マタンゴ

1963.08.11併映・ハワイの若大将
89分 イーストマンカラー 東宝スコープ


スタッフ
製作     田中友幸
監督     本多猪四郎
特技監督   円谷英二
監督助手   梶田興治
脚本     木村武
原案     星新一 福島正実
       ウィリアム・ホープ・ホジスン
撮影     小泉一
音楽     別宮貞雄
美術     育野重一
録音     矢野口文雄

−特殊技術−
撮影     有川貞昌 富岡素敬
光学撮影   真野田幸雄 徳政義行
美術     渡辺明
照明     岸田九一郎
合成     向山宏
監督助手   中野昭慶

キャスト    
村井研二   久保明
関口麻美   水野久美
作田直之   小泉博
小山仙造   佐原健二
吉田悦郎   太刀川寛
笠井雅文   土屋嘉男
相馬明子   八代美紀
マタンゴ   中島春雄
同・変身途上 天本英世


カルト人気も高いホラーの傑作!
併映作品がこりやまたスゴイ!

ヨットで漂流し無人島に流れ着いた若者達の恐怖の体験を描いた和製ホラーの傑作。日本映画ベスト100にも選ばれるぐらいの人気の高い作品でもある。特に、脚本の完成度は高く登場人物のキャラは全員立ちまくっているし、そのセリフひとつひとつもエゴ丸出しの人間の本性も容赦なく描き出している。はっきり言ってあまり子供の頃にこの映画を見ると人間不信に陥るんじゃないかというような実に業の深い作品なのだ。せめて高校生ぐらいになってから観ることをオススメしたい。

いや、実際に冗談ではなくそれぐらい精神的にダメージの来る作品なんじゃないだろうか? ま、人間不信以外にもマタンゴ観てからトラウマで「キノコが食べられなくなった」って話も良く聞くし、キノコのグロテスクなイメージを上手に生かしている。そんな皮膚感覚でわかる恐怖っていうのは実にストレートに観る者の五感を刺激するしね。こりゃトラウマにもなるわって思うよ。

構成的にも上手で冒頭の久保明の独白から、一転あかるい太陽の下への回想へとつながる「つかみ」も見事。その後、漂流し無人島でのサバイバルが始まると、一見仲の良かった登場人物がつぎつぎと本性をむき出してゆくその課程もホントに丁寧に描かれていると思う。人間なんて一皮むけば良くとエゴの固まり、自分だけ良ければいいってところはあるからねぇ。健全で人の善意を全面的に肯定する東宝作品の中ではホント異色の作品ではあるけど、脚本的には今でも通用すると思う。ハリウッドでリメイクしたら大ヒットするんじゃないかとマジで思う。

脚本以外にも、さまざまな魅力にあふれるこの作品であるんだけど、やはり一番は役者の魅力だと思う。久保明、小泉博、太刀川寛、土屋嘉男、佐原健二、水野久美など、八代美紀以外はホントに芸達者! 昔の役者ってみんな上手かったんだなぁ。特に「毒婦」という言葉がピックリ来るような水野久美の禍々しいまでの色気は最高! 自らも「汚れ役」が多かったと語る彼女のキャリアの中でも最高ランクに位置する「汚れ」だもんね。

他にも一見モラリストでありながら、実はメンバー中最もトンデモない奴だった小泉博なんか、割と普段は誠実そうな役ばかりやっていただけに「やられた!」感じで、完全に観客の裏をかくキャスティングも見事。いつもはパッとした役をやらない太刀川寛もダメ人間の流行作家って役にピッタリとはまってるし。佐原健二もそれまでは「ラドン」をはじめインテリ+誠実+熱血ってイメージの役ばかりだったけど、この作品が転換点となって、後に「モスラ対ゴジラ」なんかでいい感じのイヤミな悪役やるようになったしね。ともかく、役者を語ればキリのないくらい。本多演出もそんな役者の個性を最大限に生かして引き出しの豊富さを感じさせてくれる。

そんな観る者に強烈な印象を与えるこの作品なのであるが、強烈といえば封切り時の併映が「ハワイの若大将」なのもかなり強烈だ。2本立ての一方ではヨットレースに青春をかけ、ハワイでヨットのクルージングを楽しむ若者を描き、もう一方ではヨットで漂流したエゴ丸出しの若者を描いているんだから、まるで「ヨットライフの光と影」というような2本立てなんである。当時の編成担当は「おなじヨットが出てくる海を舞台にした作品だから」という安直な気持ちでこの番組を組んだのだろうか? うーん。

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