日本一の色男

1963.07.13併映・喜劇駅前茶釜
93分 カラー 東宝スコープ


スタッフ
製作    安達英三朗 渡辺晋
監督    古沢憲吾
監督助手  長野卓 坂野義光 出目昌伸
脚本    田波靖男 松木ひろし
撮影    斎藤孝雄
音楽    神津善行
挿入歌作詞 青島幸男
挿入歌作曲 萩原哲昌

キャスト    
平均    植木等
氏家勇作  ハナ肇
佐野愛子  重山規子
麻田京子  中島そのみ
まん丸   団令子
谷田部長  谷啓
安井    安田伸
大塚    犬塚弘
佐倉    石橋エータロー
青木    桜井センリ
石狩熊五郎 由利徹
黒田有人  田崎潤
大島洋子  藤山陽子


日本一の男シリーズ第1弾!
最高傑作になるはずだったのに…

おしい!実におしい作品! というのが私のこの映画に対する一番の感想だ。一応説明しておくと、「ニッポン無責任シリーズ」の進化形「日本一の男シリーズ」第1弾にあたる作品。この作品から植木は「正体不明の無責任男」から「目的のため並外れたファイトで行動するモーレツ男」へと微妙な変化を遂げている。んが、この作品では次作の「ホラ吹き男」のようなモーレツさはなく、まだまだ「正体不明の無責任男」というニュアンスは残している。

で、なにがおしいかというと言うまでもなくラストである。まだ見ていない方のために詳しくは書かないが、あのラストさえなければ、間違いなくシリーズ最高傑作といえると思う。ま、有名な話だが書いておくと笠原良三(社長シリーズ)が書いた第1稿だとまったく逆のオチがついていたらしい。が、プロデューサーの判断での変更。たしかに、第1稿のオチだと、当時の倫理観としては「どうも…」ってことなんだろうけど。あのオチの変更でかなり普通の喜劇映画に成り下がってしまったことは否定しがたい事実だろう。

とはいえ、つまらないのかというと全然そんな事は無い。まず冒頭。とある女子高の卒業式から物語が始まる。乙女たちの清らかな「蛍の光」の合唱。「なんなんだ…このはじまりかたは…」と客が思い始めるくらいの長さはある…が次の瞬間ピアノが転調!植木が演じるところの教師・光等が突如バカ踊りをしながら「無責任経」を歌い始める! あー、もー死ぬかと思ったよ、笑いすぎて。そのタイミングたるや絶妙でほとんど居合抜きの世界である。観客は「椿三十郎」に切られた仲代達也のように、笑いが噴出して止まらない。で「クビだーっ!」清水元演じる校長にクビを宣告。「これまたありがたきお言葉…愛する生徒諸君バァイ!」卒業式が行われている体育館を飛び出す植木。「せんせーい!待って〜あたしも連れてって〜」植木を慕う女生徒たちが植木を追う!カメラが外に切り替わると無数の女生徒達が口々に叫びながら追いかけてくる!「いったい彼女たちに何をしたんだこいつは!」思った瞬間、カメラが青空にパンしてでっかく赤い文字でタイトル「日本一の色男」。もう最高!私はこんな見事なアバンタイトルを他に知らないっ!史上最強のアバンなのである!

で、タイトル明けから。また見事な調子で話が進んでゆくんだが、このままこのペースで書いていくと映画1本分まるまる書いてしまいそうなんでやめておく。マルセ太郎じゃないんだから…。ただ、このオープニングの話を聞いただけでもこの作品の素晴らしさは伝わるんじゃないだろうか。いや、よくよく考えてみると植木のとった行動に意味は無い、というより、別に学校を退職するんならするでもっと円満に辞めても…と思ったりもするんだが、そこは古澤演出。理屈じゃないのだ。

ほかに、印象に残ったシーンを書いておくと日比谷公園で「無責任一代男」を歌うシーン。途中、景気良く持っていたカバンをフレームの外に放り投げる。まぁ、ミュージカルシーンだし、この行動には何の違和感も無いんだが、そのあとそれを拾った人が、同じシーンの中でちゃんと植木に私に来てくれるのだ。どうということは無いシーンなのだが、不思議な気持ちよさを感じるシーンである。

それともうひとつ作品後半立ち寄った銭湯で「都都逸〜これが男の生きる道」を歌うシーン。ここも、何故か印象に残っている。当時の植木は30代後半。銭湯で気持ちよく都都逸うなるなんて、とても大人の粋である。「なんか昔の男のほうが今より大人だなぁ」と思ってしまうのだ。私もなにげに鼻歌交じりで小唄を口ずさめるような男になりたいものだ。ちなみにこのシーン何気に「黒澤作品」や「特撮もの」ておなじみの「ソロモン」こと広瀬正一も出演しているのでチェック。また、人見明の「バカ」もこの作品が最初である。

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