クレージー作戦 先手必勝

1963.03.24併映・戦国野郎
96分 カラー 東宝スコープ


スタッフ
製作    渡辺晋 森田信
監督    久松静児
監督助手  木下亮 谷清次 津島平吉
脚本    池田一朗
撮影    玉井正夫
音楽    宮川泰 萩原哲昌
美術    清水喜代志
録音    増尾鼎

キャスト    
上田ヒトシ 植木等
花木ハジメ ハナ肇
安井真   安田伸
谷村啓太郎 谷啓
犬養弘   犬塚弘
佐倉千里  桜井センリ
石山英太郎 石橋エータロー
お勝つ   池内淳子
中山ミエ  中尾ミエ
大福権兵衛 加東大介
大福ふく子 馬野都留子
恵子    淡路恵子
山形屋龍平 柳家金語楼


世代交代の狭間に揺れる
クレージー作戦シリーズ第1弾!

「ニッポン無責任時代」「ニッポン無責任野郎」に引き続き東宝製作の植木等主演作の第3弾にして、クレージー作戦シリーズ第1弾! 植木等だけでなくクレージーキャッツというグループ全体を映画スターにしたいというナベプロ総帥・渡辺晋の野望も見え隠れする作品で、事実この作品からナベシン氏はプロデューサーとして映画製作に参加している。ま、そんな意欲作なんだけど面白いかっていうと、ハッキリ言って面白くない。しかし、なぜ面白くないかって言うことを考えると、逆にクレージーや植木の面白さってよくわかるという反面教師的な面もあるのではないかと私は思っている。

監督は久松静児。久松監督といえば「駅前シリーズ」の常連監督で、東宝喜劇の一翼を担っていた監督だ。ま、東宝的には全2本は若手の古澤監督にやらせたので、次はベテランで安定感のある作品をということなんだろうけど、監督が監督だけに、この作品クレージーらしくないのだ。松竹喜劇にも共通するような昔ながらの人情喜劇路線というか、日本の喜劇の王道のシチュエーションで笑わせ、人の情に訴えほろりとこさせるという「旧世代的」な作品になってしまっているのである。一方、植木やクレージーの笑いっていうのはシチュエーションコメディというよりはコントに近いギャグの笑い、どちらかというとテレビ的な「新世代」の笑いだと思う。それに痛快なサクセスストーリーとの組み合わせがクレージー作品の面白さだと私は強く思う。

ちょうどこの頃っていうのは、まさに旧世代の笑いから、新世代の笑いへと世代交代をし始めた「感覚の混乱期」だったんだろうな。そんな時期だっただけに、東宝も突然発生したような新感覚のクレージーの笑いの本質を、まだまだ理解していなかったんだと思う。1963年から64にかけての製作された作品っていうのは「従来の喜劇的ルーティン」の中に入れられてしまった何本かの「旧世代的作品」が含まれているし。ま、その代表作というのがこの作品といえるだろう。ちなみに「旧世代的作品」は植木の持つ「毒気」が薄められているのが特長。

いやホント、この新旧を比べてみると笑いの感覚に10年くらいの開きがあるようにさえ思えるんだよね。「時代」「野郎」と観ていくといきなりここでタイムスリップして過去にいってしまったような感じ…。それを考えると古澤監督の天才的なひらめきってっていうか、植木の面白さの本質を見抜き、新たなコメディのルーティンを作ったその力ってスゴイよな。

とはいえ、個人的な思いもあって嫌いではない。というのも、私にとっては「ニッポン無責任時代」以外に,
初めてまともに観た「クレージー映画」だったからである。初見のときにはクレージー映画に免疫も全くなかったせいか、本当に大笑いをして、ちっとも退屈はしなかったし、心の底から「クレージーって面白いなぁ。もっと観たいぞ!」と思ったよ正直言って。特にラストに出てくる「冷戦終結」のアイコラには死ぬほどは笑ってしまったしね。だから改めて観るまではずっとこの作品は面白いと思っていたし、この「先手必勝」がつまらないと思うのも、30本ある他の作品と比べてっていうことなんだと思ってもみる。ま、ちょうど笑いの質が変わる過渡期の作品として「笑いの歴史」的には意味のある作品であるとはいえるだろう。

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