肉も感じる。そしてそれは戦時下の日本人が持っていなかったであろう「反戦思考」胸張って語られるよりもよっぽど真実味があるのではないかと思う。

でも、「じゃあ、こういう映画をもう一度作ろう!」と思っても、恐らく企画は通らないだろう。「好戦的である」という理由から…。それに「従軍慰安婦」の描き方も今の風潮では問題があるだろう。でも「慰安婦」の中には、この作品に出てくるように「戦争を利用して一旗あげよう」って奴もホントはいたんじゃないのか? むしろ、そういう事実を無かったかのようにして、悲惨な例ばかり取り上げるのは正しいことなのか? とも思う。もちろん戦争は絶対的な「悪」だ。が、その表現についてはもっといろいろあっても良いじゃないか! 「戦争」に限らず「差別表現」などでもそうなのだが、むしろ私はその「自主規制という名の言論統制」のほうがよほど「悪」を感じてしまうのだ。

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